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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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偏食者のカタストロフィー

16/11/21 コンテスト(テーマ):第121回 時空モノガタリ文学賞 【 捨てゼリフ 】 コメント:7件 泡沫恋歌 閲覧数:695

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「こんなまずい飯が食えるかっ!」
 テーブルの上に並べられた料理を見るなり、夫の口からそんな捨てセリフが吐き出される。そして家から出ていってしまった。行き先はどこかわかっている、ここから歩いて十五分先にある夫の実家に決まっている。
 そこへいけば、彼の母親が好きな料理ばかり並べて待っているのだ。

 結婚して一年、夫とはうまくいっていない。
 主な原因は私の作った料理が気に入らないことだ。一緒に暮らしてみてわかったことだが夫には偏食がかなり多い。野菜や魚をほとんど食べない、肉をメインに油っこい料理が大好き、味付けも濃い目の甘めだった。
 生活習慣病のリスクなど健康のことを考えて、私が野菜の煮つけや焼き魚などヘルシーな料理をつくると、きまって不機嫌になって、自分の実家へ帰ってご飯を食べさせてもらう。
 ひとり息子を盲愛する母親は、彼が食べたいといえば真冬だってスイカをさがす人――。いつだって息子が好きなものだけを食べさせてきた。そんな母親に育てられた夫は、甘えん坊で自己中な子どもっぽい性格になってしまった。
 おまけに半年前に舅(夫)を亡くしてから、姑はひとり暮らしは寂しいからと、なんだかんだと用事をいいつけて夫を実家に呼びつける。だが、嫁である私にはこないでいいという。このふたりの親子関係がコア過ぎて……とても入り込めない状態なのだ。
 夫は週に三、四日は実家で暮らし、夫婦のマンションにはあまり帰ってこない。ふたりの将来に夢を描いて結婚したはずなのに、こんなはずじゃなかった、夫は母親べったりのマザコンだった。
 なんども話し合ったが、夫は「おまえの料理がまずいからだ」というばかり、姑には「大事な息子にまずい料理を食べさせるなんて、あんた嫁失格よっ!」と怒鳴られた。その上、親戚中にメシマズ嫁だと風評してまわったので、みんなから冷たい目で見られている。
 夫の健康を考えて作ってる料理なのに、なぜそこまで悪口をいわれなきゃいけないの?

 ――ほうとうにばからしくなってきた。

 好きな料理しか食べない、嫌いな食材が入ってるだけで、ふくれてすねる……それが、だいの大人のすることか? 私への当てつけか、実家でご飯を食べてくる夫と、それを喜ぶ母親に心底幻滅した。結局、料理をめぐる『嫁姑戦争』で敗北したのは私の方だった。
 マンションに帰らないからと生活費も入れず平然としている夫に、ついに堪忍袋の緒が切れた。どうせ賃貸だし、こんな広いマンションの家賃は私には払えない、自分の荷物だけまとめて一人で引っ越しする。
 その後、離婚の話しあいをしたが夫も姑も「離婚したら、世間体が悪い、出世にひびく」と、それを理由に断固拒否された。
 別居したまま、私は自立した人生のために正社員として働ける仕事に就いた。

 ――もういいや、こんなクソ親子は放っておこう!

 あれから十年の歳月が流れた。
 私は若者向きのキャラクターグッズを取り扱う大型店舗の店長をしていた。みじめだった結婚生活に終止符をうって、その後は仕事に打ち込んだ、その成果が認められて出世した。
 年俸も一流企業の課長クラスもらっている。マンションも買った、外車に乗ってる。年に二、三回はバカンスで海外旅行だ。

 そんな私の元に、いきなり夫から連絡があった。
 どこで調べたのか私の店舗に電話があった、店員から「店長にお繋ぎします」といわれて驚いていたようだ。
 大事な話があるというので、渋々ファミレスで会うことになった。
 わざと遅れていったら、夫は分厚いステーキにかぶりついていた。しばらく見ない間にかなり肥っている。たぶん20キロは体重が増えてるだろうか? おまけに顔が脂でギトギトして気持ちの悪いおっさん、見た瞬間、鳥肌が立った。
 さっそく用件を訊いたら、「おふくろが脳梗塞で倒れて寝たきりになった。実家に戻って姑の介護をしてくれ」という。脳梗塞? 息子の方も血糖値、中性脂肪、コレステロール、血圧とぜんぶ高そうだ。「おまえは嫁なんだからやってくれ」マザコン亭主が勝手なことをいっている。
 元気なときは母親べったりで病気になったら人まかせ……なんて薄情な息子だ。昔、私にやった仕打ちは忘れない、その後はひとりで生きてきた。
 どの面さげて『嫁』なんて言葉がいえるんだ!? 私はあまりの怒りに総毛立つ。

 今こそ、この男に長年腹に溜めていた、このセリフを吐き出してやる!

『マザコンのくせに、母親の介護もできないかっ! 偏食ばかりやってる、あんたも成人病で倒れるよ。そんとき私はしらない。自業自得ってやつだ!』

 そういって、さっさっと席を立った。

 この先、なにをいってきても聞く耳もたない。こっちは有能な弁護士を立てて離婚の話しを進めるつもりなのだ。
 偏食、マザコン亭主、ざまぁーみろ!


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このストーリーに関するコメント

16/11/21 泡沫恋歌

写真は私がステーキハウス ブロンコビリーで食べたステーキです。

偏食はないけれど、やっぱりお肉は美味しいよね(❃´◡`❃)

16/11/21 霜月秋介

泡沫恋歌さま、拝読しました。

画像を空腹のときに見てしまい、腹の虫が激しく鳴っております。
主人公の旦那親子へ対する怒りがよく伝わってきます。
最後の捨て台詞がなんとも心地よいですね。ざまーみろ!(笑)

16/11/24 泡沫恋歌

霜月秋介 様、コメントありがとうございます。

このステーキ美味しそうでしょう?
じっくりと炭火で焼いたステーキを鉄板に乗せて持ってきてくれるんです。

こういうマザコン亭主というのが、嫁にとって一番の不幸だと思う。
ずっと我慢して、最後の捨て台詞は、ざまぁーみろ!(笑)

16/11/30 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、拝読しました。

ステーキの写真が食欲をそそりますね、欲しいなぁ。
しかし、マザコンで偏食な旦那はいりません(笑)。主人公ががんばり屋さんなのに、何と身勝手な……確かに捨て台詞を吐きたくなりますこの状況。ざまぁーみろ!我が儘な相手に言うとなんだかすっきりしますね。ありがとうございます。

17/01/04 泡沫恋歌

海月漂 様、コメントありがとうございます。

マザコン偏食旦那は最悪ですよ。
だいたい偏食の多い人は、わがままな人も多いと体験上でも分かってる。

いい大人が「あれ嫌い、これ嫌い」と食べ物を箸で避けて食べてるのをみると、
子どもじゃあるまいしと思うね(笑)

17/01/04 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、コメントありがとうございます。

もうこういうマザコンで偏食旦那なんか、捨ててもいいクラスです。
それに肉ばかりの偏った食生活では、いずれ成人病で倒れますよ。

ヘタしたら旦那の介護を長くさせられそうだ。
ざまぁーみろ! といいたくなる相手とは出来るだけ早く縁を切りたいね!

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