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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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304号室は死産0

17/01/31 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:12件 むねすけ 閲覧数:1096

時空モノガタリからの選評

お題を良く生かした、全体としてよくできた作品だと思います。304号室に関する語呂あわせが単なるアイデアにとどまらず、「芋けんぴ」などの諸要素とともに、相乗的に作品の中心テーマである、伯母の産婆としての矜持や生き方を表現しているのがうまいと思いました。伯母さんのきっぷのいいキャラクターが非常的で、子供らしい好奇心と生意気さを備えた主人公との掛け合いが、ありきたりでなく、読んでいてとても楽しかったです。この作品では、むねすけさんの作風がうまく生かされていたのではないでしょうか。これまでの作品中にも、会話の運び方などに面白さを感じるところはあったのですが、“無意味”な方向性に持っていかず、今回のようにある程度カチッとした方が、良さが生きてくるのでは、と感じました。次回以降も期待したくなる作品でした。

時空モノガタリK

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 宿題が出た。
 作文の宿題。
 お仕事インタビューだって。
 大人にお仕事の内容について質問して来るんだってさ。
 答えがひとつじゃない宿題は、センスで順位が決まるから僕は好きだ。
 僕の父さんはビールメーカーの宣伝マン。
 僕の母さんは薬局の店員さん。
 つまんない。センスゼロだ。
 こんな時は変わりものの親戚に頼るに限る。
 僕の伯母さんは近くの古ぼけたアパートに住んでる。
 お産婆さんをしてるんだって母さんが言ってた。なんのことかしらないけど、変わった伯母さんだから、変わった仕事に決まってる。センスありだ。
 古ぼけたアパートの304号室に、母さんが持たせてくれた箱入りの芋けんぴ手提げにぶら下げて行った。
 
 伯母さんのお仕事はなんですか?
 産婆だよ。ブラジルの恥知らずなお祭りのことじゃないよ。
 つまんない。
 わかんないか。
 わかるけど、つまんない。
 いいんだよ、私は噺家じゃないんだ、ただのおバカな産婆さ、まさにサンバカーニバル。
 つまんない。
 いいんだよ。上手いこと言うのは面白いわけじゃないってね、笑点に学んだよ。誰が好きだい?
 小遊三さん。
 うん。いい子だね、なんでも訊いとくれ。
 産婆っていうのはどんなお仕事ですか?
 あんたも、私も、みんな、お母さんから生まれてきたんだよ、そんなコマーシャル見たことない?はだかんぼの子の頭にひよこが乗ってる。
 ない。
 そっか、隔世だね。つまり、赤ちゃんを産むお手伝いさ。それが産婆。
 病院じゃないけど、ここ。
 ふん。病院にいるのは助産師。私はお産婆。ピンキリのいもけんぴの、キリの方さ。箱入りじゃなくてビニールに入ってる。でもそっちのが美味い。
 産婆のお仕事の楽しいところはなんですか?
 立ち会えるってことだね、命の誕生にね。毎日が晴れの日みたいなもんだね。命は太陽だからさ。
 お仕事で辛いことはなんですか?
 こういうアパートだからさ、立ち入りやすいのは、お金に困った十代も多い。最近の若いもんのお股のネジは誰かが締め直さないとヤバイと感じるのは、少々辛いかな。
 これ作文にそのまま書いても大丈夫?
 知らないよ、先生方の常識は。
 産婆のお仕事を始めようと思ったきっかけはなんですか?
 タクぼんや、私のこの部屋は何号室だ?
 質問に質問で返したらいけないんだよ。
 ルールは決めたバカをなじるためにあるんだばか。
 304号室でしょ?
 そう、3は産で0はゼロ、そして4は死。産ゼロ、死。
 産、ゼロ、死?
 そうだ、転じて、死産ゼロ。ま、ただの語呂だけどね、人生に混じる奇跡はしょうもないところに宿って待ってるもんでね。気付いて信じた私と、そこに混じってた奇跡が、二つの点となって場ができた時、時間と数でくくられた都合のいい常識は舌打ちうって逃げていくこともある。そーゆーこと。
 何年やってるんですか?
 丁度29年だね。
 その29年間で、
 待った、ツッコミなさい。
 29年は丁度じゃない、その言葉は使えるのは来年だよ。
 さすが、私の甥っ子だね。
 その29年で、一度もゼロなんですか?赤ちゃんが死んじゃうことは、あることなんでしょ?悲しいけど。
 どこの病院でも、助産師でも、経験してることだろ。でも私に限ってゼロさ。タクぼん。信じるとね、奇跡は起こせるんだよ。

