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飛鳥永久さん

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愛情泥棒

16/12/09 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 飛鳥永久 閲覧数:483

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小さい頃、良い子にしているとクリスマスの日にサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるって話を聞いて、お手伝いを積極的にした。
これなら来てくれるはずだって当日、期待を膨らませながら寝たけど朝起きたらプレゼントはなかった。

私は良い子じゃなかったから来なかったの? と、お母さんに泣きながら訴えると

「そんな事は無いよ。良い子だけどお母さんが家にはサンタさん来なくていいですよって言ったの。でもプレゼントは届いてるわよ」

そう言って頭を撫でてくれて、オモチャをくれた。

何でそんな事サンタさんに言ったんだって不満に思ったけどプレゼントは貰えたし、別にいいやってその時は気にせず喜んだ。

だけど、友達にサンタさんから何貰ったの?って聞かれた時、皆の家にはサンタさんが来てたし、「家には来なかった」なんて言ったら私は良い子じゃないからだと言うようで、お母さんのプレゼントをまるでサンタさんから貰ったように言ってしまった。

でもいつだったか、サンタさんなんて居ない。あれは親なんだよって得意げに言う子が現れた。
それに対してサンタさんは居るという人たちと激論が始まった。

サンタさんが来てたって嘘をついていたし、その話に入れなくて仲間外れになるのも嫌で私は適当に合わせてた。

でもそれは、凄く心苦しかった。

サンタさんの存在はいつの間にか皆の中から消えて、自分と同じように両親からプレゼントを貰うようになったのを知った時、ほっとしたのを覚えている。

サンタさんは居ると子供が持つ夢を同年代の子達と一緒に見させて欲しかったなって思いを心のどこかで抱えながら、私は親の立場になってクリスマスを迎える事になった。

子供には自分と同じ思いをして欲しくないと寝ている間に用意したプレゼントを枕元に置いた。

朝起きてきた娘は「サンタさんがきたー!」と大はしゃぎ。パジャマ姿のままお礼の手紙書くと張り切る姿は微笑ましく、とても暖かい気持ちになれたし、その姿に自分も同じ夢を見たかったなという少し羨ましい感情もうまれてた。

こんな気持ちになれるのに何故母は、サンタさんになってくれなかったのかを知りたくなり、次にお正月、帰省した時に聞くと母は口を尖らせながら答えてくれた。

「だって、折角のプレゼントをサンタさんの手柄にされるなんて悔しいじゃない」

「でも、それはそのうち親だったってわかる事でしょ?家にはサンタさんが来なかったから、居るとか居ないとか、そんな話に参加したくても出来なかったの。この気持ちわかる?」

子供みたいな事を言う母に、幼いころ感じていた不満を口にすると、母はぽつりぽつり語り始めた。

「あれはね、お母さんが用意したものじゃなくて、お祖母ちゃんが用意してくれたものだから……」

母の話によると、我が家は日々の生活がやっとの経済状況で、12月は私の誕生日もあり、誕生日プレゼントの他に、クリスマスプレゼントを用意することは出来なかったらしい。

お祖母ちゃんは遠く離れた場所で一人暮らし。年金暮らしで生活にあまり余裕がない中だが、そんな私の為にクリスマスの日、プレゼントを毎年送ってくれたという。

母はどうしても私に『ありがとう』の電話をさせたかった。その為そのプレゼントをサンタさんの手柄にする訳にはいかず、手渡しをする事を選んだ。

母は「貴方には申し訳ない事をしたとは思っているのよ」と寂しそうに言った。

そんな事全然知らなかった。

――でも何で知らなかったんだろう?

そして、思い出した。私は確かに母に言われてお祖母ちゃんに毎年電話をしていた。
けれど、「誕生日おめでとう」って言われてたし、それがそのクリスマスプレゼントのお礼の電話だったことを記憶していなかったのだ。

それよりも『サンタさんが来なかった』この出来事だけが色濃く記憶に残ってしまっていたのだ。

子供の時の記憶なんて、所詮そんなもの。

プレゼントには、物の価値以上に愛情が詰められている事を、贈る立場になるとより実感する。
プレゼントを贈った時に見られる『ありがとう』は特別だって事も知っている。

私も母の立場だったらきっと同じことをしているだろう。

――確かに、サンタさんの手柄にされるのはもったいない。

私たちが子供に注いだ愛情はサンタさんに貰った事になっている。
年を重ねたらその愛情は私たち親からだって知るのだろうけれど、今はサンタさんに奪われてしまっている。

サンタさんは愛情泥棒だ。

「お母さん、うちにはサンタさんが居なくて良かったよ」

私のありがとうはその時にちゃんとお祖母ちゃんに届いていたのだから。

あんなにサンタさんが来ないって嘆いていたのに、今は全く逆の事を思う。

母は私のその言葉を聞くと、嬉しそうに笑ってくれた。


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