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ナマケモノさん

 地球最後の秘境に住むケモノです。  一次創作で謎な世界観のファンタジーやSFらしきものを書いたり、いるかネットブックスさんからBL電子書籍をだしたりしています。  一次創作ブログ ケモノの物書き堂   http://urx2.nu/GBqS    18禁 ブログ  ケモノ堂   http://ur0.link/GuAC  twitter http://ur0.link/GuAI

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大人課のサンタさん

16/12/14 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 ナマケモノ 閲覧数:439

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 どうして私のパパはサンタなんだろう。
 そんなことを思いながら、私は眼の前にあるショートケーキを見つめる。
 パパが買ってきてくれた、クリスマスケーキ。食べるのは私1人だから、丸いホールケーキではない。
 クリスマスイブの始まる前日に、パパはいつも私にたくさんのプレゼントを贈ってくれる。
 でも、クリスマスにパパはいない。仕事を終えて帰ってきたパパは、疲れ切って泥のように眠ってしまう。
 だから私は寝ているパパの頬にこっそりキスをするのだ。
 そして私は知っている。
 パパが左遷されて、子供にプレゼントを配るエリートサンタではなくなったことも、
 パパが、今の仕事に悩んでいることも――



 はぁっと俺はため息をついて、辺りを見回す。
 ここは、ビルの屋上だ。前方の通りからは、浮かれたクリスマスソングが流れていくる。それに引きかえ、俺のいるビル街は閑散としていた。
 それでも、ビルにはちらほらと明かりが灯っている。窓を覗き込むとディスクに座り込むサラリーマンたちの姿がある。くたびれたスーツを見るに、ロクに家にも帰っていないらしい。
 彼らを見て、俺はため息をついていた。
 花形だった子供課から降格させられて何年になるだろうか。
 子供課とは、子供たちにプレゼントをエリートサンタのことだ。だが、この国の少子化は著しく、俺たちサンタの需要も年を追うごとに減っている。
 国際サンタクロース協会日本支部は新たな需要先として、子供ではなく大人たちにプレゼントを配る方向転換策を打ち出す。
 その名も大人課の結成である。
 こう説明すると大人課は大層なもののように感じられる。だが、実際は首切り候補者たちの左遷先だ。ここ蹴ったら待っているのは自主退社か、リストラの二択。
 可愛い1人娘の顔が脳裏をチラつく。
 悩んでいても仕方ない。俺は両頬を手で叩き、立ちあがる。
「帰りに、あいつの好きなものでも買っていくかっ!」
 ここ数年、気難しい大人の相手ばかりしていて、クリスマスの翌日は疲れて動けないことが多くなった。
 そのため、娘とクリスマスの翌日に行っていたパーティーができなくなってしまったのだ。
 とっとと仕事を終わらせて、今年は娘とパーティーを開こう。
 立ち直った俺の視界に、気になるものが映りこむ。
 向かいのビルから、男性が飛び降りようとしていた。


「やる気だしたとたんそれはないでしょっ!?」
 俺は宙に浮きあがり、男性めがけて飛んでいく。そんな俺を男性はポカンと口を開けて見つめていた。
「マジ、トラウマになるから俺の眼の前では跳び下りないでっーっ!!」
「痛いっ!!」
 俺は男性に抱きつき、彼を押し倒す。屋上の床に頭を打ちつけ、男性は声をあげていた。
「いや……。ごめん! でも、クリスマスに自殺とかマジありえないから! ないから! 頼むから、俺の前では跳び下りないでっ!」
「跳び下りないで……。じゃあ、俺にどうしろって言うんですかっ!」
 腕の中にいる男性が叫び出す。
 彼は眼を両手で覆いながら、大声をあげて泣き始めた。
「何が、あったんだよ……」
「死ねって言われたんです……。ずっと寝ないで頑張ってるのに……仕事ができないお前は、いない方が世の中のためだって、先輩が……」
「で、お前が死んで世の中変わるか?」
「えっ……」
 指を広げ、男性が俺を見あげてくる。涙に濡れた彼の眼は、驚きに見開かれていた。
「話してみろよ。俺一応サンタだし、プレゼントを人に贈るのが仕事なんだよ」
「サンタって……」
「話し相手になってやる。今のお前に、一番必要な贈物だろっ?」
 立ち上がり、俺は男性に手を差し伸べる。唖然と俺の見あげる彼に、俺は満面の笑みを浮かべてみせた。


 今日、パパが久しぶりにクリスマス次の日パーティーを開いてくれた。
 クリスマスはパパが仕事で忙しいから、その次の日にクリスマスパーティーを開くのが数年前までの我が家の習慣だった。
 パパが左遷されてからは、ずっとしてなかったけれど。
 そんなパパが今日、友達を連れてきてパーティーを開こうと言ったのだ。
 パパが連れてきて若いお兄さんは、先輩に罵られて自殺しようとしていたという。そんなお兄さんの話を、パパは親身になって聞いてくれたそうだ。
 お兄さんが席を立っているあいだ、パパはこっそりと私に教えてくれた。
「俺が、あいつに救われたんだ。今の仕事も、捨てたもんじゃないな」
 にっと笑うパパの顔に疲れはない。
 充実感に満ち溢れたパパの笑顔は、とても輝いてみえた。
 テーブルの丸いクリスマスケーキが置かれている。食べるのは、私とパパとお兄さんの3人だ。
 そのケーキを見つめながら、私は心の中でお願いしていた。
 来年も、丸いケーキをお父さんと食べられますように。


 


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