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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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僕とアミーの5分間

16/12/22 コンテスト(テーマ):第124回 時空モノガタリ文学賞 【 五分間 】 コメント:0件 あずみの白馬 閲覧数:858

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「過去に戻ってみませんか?」
 河川敷の歩道を歩いていると、老紳士を過去へと誘おうとする美少女がいた。
 彼女が僕の初恋の相手、夏菜子(かなこ)にそっくりだったから、なおさら美少女に見えた。老紳士もどこかでみたことある気がするが、思い出せなかった。
 しばらくして、老紳士は手を横に振ると去って行った。その話を聞いて首を縦に振る人は滅多にいないだろう。

 しかし、僕は、
「過去に戻れるって本当?」
 彼女に話しかけてしまった。それがとてつもなく魅力的な話に思えたからだ。
「はい、本当です!」
 彼女はとても元気に答える。と、同時に新たな疑問が浮かんだ。
「戻るって、そのまま帰って来られなくなるの?」
「いいえ、5分間ほどで戻って来られますよ。ただし、代償をいただきます」
「代償って?」
「寿命を1年ほど頂戴します」
「5分間のために1年も!?」
「……、ダメですか?」
 上目遣いでオネダリをしてきた。僕はこういうのに弱い。

 改めて考えてみる。夏菜子さんには、告白することさえかなわなかった。10年前の高二の冬、交通事故でこの世を去ってしまったからだ。
「(夏菜子さんの運命を変えられるかも。それが出来ればワンチャンある!)」
 そう思うと、自分の寿命1年が、とてつも無く安いものに感じられた。
「じゃあ、その取引に乗ろうか」
「ありがとうございます! そうそう、私はアミーと言います」

 アミーに橋の下の小屋に案内され、綺麗なソファに腰掛けると、行きたい場所と時間、理由を聞かれたのでそれに答えた。
「わかりました。うまく行くことを願っています」
 アミーの手がぼくの目に触れると、目がぐるんと回った。

 ***

 気がつくとそこは、夏菜子さん部活を終えて帰宅するところだった。時計を見ると事故の5分前。目の前に事故現場の交差点が! 僕は彼女に近づいて手を引こうとするが、
「待ちたまえ、何をする気かね!?」
 さっき河原で見かけた紳士がなぜか僕の目の前に現れた。ん!? 思い出した。担任の山田先生だ!
「あ、いえ、夏菜子さんがこれから事故に遭うもので」
 とっさに本当のことを言うが、信じてもらえるはずもない。
「そんな話が信じられるか。とりあえ一緒に交番まで来てもらおう」
 先生は僕の腕を掴んで連れて行こうとすると、暴走するトラックのエンジン音が近づいて来た。
「夏菜子さん! 逃げて!!」
 あらん限りの大声で叫んだ。夏菜子は、即座にトラックから身を避け、ギリギリ交わすことに成功した。
「よかった……」
 助かったのを見届けると、意識が遠のいた。

 ***

 気がつくと、さっきのソファに座っていた。
「過去は無事、変えられましたか?」
 ぼくは黙ってうなづくと、アミーは嬉しそうに答えた。
「よかった! ところであなた、私の側に長くいても平気なんですね」
「え??」
「あ、いえ……」

 もしかして夏菜子が待っているかなと期待して家に帰った。

 しかし、誰もいなかった。代わりに『結婚しました』と書かれ、夏菜子さんと山田先生が仲良く笑顔で写っているハガキがあった。
 そうか……、あれは山田先生が助けたことになったのか。寿命一年払ってこれは無いと思ったが、仕方ないと自分を納得させた。

 ***

 次の日、河川敷を歩いているとアミーが別の人を過去へと誘ったが断られていた。それを見て僕は彼女に近づく。
「昨日はどうも」
「あ、いえ、どうでしたか?」
「夏菜子さん、生きてた。僕の彼女にはならなかったけど」
「そうですか……」
 アミーは複雑そうな表情を見せた。寿命を代償として払うなら、おそらく悪魔の類だろう。だが、人を想う心は失われていない感じがした。
「ところで、昨日、長い間一緒にいても苦しまないって言ったけど、あれはなに?」
「気になります?」

 アミーの話をまとめると、悪魔に呪いをかけられ、定期的に寿命を一年ずつもらわないと生きて行けなくなったらしい。
「解除の呪文はありますが、私といるとみんな苦しんだりしてダメなんです。5分間唱えれば良いのですが……」
 僕は、彼女が救えるならと思い、呪文を唱えることにした。
「よし、やってみよう」
「ありがとうございます!」
 始めると同時に、滝のような雨が降り出した。唱えるのがやっとだが必死に耐える。さらにあと1分のところで雹に変わった。もはや気合いだけが頼りだ。そして……

 ***

「あなた、起きて下さい」
 故郷へ向かう高速道路のサービスエリアで休憩をしていると妻の愛海が起こしてくれた。
「んー、あの夢を見てた」
「またですか? 悪魔なんて本の世界のお話ですよ」
 愛海に促されて車を発進させる。僕は5分ほどうたた寝すると決まってこの夢を見る。それは何故なのか、いまだにわからない。


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