1. トップページ
  2. 不自由なこの世界にSFを

浅月庵さん

笑えるでも泣けるでも考えさせられるでも何でもいいから、面白い小説を書きたい。

性別 男性
将来の夢  
座右の銘  

投稿済みの作品

0

不自由なこの世界にSFを

16/09/28 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:784

この作品を評価する

 きみはいつもなにもかもが自分の思い通りになると思ってるね。
 なにか困ったことがある度にぼくに泣きついてくるのは、そろそろやめにした方がいいよ。きみだって、もう良い大人なんだからさ。

「また仕事で失敗しちゃったよぉ。過去の自分をちょっと止めてくる」
 そう言ってきみは、唇をギュッと結ぶ。

「またきみは自分のミスを素直に認めない。いい加減にしたらどうだい」
「だってぼくは、今とっても困ってるんだよ。きみはぼくを助けるために来てくれたんだから、ちょっとくらいタイムマシンを使ってもいいじゃないか」
「他人にばかり頼って、肝心の本人が成長してないんじゃ、全然手助けになってないよ!」
 ぼくが右拳を挙げて怒ると、きみはシュンとなる。さすがに言い過ぎたかな。

「……ぼくだってさ、一生懸命頑張ってるつもりなんだ。でもさ、他人よりドジでノロマで、悪いところが治る気配がちっともない。やっぱり、世の中にはどうしたって上手くいかないこともあると思うんだ」
 きみは膝をかかえたまま、体育座りの格好でポロポロと涙を流す。

「なにも泣くことないじゃないか」
「だって……」
きみは眼鏡を外し、溢れ出る涙を必死に手で拭う。その様子が不憫で見ていられない。
「……もう! 今回だけだよ」
「え?」
「今回でもう終わりだからね。これからは自分の力だけで失敗を乗り越えるって約束できるかい」
「うんうん! できるとも!!」
「そして、改変するのは仕事のミスの部分だけだからね。余計なことしないでよ」
「やったー! ありがとう」

 本当に調子のいい奴め。
「そんなんだからきみは、いつまで経っても......」と、ぼくはぶつくさ文句を垂れる。
 
 ーーだけど、こんなこと言ってたって、結局ぼくはきみのことが好きなんだ。放っておくことができない。ずっとこういう付き合い方をしてきたから、今更変えられないし、おそらく深層心理で変える気もないのだろう。
 お説教はポーズであって、きみに手を差し伸ばすことをやめられないんだ。

 きみは小学生の頃から使っている勉強机の引き出しを開けると、その中へと迷いもなく飛び込んだ。
 ぼくもそれに習い、今日もきみの後ろを付いていく。
 
 いくらでも僕たちの運命を変える手段はあるっていうのに僕はーー。
 きみと出会わない過去に出会う気なんて、毛頭ないのだ。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン