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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

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バスタ新宿と石川啄木【エッセイ】

17/02/11 コンテスト(テーマ):第127回 時空モノガタリ文学賞 【 新宿 】 コメント:1件 あずみの白馬 閲覧数:969

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『ふるさとの 訛り懐かし 停車場の 人ごみの中に そを聞きに行く』
 長い東京暮らしで望郷の念に駆られた石川啄木が、故郷・岩手の言葉を聞きたくなり、そこへ向かう列車が発着する上野駅へ向かうという、著名な短歌である。

 しかし今、上野駅へ行っても故郷の訛りを聞くことは難しいだろう。夜行列車は全廃、新幹線も東京駅が起点。上野東京ラインが完成し、ここが始発駅の列車も少なくなってしまった。
 15番ホームにある歌碑が、かつての様子を伝えているに過ぎない。

 では東京には、もう故郷の訛りを聞く場所は無いのだろうか?

 否、新宿にそれはある。その名も「バスタ新宿」

 2016年、甲州街道とJR線が交差する場所に出来た、4階建ての建物は、文字通りの「新宿のバスターミナル」
 発着するバスは、一日1200便から多い時で1600便を超え、行き先も、北は青森から南は福岡まで、東京都内を含めた39都府県を網羅している。

 この巨大なターミナルは、なぜ誕生したのだろう。

 かつて、鉄道、特に夜行列車は都市間輸送の主役だった。しかし、高速道路網の整備とともに、鉄道より安価な夜行高速バスが台頭。旧来の夜行列車は廃止され、上野駅から故郷の訛りが消えて行った。

 しかし、バスが増えると新たな問題が発生した。各ターミナル駅の周辺にバス停が次々に出来、中にはバス停を持たない「ツアーバス」なるものも登場。出発時刻になると、利用客が到着するバスに次々に乗り込んでいくのが当たり前になった。

 特に新宿駅は、南口、新南口が甲州街道に直結している。これは一見すると便利だが、バス利用客の待機場所が少ないということも意味している。さらに、路上にはバスの他に客待ちのタクシーもいて、周辺は大混雑が日常化してしまった。これを解決するために、バスタ新宿は作られたのである。

 完成後、渋滞の完全解消とはいかなかったが、駅周辺のバス停が一箇所に集まったことで、甲州街道の混雑緩和がはかられた。また、待望のコンビニも施設内にオープンし、利便性も向上。全国各地へ向かう人で賑わっている。

 もし、現在に啄木がいたなら、きっとここに、故郷の言葉を聞きに来るに違いない。
 いや、遊びも大好きだった啄木のこと。もしかしたら歌舞伎町あたりを冷やかしに行ってしまうかも……。

 冗談はさておき、上野駅から魂のバトンを受け継いで、バスタ新宿は今日も東京と故郷をつないでいる。



【参考資料】
http://shinjuku-busterminal.co.jp
新宿高速バスターミナル公式サイト

wikipedia「バスタ新宿」

バスタ新宿の写真は、wikipedia同ページの、江戸村のとくぞう様撮影の画像を引用させていただきました。御礼申し上げます。


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このストーリーに関するコメント

17/02/21 冬垣ひなた

あずみの白馬さん、拝読しました。

時代が移り変わりを感じられるお話でした。夜行列車はなくなってしまってなんだか寂しいですね、しかしより多くの人々がバスを利用するようになって、新宿に集うお国訛りは、啄木のいた頃よりバラエティ豊かになったのではないでしょうか。素敵なお話をありがとうございました。

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