 まだ幾つか質問をして、途中伯母さんはなぜか、僕に寿限無がいかに子供だましで面白くない話かってことを力説したけど、僕の印象に残ったのは、ただの語呂合わせのようなものでも、信じると、点と点で場ができて、奇跡が起こるってこと。
 これを悪用して、何か悪いことができそうだって思ったんだ。だから、作文にはその部分は書かない。
 美味しい部分は書かずに、自分のものにしちゃうんだ。
 センスあり。


 


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このストーリーに関するコメント

17/02/01 野原 豆

面白かったです。展開が気になり一気に読めてしまいました。『センスあり!』主人公は、小学生の男の子なのかしら?口癖の様な この言い回し(笑)思わず息子の 小さい頃を重ねてしまいました。楽しく読ませて頂きました。

17/02/01 むねすけ

びっけさん
コメントありがとうございます。
自分の書いた話が、誰かの日常や、思い出、記憶のどこかのワンシーンにちょびっとでもかすって、
匿名化していた思い出が、瞬いてくれる手助けになるのなら
それが書き手にとっての一番うれしいことです。
あったかいコメントに感謝。ありがとうございます。

17/02/01 あずみの白馬

拝読させていただきました。
304をこう使うのか……、と唸らされました。
助産婦さんもなかなか大変な仕事だと思いました。リアリティも好印象で、面白い作品だと思いました。

17/02/03 むねすけ

あずみの白馬さん
コメントありがとうございます
いつもテーマの扱いがおざなりなので
今作はテーマを活かすこと、に力点を置いて書きました
そこを評価してもらえたことがとても嬉しいです
ありがとうございます

17/02/03 待井小雨

拝読致しました。
「304号室」という扱いにくいテーマと産婆さんとの語呂合せに、そう使うのか、と驚きました。
物語も大変面白く読ませていただきました。主人公と産婆さんの会話運びがとても楽しかったです。

17/02/04 むねすけ

待井小雨さん
コメントありがとうございます
少年と伯母の会話が楽しかったと言っていただけて大変うれしいです
そこを楽しんでもらえないなら
自分の書いてるものに意味はないと常々思っている部分なので
ありがとうございました

17/02/15 治ちゃん

面白いです。私も自宅でお産婆さんに取り上げてもらいました。何となく親近感と304がこのストーリーはいいですね。

17/02/15 むねすけ

治ちゃんさん
コメントありがとうございます
ストーリーをいいと言っていただき、とても嬉しいです

17/02/16 浅月庵

むねすけ様
作品拝読させていただきました。
文体もそうですし、二人の掛け合い、展開もとても好みです!
面白かったです。

17/02/16 むねすけ

浅月庵さん
コメントありがとうございます
自信のない文体
自信のちょっとある会話のやり取り
両方褒めていただいて、嬉しい限りです
ありがとうございます

17/02/22 光石七

拝読しました。
主人公は小学校中学年くらいの男の子でしょうか。
二人の掛け合いが楽しく、でもその合間に社会の現実や人生訓のようなものも挿入されていて、味と深みのあるお話になっていると思います。
締め方も絶妙ですね(笑)
面白かったです!

17/02/22 むねすけ

光石七さん
コメントありがとうございます
セリフの掛け合い、これは一番大事にしてる部分なので
楽しいと言って頂けて凄くうれしいです
たくさん誉めてもらえてなんだかもう入賞したぐらいに喜んでいます

ありがとうございました

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