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水無月の新宿

12/04/01 コンテスト(テーマ):第一回 時空モノガタリ文学賞【 新宿 】 コメント:0件 まきちゃん 閲覧数:1757

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 久しぶりの東京訪問。
 季節のよい6月の札幌を離れ、梅雨真っ最中の東京へとやって来た。
特に理由はなかったが、なんとなく予感はあった。

 羽田空港からそのまま赤坂へ。東京へ嫁いた友人と待ち合わせ
都会のランチを堪能する。高校時代からの友人との会話は
尽きることがなかったが、雨のせいか暗闇が早く訪れ、
友人はご主人と2人の子供が待つ家へと帰って行った。
 降り続く雨への絶望感と下ろしたての靴に慣れない足の痛みで、
私もそのままホテルへと戻った。
 
 翌日、この日は都内にマンションを購入した友人宅へ
おじゃまさせて頂いた。残念ながらこの日も雨が降り続いていた。

 ”昨日は疲れてさぁ、ホテルでコンビニ弁当だったんだよね。
だから、今日は絶対に飲みに出たいんだぁ。”

 と言って、友人に乗り換え駅の新宿駅付近のバーをネット検索してもらう。

 ”やっぱり、Kホテルがいいよ。雨に濡れないで行ける通路もあるしね。”
と、友人に教えてもらい、調布駅から京王線で新宿へと向かった。

 新宿駅は本当に広い。人も多いし、みんな脇目も振らずに歩いている。
そんな様子を少しの間眺めていた。
よそ者であることの孤独感と優越感を感じながら・・・。

 そしてなんとなく冷めた気分で、ホテルのバーへと向かう。


 ”お一人様ですか?”
 ”はい。カウンターでいいです。”
 
 新宿の一流ホテルのバーは、札幌とはまるで違っていた。
客層も振る舞いも話し方も笑い方も何もかも・・・。

 私は大好きなマルガリータを注文し、
馴染めない雰囲気にそわそわしながらも
新宿でお酒が飲めたことに満足していた。

 すると左隣に一人の男性が座った。
お店の方々が挨拶をするので、その男性は常連と思われた。
私よりちょっと年下くらい?その男性はちょっとだけかっこよかった。
 なんとなくお互い気にしている感があった。
話しかけてくるのかと思えば、そうでもない。
私はマルガリータから日本酒へと切り替えた。

 もうそろそろホテルへ戻ろうかと席を立とうとした瞬間、
”彼女に同じものを。”と、その男性が口を開いた。
私はそれが当たり前であるかのように、もう一度椅子に腰を下ろした。
そして何年も前からお互い知り合いであるかのように
私たちは話し始めた。何もかもが自然でごくあたりまえのように・・・。
 あまりにも楽しくて、ずっとこんな風だったような気がして、
明日もまた会えるような気がした。


 ”そろそろ帰らなきゃ・・・。”
 ”駅まで送るよ。”

 私達はホテルのバーを出ると、新宿駅へ肩を並べて歩いた。
 午後11時を過ぎても人出が絶えない新宿駅。
 ここから私達は何事もなかったかのようにそれぞれの居場所へと向かう。
私は彼がどこへ戻って行ったのかを知らない。そして彼を待つ人の存在も・・・。

 翌朝は梅雨が明けたのか、くらくらするほどの晴天だった。
 羽田空港へと向かう電車が新宿駅を通過し、夕べの記憶を呼び覚ました。
心に強いお酒を注がれたように胸の奥が熱くなった。

 遠ざかる新宿の街を眺めながら、日常へと戻る自分を感じていた。


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