猫野まちさん

東野圭吾と恩田陸が好きな女子学生です

性別 女性
将来の夢 図書館司書
座右の銘 yesterday is the past. today is the now. tommrow is the future.

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彼女

16/11/25 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 猫野まち 閲覧数:365

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 街は煌びやかなイルミネーションと響き渡るクリスマスソングで賑わっていた。
 街を行く幸せそうな恋人たちを横目に僕は走る。
 白い吐息はやがて空気に混じり、溶けた。
 ―おまえはひとりなのか。
 ―かわいそうに。
 ―うらやましいだろう。
 目は口ほどに物を言う、というのはこのことか。冷たい視線が凍える体に突き刺さる。
 違う。僕にだって待っているひとがいるんだ。
 お前たちのいう「しあわせ」とは、一味も二味も違う。
 彼女の笑顔がふいに浮かんだ。
 まってて。もうすぐかえるから。

  ・・・

 ―遅い。
 規則正しく、かつ冷たく時を刻み続ける秒針の音が静かな部屋にこだまする。
 意味もなく部屋の中をうろつき続けてもう1時間も経ってしまった。
 いつもはもっとはやいのに。
 お腹もすいたし、はやく帰ってきてよ。
 ぽつりと呟く。
 誰にも届かないまま、ことばは空気になった。


  ・・・

 
 走るのにも疲れたころ、丁度彼女の気に入っている店が目に入った。
 そこには食料品や雑貨が売っており、そこで買った食料品をすぐに食べられるようフードコートもある。
 今日は特別帰りが遅くなってしまって、きっと彼女は怒っているに違いない。
 今日はクリスマスなのに。
 ・・・お詫びの品を買わなくてはならないな。
 わがままで、マイペースで、怒りっぽくて・・・とてもいとしい彼女に。


  ・・・

 「・・・ただいま!」
 やっと帰ってきた!
 息も荒いし、鼻のてっぺんが赤くなってトナカイみたいになってる。もしかして走ってきたの?
 そんなことしたって許さないんだから。今日のわたしはしつこいわよ。
 「ほんとごめん。今日はクリスマスなのに・・・。」
 ほんとよ。この私を待たせるなんてなかなかいい度胸じゃない?
 「だからこれ、言い訳ってわけじゃないけど、プレゼント・・・」

  ・・・

 僕は雪の積もった袋をがさがさと漁り、その中の一つを彼女に差し出した。
 それを見るなり、彼女の顔はたちまち喜びの物へと変わった。
 そしてこちらへ駆け寄ってくるなり、
 猫用高級缶詰に鼻を近づけ、
 満足そうに「にゃあ」と鳴いた。


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