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るうねさん

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募時間、お願いします

16/12/20 コンテスト(テーマ):第124回 時空モノガタリ文学賞 【 五分間 】 コメント:2件 るうね 閲覧数:541

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「募時間、お願いしまーす」
「恵まれない子供たちのために、募時間お願いしまーす」
 駅前で、学生たちがそんなことを叫んでいる。
 首からは、妙ちきりんな機械を下げていた。
 気になった俺は、会社に向かう足を止め、学生たちに近づいた。
「募時間、お願いできますか」
 にこやかに言ってくる学生に向かって、
「募時間てなんだい」
 と、問う。
「ご存じないんですか」
 不思議そうな顔で、問い返してくる学生。
 なんだろう、「募時間」というのは、そんなにポピュラーな単語なのだろうか。
「簡単に言えば、募金の時間版です」
「募金の時間版?」
「ええ、金銭の代わりに時間、つまり寿命を寄付するんですよ」
「寿命だって? そんなことができるのか」
「これが、そのための機械です」
 と、学生は首から下げた機械を示す。
「僕たちの先生が作ったんですけどね。ここに」
 学生は機械の上部にある黒いパネルを指し、
「手をかざしていただければ、寿命を寄付することができます」
「ふーん」
「そうして集めた寿命を難病の子たちに分け与えるんです。どうでしょう、寄付していただけませんか」
「う、うーん。それにしたって、寿命が縮まるわけだろう?」
「ほんの五分でもいいんです。その分、たくさんの人から集めればいいわけですから」
「まあ、そういうことなら」
 俺はうなずいて、黒いパネルに手をかざした。
 と、学生の顔が曇った。
「どうしたんだい」
「いや……どうも、あなたの寿命は、あと二、三分しかないみたいです」
 その言葉に、俺は仰天した。
「な、なんだって?」
「せっかく募時間してくれようとしたのに、申し訳ありません」
「そ、そんなことはいい! ど、どうにかならないのか」
「どうにかと言っても……」
「そ、その機械には時間がたっぷり詰まっているんだろう? それをくれ!」
「だ、だめですよ! これは難病の子供たちに」
「将来、役に立つ大人に育つかどうかも分からない子供たちのために、時間を分け与えるより、いま、こうして社会で働いている俺の寿命を延ばした方が何倍も有益だ! ええい、いいからよこせ!」
「あっ、やめてください!」
 俺と学生は押し合いへし合いする。
 と、学生がバランスを崩し、車道に倒れこんだ。
 そこに運悪くタクシーが……。
 
 
 俺はいま、豚箱の中にいる。
 懲役十年。
 会社もクビになった。
 女房、子供にも逃げられ、外に出ても明るい未来は待っていそうにない。
 あの機械にどれほど時間が貯められていたのか分からないが、いまではこのくそったれな人生が早く終わらないかと心待ちにしている。


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このストーリーに関するコメント

17/01/29 光石七

拝読しました。
私も人から五分間もらうというアイデアはあったのですが、話としてまとまらず……
予想外の展開、とても面白かったです!

17/01/31 るうね

るうねです。
コメント、ありがとうございます。

募時間という着想までは良かったのですが、「五分間」というテーマを活かしきれなかったかな、と自省中です。
「時間」ではなく「五分間」である意味を持たせられれば良かったのですが。
何にしろ、お読みいただき、ありがとうございます。

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