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浅月庵さん

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可能性探偵の迷宮推理
17/01/02 コンテスト(テーマ):第126回 時空モノガタリ文学賞 【 304号室 】 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:1258
有名な少年探偵の、その後を思わせる内容ですね。「過去の栄光」が消えさったあとの、「ポンコツ」な姿。優秀な主人公を反転させ貶めてみたいというのもまた、ファンの心理なのでしょう。しかしハガナイさんはどこか憎めないですね。優秀なキャラには確かに吸引力がありますが、人間的弱みがある彼に親しみを感じました。映画やドラマでの推理は、時に、説得力があるのか無いのか、微妙に感じられることは確かにありますね。緻密な理論が現実には屁理屈でしかなく、シンプルな手段の方が効果的というようなことは実際ありそうな話で、なるほどと思いました。過去の成功体験に囚われ、人生が空回りをするハガナイさんにはやや気の毒ですが、クスリと笑ってしまいました。永遠に解決しそうにないダイイングメッセージのリレーも、脱力感を感じさせ面白かったです。
時空モノガタリK



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とあるアパートの一室で、一人の男性が殺された。
死因は、包丁により腹部を刺されての出血多量によるものだ。
助手である私は、探偵のハガナイさんと共に、早速現場へと急行した。
「ダイイングメッセージかな」
ハガナイさんは遺体の元へ屈み、そう呟く。
「私には、数字の304に見えます。304号室の人が犯人ですよ!」
遺体の指先で床に書かれた、自身の血による最後のヒントを、ハガナイさんはまじまじと見つめている。
「君は先を急ぎすぎるきらいがあるな。例えば、凶器の包丁に変わった特徴は……」
「包丁はこの家のもので、一般家庭用みたいです」
「ということは犯人には、事前にこの人を殺害する明確な意志はなかったということか」
「最初から殺す気なら、自分で凶器を用意しますもんね。ていうか、早く304号室に行きましょ」
「まぁ待て。そんなに急ぐと、話がもう終わってしまうだろう」話って、どういう意味だろ?「そして、そのダイイングメッセージにだって、様々な可能性が考えられる」
「出た! ハガナイさんの神経質推理!!」
ハガナイさんは小学六年生という若さで、難解な殺人事件のトリックと、その犯人をたった一人で暴いたらしい。それはおよそ大人には思いつかない視点から解き明かされた内容だった。
それ以来ハガナイさんは、馬鹿げた内容であっても一つ一つ“可能性”を列挙し、推理していくようになった。最早病気だ。
「君はこの記号が304に見える、と言ったね。でも、少し角度を変えてみたらどうだろう」
「角度?」
私は遺体の横に回り込み、改めて床に視線を落とす。
「縦にして見ると4が小文字の英語、tに見えないかい?」
「見えないです」
「そうか。0が英語のoで、3がm。つまり、tom(トム)という外国人留学生が犯人という可能性も考えられる」
見えないって言ったのに、話を強引に進めたな。
「マナカ警部からアパートの他の住人のデータを見せてもらいましたが、トムなんて人はいないみたいです」
「知人には……」
「外での交友関係は皆無だったらしいです。アパート内では何人か親しい人間がいるみたいですが。知らない人を部屋に上げるわけもないし、争った形跡も見当たらなかったことから、顔見知りの犯行かと」
「ということは、アパート内の他の住人が怪しいな……」
いや、今私が言ったこと言い直してるだけだし。何、主役っぽい雰囲気を醸し出してんだ、この人は。
「あの、まずは304号室の人に話しを聞きに行きましょうよ!」
「いや待て。また角度を変えて、3が漢字の山、0が漢字の口、4が小文字のfで、山口f。フジオとかフジコなんて名前の人は」
「いませんね」
「そうか……」
おいおい、あからさまにガッカリしてるよ、この人。
「もうダイイングメッセージの可能性については満足しましたか?」
「304→サオシ。もしくは逆から読んで403→シオサという人間は……」
「いないですね」
「いや、違うな。我々が3“0”4だと思っていた文字。実はこれ、0ではなくナカグロで、3・4だとか。3月4日が誕生日の人は!」
「いません」
相変わらず面倒くさいな、この人。
「3と4が過剰に好きな奴とか!」
「そこまでわかんないです」
もう滅茶苦茶だよ。
かつて神童だったハガナイさん。たった一つの事件で名探偵と持て囃された彼の元へ、様々な事件が舞い込んできた。
彼はそれらに対して真摯に向き合い、ネチっこいまでに考えられる可能性を並べ、ウダウダやってる間に警察によって事件が解決したり、反対に迷宮入りするなど……今となってはただのポンコツ野郎だ。
過去の栄光を引き摺るとろくな大人にならない。
彼を見ているとそんな言葉が頭に浮かぶ。
「初心に戻ろう。やはり304号室の奴が怪しい」
「やっとその結論に辿り着きますか!」
「あぁ。頃合い的にもそろそろ丁度いいしな」
頃合い的って、どういう意味だろ?
ようやくハガナイさんと私は、上階の304号室へと向かう。
だけど、刑事さんたちの方がいち早く動いていたみたいで、玄関の扉が開かれていた。やはり、ここの住人が犯人だったのか。
私たちも部屋のなかに足を踏み入れると、マナカ警部が呟いた。
「304号室の方も……仏さんだ」
警部の足元には、202号室の人と同じ格好で、同じ殺された方をした女性が倒れている。
そして、殺された女性の伸ばした指先は、床に血で101という文字を記していた。
嘘、またダイイングメッセージ……?
私は恐る恐る、ハガナイさんの方を振り返る。
「あらら。ここでもう一波乱とは、尺の調整ミスったかな」
何を言ってるのかよくわからなかったが、私は聞こえないフリをした。
残念ながらこの事件が解決する可能性は、最早ゼロだ。