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ナマケモノさん

 地球最後の秘境に住むケモノです。  一次創作で謎な世界観のファンタジーやSFらしきものを書いたり、いるかネットブックスさんからBL電子書籍をだしたりしています。  一次創作ブログ ケモノの物書き堂   http://urx2.nu/GBqS    18禁 ブログ  ケモノ堂   http://ur0.link/GuAC  twitter http://ur0.link/GuAI

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微笑みの待ち時間

16/12/14 コンテスト(テーマ):第124回 時空モノガタリ文学賞 【 五分間 】 コメント:0件 ナマケモノ 閲覧数:412

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「どうしよう、早く来ちゃったよ」
 腕時計を見て、私ははぁっとため息をつく。
 時刻は午後5時55分。待ち合わせ時間の6時より、5分も早い。
 たかが5分だが、侮れない。
 私にとって、恋人を待つ時間は苦痛以外の何ものでもないからだ。
 顔をあげると、クリスマスツリーがディスプレイされたショーウインドーが視界に入る。きらきらと輝くイルミネーションを映すガラスには、私の冴えない顔も映りこんでいた。
 薄い唇に、吊り上がった眼。
 お世辞にも小顔と呼べない私の顔は、クラスの女子からも陰口を叩かれるほどだ。
 そんな私が学校の王子様と付き合うことになるなんて、誰が予測しただろう。
 学校の裏庭に呼び出されて告白されたときは、本当に驚いた。
 背も高くて、成績優秀、おまけに美形なあの人と私が釣り合うはずがない。
 はぁっとため息をつく、ますます自分が惨めになって私は自分自身を抱きしめていた。
 今日は念入りにおしゃれをしてきたつもりだけど、私が着ると何でも滑稽に見えてしまうから不思議だ。
 ――笑顔が可愛かったから……。
 ふと、王子様の言葉が脳裏を過る。
 そういえば、小さい頃からよくお母さんに私は笑顔が素敵だって褒めてくれたっけ。
それに王子様も……。
 口の端を歪めて、私は無理やり笑ってみる。引き攣った笑顔はお世辞にも可愛いとはいえない。
「なんか、違う……」
 むうっと眉根を寄せて、私は考える。
 そもそも、可愛い笑顔って何なんだろうか。
 そう言われて1番最初に出てくるのは、クラスのマドンナ 田村さんの愛らしい微笑。切れ長の眼を細めて笑う彼女は、本当に綺麗だ。
 それに比べて私は――
「そういえば、田村さんっていつもニコニコしてるよな」
 言っては悪いが、田村さんは凄く楽天家というか、先のことをロクに考えないところがある。このあいだなんて数学の宿題をうっかり家に忘れて、教師の木村にこっぴどく叱られていた。
 ちゃんと言ってくれれば、私だってフォロー入れたのに。
「ほんと、木村さんてばおかしいよなぁ」
 彼女の凛とした笑顔を思い出して、私は自然と笑顔を浮かべていた。
 ガラスに映る私の笑顔は、可愛いとはいえない。でも、見ていると何だか安心する表情だ。
 私が幸せだということが、笑顔に表れている気がしてしまう。
「ごめん、待ったっ!?」
 あの人が慌てた様子で私に声をかけてくれる。
「ううん。木村さんのこと考えてたら、あっという間だった」
 私は愛しいその人に、とっておきの笑顔を向けていた。
 彼女が可愛いと言ってくれた笑顔を――
 私は木村さんをじっと見つめる。背が高くすらっとした体型に、美しく整った顔立ち。 男性のような服装が好きな彼女は、ブラウスの上にアンティーク調のベストを着こみ、黒いパンツを履きこなしている。
 その格好と、凛々しい性格からクラスの女子から王子様と慕われている彼女は、男女問わず人気のある生徒だ。
 クラスの女子に告白されたこともある彼女。付き合っていることは周囲には秘密だけれど、もしバレたら大変なことになる。
 でも彼女は、クラスでも目立たない私を選んでくれた。
 笑みを深め、私は彼女を見つめる。それなのに、木村さんは不機嫌そうに頬を膨らませる。
「もう、下の名前で呼んでって言ってるじゃん。それに――」
「それに――」
 すっと頬を赤らめ、彼女は私に抱きついてくる。耳元で、そっと彼女は私に囁いた。
「私以外の人に、その笑顔見せないで……。ユキが捕られちゃう……」
「大丈夫。私はハルエが1番だもん」
「もう……大好きっ!」
 お返しとばかりに、私はハルエに囁いてあげる。耳を真っ赤にして、彼女は私を抱き寄せてくれた。
 


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