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黒猫千鶴さん

初めまして、黒猫千鶴です。 ラノベ作家を目指してます。 時間がある時は覗いてみてください、よろしくお願いします!

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何度繰り返しても

16/09/28 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:1件 黒猫千鶴 閲覧数:1183

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 もし、時間を操る力を持っていたら、君ならどうする?
 過去に戻って、人生をやり直す? それとも未来に行って、自分がどうなるのか見ちゃう?
 そうだな、僕なら――

「世界を救うヒーローになりたいです!」

 堂々と宣言してやった。
 今は現代文の授業中。高校生になってまで、将来に何をやりたいかの作文を書く。そんな子どもっぽいことしてられるか、と周りは文句を漏らしていた。でも、僕はそんなこと思わない。だって、野望を口に出すチャンスなんだ。

「――ぷっ!」

 誰かが吹き出したのを合図に、教室が笑いの渦に飲まれた。
 そんなに面白いことが、あったんだろうか? 首を傾げて、続きを読み上げようとした、その時。

「足立(あだち)君、一回座りなさい」
「? はい」

 教師に言われた通りに、自分の席に座る。先生は溜め息を吐いて、皆に静かにするように言う。

「足立君、今は何の授業だったかしら?」
「現代文です」

 当たり前のことを訊くんだろうか。

「そうね。それで、現代文でどうして作文を書いてるのかしら?」
「将来何をやりたいかを面接で言えるようにする練習です」

 僕達は受験生だ。最近の授業は面接で困らないように、というものが多い。現代文では、その原稿作りをしている。

「そこまでわかっているのなら、どうしてそんなことが書けるのかしら?」
「僕は本気です」

 また教室が笑いに満ちる。

「静かに!」

 どうして、クラスメイトが笑うのか、わからない。
 どうして、先生が呆れた表情をしているのか、わからない。
 僕はいつだって本気なのに――

「足立君、今日中に書き直して提出しなさい」

 気付けば、授業は終わっていた。放課後になっても、僕は作文用紙を前にしている。
 先生のOKがもらえない限り帰れないらしいが、どうでもいい。
 帰るために夢を、目標を曲げるくらいなら、僕は学校に泊まってやる。

「見て、まだ足立のやつ作文やってるよ」
「本当だ〜、早く書き直せばいいのに」

 女子が廊下から僕を指差す。

「あいつ、頭ん中は小学生なんだな」
「いや、小学生でもまともなこと言うって」

 男子が僕をバカにする。

(そんな変なことを言ったつもりは、ないんだけどな……)
「まだやってるんだ」
「みっちゃん」

 教室に入ってきたのは、隣のクラスの喜多島美紀(きだじま みき)。小学校から一緒で、クラスが変わっても仲良くしている唯一の女子だ。

「早く適当なこと書いて終わらせればいいのに」
「そんなこと出来ないよ」
「相変わらず、頑固だよね。ゆっくんって」

 足立雄太(ゆうた)だから、ゆっくんって呼ばれている。もちろん、みっちゃんにだけ。

「訊いたよ、世界を救うヒーローになるんだって?」
「なんで知ってるの!」

 思わず立ち上がる。
 みっちゃんは黒板の前まで歩いて行く。教卓の後ろに立つと、肘をついて溜め息を吐いた。

「学年中の噂になってるよ」
「へえ〜、僕って有名なんだね」
「……悪い意味でね」

 照れくさくなって、僕は頭を掻く。対して、みっちゃんは呆れた表情で、教卓の上に座る。足を組んで、僕を見下ろした。

「あんたって本当にバカなんだね」
「いきなり酷いな」
「世界を救うヒーローになんて、なれる訳ないでしょ」
「そんなのやってみないとわからないよ」
「やってみなくてもわかる」
「わからない」

 僕とみっちゃんは見つめ合う。お互いの主張を一歩も譲らない。小学校の時からそうだった。僕が何かしようとすれば、みっちゃんが全てを否定する。

「どうして、君はそんなに悲観的なの?」
「違うから、ゆっくんが楽観的なだけ」
「いーや、悲観的だよ」

 ほら、また意見がぶつかり合う。でも、僕は嫌いじゃなかった。みっちゃんにはみっちゃんの、僕には僕の言い分がある。この時間だけでも楽しかった。

「じゃあ、僕が世界を救うヒーローだって証明してあげるよ」
「どうやって?」
「手始めに君の世界を救う」

 僕は手を伸ばす。

「何があっても、僕が君を助けるから」
「……何それ、面白い」

 クスクスと笑うみっちゃんを見て、僕も一緒に笑う。
 この時のみっちゃんは、冗談だと思っているでしょ? でもね、違うんだ。君は覚えていなくても、僕は覚えているよ。
 初めてのやり取りだと思っているでしょ? 僕にとってはもう、数えきれない程繰り返しているんだ。
 この後、君は誰かに階段から突き落とされる。それを阻止しても、学校から出ても降ってきた机や椅子の下敷きになる。それを食い止めても、校門から出れば車にひかれる。

「何があっても、君を守るよ」

 みっちゃんがいない世界なんて、僕には考えられない。僕の世界には君が必要なんだ。だから、何度だって助けるよ。


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このストーリーに関するコメント

16/10/03 あずみの白馬

拝読させていただきました。
はじめのほのぼのとした展開から急転直下に至る過程が見事に組まれていると思います。
何度でもあがない続ける主人公を応援したくなります。

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