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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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お母さん大好き

17/01/04 コンテスト(テーマ):第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】 コメント:11件 デヴォン黒桃 閲覧数:1521

時空モノガタリからの選評

前半は母親の子供への通常の愛情の吐露のように見せつつ、どんどんディープな方向に向かうテンポのいい文章に引き込まれました。間違った優しさ≠ェこんな極端な方向に向かうことも実際あるのかもしれません。独特のリズムや繰り返されるフレーズが、非常に効果的ですね。怖いわらべ唄のような印象もあり、そのせいか内容的にはドロドロしているはずなのに、後味が悪くなかったです。古風な独特の文体もその一因かもしれませんね(古さを感じるとそれだけ読み手との距離感が出るのと、エンターイメント性も元々備えた文体だと思うので)。加えて作品としての完成度が高いこともあるのかもしれません。多くの作品を読んでいて感じるのは、完成度が上がるほど、作者自身と作品とがいい意味で切り離され、それ自体自立しているかのような印象を与える傾向があるということです(もちろん作品のタイプにもよるかもしれませんが)。ただ暗いだけで、残酷なだけの内容は後味の悪さが際立ちますが、自立度の高い作品は読後感も悪くないことが多いですね。設定自体は他にも似た作品もありましたが、そのうまさにおいて、強い印象を残す作品だと思います。

時空モノガタリK

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 ぎゃあ……おぎゃあ……ぎゃあ……ぎゃあ……
 マア、なんて可愛い私の坊や。
 産毛みたいな髪の毛が、抱っこしたら鼻をくすぐって仕方がなかった。
「こんにちは赤ちゃん。私がお母さんよ」
 アノ時アナタに向けたお母さんの愛はトッテモ深いものだったのよ。

 眠る時間がグンと少なくなっても、坊やがヒトツ咳をしただけで、其の晩は寝ずに過ごしたものよ。
 チョット頭が熱いものなら、眠って仕舞ったお医者様を叩き起こして診察させては迷惑がられて……でも、坊やが元気だってわかれば、ソレで良かったのよ。

 何時迄も指しゃぶりが治らなかったけど、まあ可愛らしいものだわね。
 歯が生えて来てムズがって……お母さんのおっぱいに噛み付いたりもしてたのよ。
 アンマリ強く噛むものだから、血が滲んじゃったりしてね。

 アッという間に歩くように成って、言葉も色々と喋り始めた。
 拙い言葉で「お母さん大好き」ナンテ云われた時は、涙が出たのを覚えているわ。
 外で走り回って、泥だらけに汚れたくった爪を、時たま噛んだりしてたのは、悪い癖だわね。

 ドコのダレの会話を真似したのか、背伸びしたような生意気な口を利くように成ってきても、成長したのねと、嬉しく思ったものなのよ。
 お母さんを傷付けるようなセリフを吐き捨てて、背中を向けるように成ってきても、思春期の男の子だからね、と頼もしく思ったわ。

 いつの頃からでしょうね。「お母さん大好き」と云わなくなったのは。
 それどころか、ズット坊やの声を聞いてない気がしたわ。 
 坊やの中に渦巻くモノに、お母さんマッタク気付かなかった。
 本当に御免なさいね。
 
 坊やがお部屋にこもって、声どころか顔も見せなくなった頃かしら。 
 お隣の奥さんが飼っていた可愛いワンちゃんが居なくなったと近所を訪ねて回って居たから、坊やが見かけてないか聞こうとした時、坊やのお部屋の隅で、お隣の奥さんに聞いたとおりの毛並みのワンちゃんが、白目を剥いて薄紫色のベロをデロンと垂らしていたのを、見て見ぬふりをしたの。
 お母さんが、ちゃんと、腐って臭う前にお庭で焼いたわ。お醤油を掛けて焼けば、肉の匂いは誤魔化せるって、何かで聞いたの。ウフフ、物知りでしょう?

