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結簾トランさん

お話を書くのが好きな、結簾トランと申します。紅茶とケーキと古めのものも好きです。よろしくお願いいたします。小説家になろうにも同名でおります。http://mypage.syosetu.com/915289/

性別 女性
将来の夢 たのしいお話を生み出す人になりたいです。
座右の銘 「結局俺たちに選べるのは、やるかやらないだけなんだ」FFXのジタンの台詞です。

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さみしがりヒールズ

16/10/25 コンテスト(テーマ):第121回 時空モノガタリ文学賞 【 捨てゼリフ 】 コメント:0件 結簾トラン 閲覧数:724

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「今度会ったら覚えてろ!」
「今日のところは見逃してやる!」
「これで勝ったと思うなよ!」

 寂しがりである。まごうとこなき、寂しがりやの台詞である。
 彼ら悪役、ヒールたちの頭に「ヒーロー若しくはヒロインが綺麗さっぱり自分のことを忘れ去ってしまう」という観念は存在していない。もし万が一、ヒーロー若しくはヒロインがうっかり忘れ去ってしまったらさて、ヒールズはどうするか。恐らく、前回出会ったときよりも激昂して、自分の存在を刻み付けようとするだろう。俺を忘れるとは何事か。彼らヒールズにとって、相手はある意味己の存在を証明する鏡なのである。
 だから、捨て台詞を吐く。次に繋げていく為に。それまでに一生懸命頑張って、ヒーロー若しくはヒロインに今度こそ「負けました」と言わせる為に。なんとも健気な彼らではないか。物語の悪役に対し必ず一定層のファンがつくのは、単純にそのヒールのキャラクターが好みという場合も勿論あるだろうが、シナリオの構成上決して勝ち逃げ出来ない彼らに対して心の奥底でひっそりと同情や共感をしているから、かもしれない。あくまでこれは仮定であるが。誰しも大体一人くらいは、勝てないと思う存在を心に持て余しているものである。誰しもヒールズ。誰かのヒールズ。勝てなくても、超えられなくても、ヒールズは運命に立ち向かう。そして負ける。今日も負ける、捨て台詞を吐く。次は勝つ為に、明日の自分に繋げる為に。なぜだろうか、涙が滲んできた。
では、そんなヒールズの捨て台詞をちょっと変えてみよう。いったいどうなるのだろうか。

「今度会う時は知らない人だ」
「俺の方から身を引こう」
「お前の勝ちだ」

 おや、なんだか二枚目の台詞のようになった。これは驚き。潔く、おおらかで、引き際を弁えている。なんということだ、ヒールズが大人になってしまった。これではヒーロー若しくはヒロインにとっての、たとえこの先出番がなくとも、「時折思い出し、いつまでも忘れない。私に教訓を授けてくれたあの人」にすらなり得るではないか。ああ、ヒールズ、我らがヒールズ!少し鍛錬をやめて、この実験結果を見てほしい。どう、こっちの方がなんか格好良くない?さて、ヒールズはなんというだろう。
 きっとヒールズは、最初の台詞を曲げないに違いない。
 だって、ヒールズはヒールだからである。己の役割、力量を突きつけられて尚、悪役として戦い続けるだろう。ヒーロー若しくはヒロインの壁になる為に、今日もヒールズは精一杯頑張り、そして負ける。次の活躍の為に、捨て台詞を吐く。明日も、明後日も、明々後日も。
 なんだかヒールズを応援したくなってきた。負けることに負けるな、ヒールズ。私はそんなあなたたちを愛そう。捨て台詞を吐いて背を向けた者を、愛してはいけないという決まりなどない。
 さぁ、負けようヒールズ。明日の自分を守る為、大声でお決まりの台詞を叫ぼう。我らが愛すべき、寂しがりやヒールズ。二枚目になんてならなくていい。そうして嫌な役を背負い続けて、きっといつか、そうアレだ、特製の劇場版なんかでちょっとヒーロー若しくはヒロインに手を貸して御覧よ。ヒールズの株、ダダ上がりするから。


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