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新木しおりさん

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メリー・メリー・クリスマス

16/11/21 コンテスト(テーマ):第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】 コメント:0件 新木しおり 閲覧数:383

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「はい、これ。クリスマスプレゼント」
 夜景の見えるレストランの、窓際の席。俺は正面に座る恋人の里香に、綺麗にラッピングされた長細い箱を手渡した。「ありがとう」と里香は嬉しそうに箱を受け取る。
「ネックレス?」
「そう。ごめんな、ありきたりで」
「ううん。すごく嬉しい。ありがとう、俊ちゃん」
 彼女は箱を丁寧にバッグに仕舞い、次いでバッグの脇にあった紙袋を俺に差し出した。
「これは私からのプレゼント」
 そう言って紙袋を渡され、俺は笑顔で礼を言った。俺は紙袋の中を覗く。すると、そこには信じられないものが入っていた。
 艶のない、黒い塊。それは回転式拳銃、所謂リボルバーだった。
 俺はゆっくりと顔を上げる。その表情はきっと引きつっていたに違いない。
「これは?」
「香水。あなたに似合いそうなものを選んだの」
 そう言って里香はにっこりと笑う。俺はもうわけがわからなかった。
「ああ、ありがとう。大切に使わせてもらうよ」
 俺がこれを使うときは果たして来るのだろうか。
 そこで俺の頭の中に、ある考えが浮かんだ。もしやこれは、ドラマなどでよくある「アレ」なのではないか。
「なあ、里香。ここに来る前、何か変わったことはなかったか」
「別に? ……ああ、そういえば」
 里香は思い出したように人差し指を立てる。
「待ち合わせ場所だったツリーに向かう途中、男の人とぶつかったわ。そのとき、一度プレゼントを落としちゃったの」
 ビンゴ。俺は心の中で呟く。つまり里香は、その男とぶつかったときに、男の持っていた紙袋と自身の持っていた紙袋を取り違えてしまったのだ。
 なんということだ。ただのプレゼントの類だったならまだしも、入っていたのは拳銃。相手の男もわけありの人物に違いない。
「もしかして、瓶、割れてた?」
 不安げに問う里香に、俺は平気だと答えた。
「ただ、君があまりにも魅力的だから、ナンパでもされなかったかと心配になったんだ」
「もう、俊ちゃんったら」
 里香は頬を赤らめて笑う。俺は引きつった笑みを浮かべるので精一杯だった。
 それから他愛のない会話をしながら食事を続けたが、食材はうまく喉を通らなかった。
 俺は店を出てすぐ、里香を人気のない路地に連れていった。何故こんなところに連れてくるのかと問われ、俺は真剣な目を彼女に向けた。
「里香、一つ訊いてもいいか。おまえとぶつかった男、そいつも同じような紙袋を持っていなかったか」
「ええ、持っていたけど……」
 数秒の間の後、まさか、とでも言いたげに里香は目を見開く。俺が紙袋の中身を見せると、里香の顔は真っ青になった。
「どうしよう。私、男に顔を見られたわ。見つかったらきっと殺される!」
 里香はパニックになっているようだった。すると、何を思ったのか里香は紙袋の中から拳銃を掴み取り、銃口を俺に向けた。
「俊ちゃん、一緒に死んでくれる……?」
 拳銃を両手で構えた里香が震える声で言う。今度は俺がパニックになる番だった。
「待て、里香! 落ち着け! 警察に話せばきっと力になってくれる! だから心中なんてやめるんだ!」
 しかし俺の訴えは里香には届かなかったらしい。彼女はハンマーを起こし、トリガーに指をかけた。
 パンッ! 乾いた音が路地に響く。俺は咄嗟に目を瞑った。
 しかし、何秒経っても痛みはやってこなかった。恐る恐る、俺は目を開ける。すると、里香の構えている拳銃の銃口から小さなガーランドのようなものが飛び出ていた。どうやら旗の一枚一枚に文字が書かれているらしい。俺は里香に近寄り、その文字を読んだ。
「『メリークリスマス』……?」
 俺の言葉に、里香がくすくすと笑う。その笑顔の意味を、俺は瞬時に悟った。
 つまり、すべては彼女が仕組んだことだったのだ。俺は安堵すると同時にその場に座り込む。それからすぐ、声を上げて笑った。
 ああ、なんて散々で楽しいクリスマスなんだろう。俺はその日、里香が恋人でよかったと改めて思った。


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