 ホラ、坊や。
 あの言葉を云ってご覧。「お母さん大好き」って……
 お母さんはね、坊やの為ならナンデモするからね。
 お小遣いが足りないからって、お母さんのお財布からお金を抜いてるのも知っているのよ。御免なさいね、泥棒みたいな真似させて。駄目なお母さんね。
 お母さんがモット美人だったら、女ならではのお金の稼ぎ方も出来たかも知れないのにねえ。御免なさいね。
 
 坊やが、学校を辞めて、お友達と毎晩遊んでいるのを見て、チョットだけ心配していたのよ。夜風に当たって風邪なんか引かないかしらって……上等なコートでも買ってあげられたらいいのだけれど、御免なさいね。
 
 でも、いつの間にやら自分で上等なコートを調達してきてたから、お母さんは安心したわ。ホコリを払おうとお庭に干した時、値札が付いてたので、切って捨てておきました。
 御免なさいね、泥棒みたいな真似させて。


 お母さんのおっぱいに噛み付いていた坊やも、お酒を覚えて、坊やが楽しそうだから、お母さん嬉しいわ。
 でもね、お隣の旦那さんが、可愛いお嬢ちゃんが居なくなったと近所を訪ねて回って居たから、坊やが見かけてないか聞こうとした時、坊やのお部屋の隅で、お隣の旦那さんに聞いたとおりの洋服と三つ編みのお嬢ちゃんが、白目を剥いて薄紫色のベロをデロンと垂らしていたのは、見て見ぬふりをしたの。

 御免なさいね。殺人犯にさせて仕舞って。
 でも大丈夫。
 お母さんが、ちゃんと、腐って臭う前にお庭で焼いたわ。お醤油を掛けて焼けば、肉の匂いは誤魔化せるって、前も云ったでしょう?
 ウフフ、もう何度もやっているから手慣れたものだわ。
 
 ホラ、坊や。
 あの言葉を云ってご覧。「お母さん大好き」って……
 お母さんはね、坊やの為ならナンデモするからって約束したのにね。
 御免なさいね、今朝方。警察の方が訪ねてきたの。 
 お庭を掘り返されてるのだけれど、ウフフ、色々と出てきちゃいそう。
 可愛いワンちゃんの骨も、可愛いお嬢ちゃんの焼け残った頭蓋骨も背骨も、ガラクタと一緒に顔を出す頃よ。
 
 可愛い私の坊や。坊やを警察になんか渡さない。
 痛いのは最初だけだから……お母さん、アマリ力が無いのよ。
 坊や、ソンナに暴れないでね。
 肋骨が引っ掛かって、心臓まで届かなかったら苦しめちゃうからね。 
 ホラ、坊や。
 あの言葉を云ってご覧。「お母さん大好き」って……

 了


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このストーリーに関するコメント

17/01/04 石蕗亮

拝読致しました。
お母さん素晴らしいですな!繰り返しの使い方が旨すぎです!
やられました!新年早々良い作品を読ませて頂きました!

17/01/05 あずみの白馬

拝読させていただきました。
淡々とした口調で語られる恐怖のモノガタリ。
これぞ黒桃さんだと思いました。おかえりなさい!

17/01/05 デヴォン黒桃

石蕗亮様 
感想ありがとうございます。先日仕上げた別の話のリフレイン感が抜けずに使いました。僕なりの優しさが伝わったら嬉しいです。

17/01/05 デヴォン黒桃

あずみの白馬様
感想ありがとうございます。年末に戻る予定が間に合わず……
どうしてもストレートに優しさを使い切れずにこうなりました。
ありがとうございます。

17/01/05 

拝読しました。
何処にでもあるような母親の優しさをここまでポップに猟奇的に表現されていて凄いと思いました。面白かったです。

17/01/06 デヴォン黒桃

榊様
感想ありがとうございます。
母の歪んでいく優しさを感じで頂けたようで、嬉しく思います。

17/01/08 霜月秋介

デヴォン黒桃さま、拝読しました。

初めは「母の愛は素晴らしいものだ」と沁みじみ思いながら読み進めてましたが、読後はドロリとしたホラーを読んだような感覚。
お見事です。今後の掌編も期待してます。

17/01/11 深海映

「黒桃さんだから、このお題ではこう来るんじゃないか」と予想してはいたんですが、その予想の上をいく出来の作品が来てびっくりしています。シンプルな構成の作品ですがストレートに怖さが伝わってきて好きです

17/01/11 デヴォン黒桃

霜月秋介様
母の歪んだ愛情ってこういう物なのかなと、もし自分だったらこうしてしまうのかなと、考えながら書きました。母の心を思うとつらいです。

深海映様
感想ありがとうございます。
母の愛情や優しさは、ストレートなものなのかもしれません。

17/02/04 光石七

拝読しました。
こ、怖い……。でも面白い!
強すぎて歪んだ母親の愛情・優しさに、ぞっとしつつも引き込まれました。
秀作だと思います。

17/02/05 デヴォン黒桃

光石七様
お褒め頂きありがとう御座います。
母親の押し付ける愛情を描いてみました。

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