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水面 光さん

■ホームページ「水面文庫」 http://www.minamo-bunko.com/ 忙しい中でも身を粉にして執筆活動しております。ジャンルとしては現代ファンタジーが中心でございます。よろしくどうぞー

性別 男性
将来の夢 物書きでメシを食う
座右の銘 人の心は変わらないから自分が変われ

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にぎやかな神

16/10/11 コンテスト(テーマ):第91回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 水面 光 閲覧数:552

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──落ち着け。まだだ。まだ終わっちゃいない。アイツの無様なつらをこの目で見るまではまだ終われない。「ししょー、わてどうしても田舎が好きなんや。愛してますのや。そりゃ、どうせダサいとか、どんくさいとか、アカぬけてないとか、いろいろとバカにされてきやしたぜ。でもししょー、わて都会より田舎が好きなんや。都会に住んだら、わて、窒息死しますわ。都会に住んでやがるやつらをバカにしてえんじゃねえですよ、ししょー。自分の考えとしてそれだけは譲れねえんですわ。わかってくださいよー、ししょー」「減らず口を錆びた太い針と釣り糸で縫い合わせてほしいのか? 今どういう状況か、ハチ、おめえに理解するのは不可能だってことをオレは死ぬほど知ってる。だが、状況把握ができないのは盛りがついて懸命に腰振ってるいぬっころと一緒だってことくらいは理解できるんじゃないかとの希望的観測だけは持ってるんだよ。やつが出てきたら何をしたらいいか、もう言ったはずだ。さすがに今言ったことくらい憶えてるだろ?」「ししょー、わて田舎が好きなんや。帰らせてもらうで」「ハチ! ここで逃げたらおめえは一生、そう、一生だ、絶対後悔しながら暮らすことになる。なぜそう言えるか理由が知りたいんだろ? いいぞ、言ってやる。酒が飲めねえやつが嫌いなのと同じ理由なのさ。つまりはっきり言うとおめえはやつに嫌われてる。嫌われたらどうすりゃいいか。前例を見たことがあるだろう? ニュースくらいは見てるだろう? 嫌われたらおめえにはそいつを嫌いになる確固たる理由ができるんだよ。いや、権利と言ったほうがいい。嫌いなやつに対して絶対にすべきこの世界で唯一のこと──オレにそれを言わせる気か? ハチ」「ししょー、かんべんしてくだせえ。ごしょうですけえ。わてほんまに田舎でひっそり静かに暮らしてえだけなんですわ。ほんまですぜ、ししょー。ですけえ──」「ハチ! おめえにはもうそんなことはできねえ。こうなっちまったらもう引き返せねえんだ。やることはわかってるな? おい、泣くな。その涙はかあちゃんが死ぬ時まで流すんじゃねえ」「う、うう、し、ししょおおー、わて耐えられませんわ。帰るけえ──」「ハチ! やつに吠え面かかすことができるのはおめえしか居ねえ。やれ! やるんだよ!」「イヤです、ししょおおー!」「ハチ! いいか? やつはおめえのことをなんとも思っちゃいないわけじゃない。いや、むしろこの上なく思ってやがる。その感情、ズバリ言えば『嫌悪』だ。おめえには難しい言葉だったな。簡単に言やあ、やつはおめえのことがキライってことなんだよ。心の底からなあ」「ししょおおーお、そんなやつのことはどうでもいいですきに。わて自分をキライだと言ってくるやつのことなんかどうでもいいですきに」「馬鹿野郎! それでも男か? 男というのは闘争心がなければ男と言えねえ。男ってな戦ってる時に一番生きてる歓びを感じるんだよ。おめえまさかへなちんじゃねえだろうな?」「ちがいます、ししょー。わて、へなちんじゃねえです」「だったら! ごちゃごちゃ言わずにやるんだよ! お偉いさんも言ってるじゃねえか。お示ししなければならぬと!」「わ、わかりやしたししょー。わて、やったります」「よおし、その気になったか。おっ! 出てきやがった! やつだ! 行け、ハチ!」「さよなら、ししょー」──「おでん、おとりしましょうか?」「このふくらんでるやつなに?」「──え、っと、はんぺんじゃないかな。ふわふわしてておいしいですよ」「ふうん、ま、今日はいいや、全部で三つ、大根と、厚揚げと、だし巻き玉子」──「ししょーもうダメです!」「馬鹿! 途中で投げ出すやつがあるか! 最後までやるんだよ!」「や、薬味を選んでください」「──」「それだけでいいですか?」「え? まだ選んでいいの?」「はい、どうぞ」──こ、こいつはわてをきらっとんのや。そうだ、考えるまでもない。すべきことは一つ。マストドゥーイット! やれ! ──「このくそハゲ帽子をとれ!」ハチは客のかぶっている帽子の裏がどうしても見たかった。ただそれだけのこと。「やっぱりハゲてやがるじゃねえか!」「それがどうかしたか? これだから田舎モンは嫌いなんだ。そんなに珍しけりゃ写メでも撮ったらどうなんだ? やいのやいの言いやがって。それとも何か? おうちの外に出たことない箱入りナントカか? どうせくそつまらん妄想しかしとらんのだろ? そんならずっと自分の中に居ろよ。外に出てくんな。目障りだ」「や──」「言いたいことがあるなら早く言え。こっちゃ忙しんだ」「やっぱり、あんたあわてのことをきらってやがるんだな?」「聞いてわからんのか? 低能」「ちくしょう!」──その夜のコンビニはいつもと違ってとてもにぎやかだった。そう、この上なくとっても。にぎやかなほうが好きな神もいらっしゃる。ハチにとってもその神の存在は確かなものだった。願わくば衆生とともに──


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