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寝袋男さん

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ラバに蹴られて

16/12/04 コンテスト(テーマ):第94回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 寝袋男 閲覧数:484

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 冬の月夜、満天の星、冷えるね。温め合うにも、申し分ない寒さ。ロマンチックだ。
 だが俺は今、女性と温め合うどころか、アスファルトに身を委ねている。


 マキモドシ←


 「モスコミュールを」
 「銘柄はどうされます?」
 「最も美味いと思う組み合わせで、頼む」

 恋人にドタキャンされ、独りバーに入った俺は、アノ女に遭ったんだ。

 「あんた、遊び人でしょ?」
 知らない女が俺に向かって、紫煙と共に不躾で人聞きの悪い台詞を吐いてきた。
 ルージュから爪先まで、素晴らしく赤い。挑発的で目が眩むような真っ赤なスーツだ。悪くない。イイ女だ。イイ女は赤がキマる。
 普段ならお近づきになる=バンザイなとこだが、生憎の初登場だ。

 「藪から棒だな。君は誰?」
 「名乗る時は自分からでしょ?まぁイイわ、関係ないもの。兎にも角にも、あんたみたいなタイプは遊び人。オーラで分かるわ。アタシのこういうのって当たるの」

 なんでもいい。良い暇潰しが出来た。しかも飛び切りイイ女。

 「それは褒めている?貶しているのか?前者だったら奢る。後者ならこの場で君にキスして出て行こう」
 「アラ、流石遊び人。マスター、いつもの頂戴、この他人の奢り」
 「残念だ」

 シェイカーがラウンジミュージックにノる。良い店だ。

 「君はよくここに?」
 「そう、ここでヒトを待っているの。」
 「恋人か?」
 「どう思う?」
 「放っておかないだろ?激マブだ」
 「あんたいくつよ」
 「20超えた辺りから曖昧になるね」
 「女には都合がいいわ」

 
 「どうぞ、こちらの色男からです」
 マスターがオンナにカクテルを差し出す。
 「知ってるわよ?」
 「すみません、一度やってみたかったもので!フフ!」
 ダンディから一変、コミカルだ。何だったら俺だって少し遠くからカクテルグラスを滑らせてみたかった。

 
 お互いドリンクを飲み終えたタイミングで、

 「良かったら、2軒目に行かないか?」
 「そうね、待ちくたびれたしイイわ。奢りでしょ?」
 「美人だからね」
 「ブスには奢らないの?」
 「帰って寝るよ」
 「正直な男は嫌いじゃないわ」


 「またお待ちしております、美男&美女」
 支払いを済ませ、店を出る。

 階段を上りきったところで事故だ。オンナのパンプスのヒールが飛ぶ。ヒールだけ、キレイに、闇夜に弧を描いて。
 咄嗟にオンナを抱く。タバコと香水、少しのアルコールを感じる。赤い。紅い。温かい。柔らかい。ムラっとくる。顔が近い。オンナは事故用の顔から女の顔になる。

 その時だ。

 「その女は誰?」「その男は誰?」 

 女の声と男の声が重なりながら我らが耳に届く。

 「恋人!?」「恋人!?」

 今度は俺の声とオンナの声が重なる。息ぴったりだ。

 道の一方には俺の恋人、もう一方にはガタイのイイ男が立っている。
状況を理解し出すと、冬だというのにジンワリと汗が滲み出す。修羅場のようだ。


 スキップ→


 星が見えた。もちろんその星じゃあない。痛い。血の味がする。アスファルトが固い。冷たい。

 真っ赤な女はマッチョな男とヨルの街に消えた。
 恋人は横たわる俺に何かを投げつけ、呆然とした俺を踏んづけて、何処かに去った。
 男女平等なんてのは夢だ。女は可愛きゃ許されて、男はコテンパンのギッタンギッタンでギャフンだ。



 「御客様、美顔が台無しです。ご無事で…ないですね。お気を確かに」
 マスターがいつの間にか傍に立っていた。
 「箱が落ちておりますが…」
 恋人の置土産。
 「開けてくれ」
 「よろしいのですか?」
 「頼む」

 「おや、貴方様、今日は誕生日だったのですね、おめでとうございます」
 「…」
 忘れていた。色んな意味で、本当に色んな意味で、サプライズパーティーだ。

 「誕生日プレゼントです。手紙付きの。読みますか?」
 「それは恋人が可哀想だ」
 「もう既に可哀想ですよ、元恋人」
 「…」
 「失礼致しました」
 「マスター、一つ訊いていい?」
 「モチのロンでございます」
 「あの真っ赤なイイ女、いつも何を注文するんだい?」
 「ブルームーンでございます」
 「なるほどね」

 とんだモスコミュールラバの蹴りだ。


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