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吉岡 幸一さん

性別 男性
将来の夢
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お詫びの品と手切れの品

16/09/20 コンテスト(テーマ):第90回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:661

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 海岸段丘沿いの道を歩いていたのは、人型愛玩用ロボットAタイプ少年型であった。
 愛玩ロボットといってもAタイプのロボットなので、昔愛玩用に生存していた犬や猫の類と考えてもらえばよい。こちらは動けて話せて考えられる人間を模した機械である。
 少年型ロボットは妻への贈り物であった。夫は高額な配送代まで支払いたくなかったので、ロボット自ら妻のもとへ納品されに行ってもらっていた。
 浮気のお詫びに、正しくは浮気がばれたのでそのご機嫌取りに、前から妻が欲しがっていた愛玩用ロボットを選んだのである。加えて言うと、人気の幼児型ロボットが高額なため、やむを得ず在庫処分セール中の少年型ロボットにしたのであった。
 ロボット配送センターから飼い主宅まではロボット速度で二時間程度。ロボットなら余裕で歩ける距離だった。
 海沿いの道は車の通りも少なく歩きやすかったのだが、風が強くて馬力を必要とするため電池の減りがはげしかった。
 少年型が汗的なものをかきながら歩いていると、後ろから人型愛玩用ロボットAタイプ少女型が走って追いついてきた。
「ねえ、あなたでしょう。浮気のお詫びの品は」
 速度を落として横に並ぶと、少女型が音量を上げて聞いてきた。
「私もそこに行くのよ。私はね、奥さんの浮気相手から手切れ金代わりの贈り物なの。あなたは旦那さんからなんでしょう。偶然よね、同じ日に愛玩用ロボットをそれぞれ贈るなんて。奥さんの方は浮気がばれていないみたい。きっと私のこと自分で買ったって話すのよ。人間の女はずる賢いからね」
「でも、僕らを飼ってくれるんだから良い人だと思うよ」
 二体のロボットは二時間の間にすっかり仲良くなった。広大な海を眺めながら互いのことを話し、飼い主との生活に夢を描いた。
共に在庫品、数年間売れないままの倉庫暮らし。発売当初は人気もあったが、製造直後に新しいバージョンが発売され、型落ち品として売れ残ってしまった。
電池を入れられたのは何年ぶりだろう。在庫処分セールで売れなければ、さらに倉庫暮らしが続いたことだろう。
「電池が切れていく怖さったらなかったわ。このまま誰にも飼われずに、倉庫に置かれたままにされるのかって思うと」
「飼い主が見つかってよかったよ。事前に飼い主の情報もしっかりとインプットしてきたし、僕らがどういう行動をとれば可愛がられるか、飼い主の趣味趣向、価値観、要望する性格もすべて登録済みだから必ず気に入られるよ」
 テクノロジーの進化は愛玩用ロボットの外見や性格はもちろん、声や匂いや行動などまでも飼い主の要望に完全に合わせることができるようになっていた。
 納品先の飼い主宅に時間通りに着くと、二体は並んで呼び鈴を鳴らした。
 飼い主の夫人はすぐにドアを開けて出てくると待ちわびたように微笑んだ。
「思っていたとおりの姿ね」
 二体は満面の笑みを浮かべて深々とお辞儀をした。
「はじめまして。この度、旦那様の浮気のお詫びの品としてやってきました。在庫処分品ではありますが、五年間保証がついておりますのでどうぞご安心ください。ちなみに最新型の幼児ロボットは旦那様の浮気相手の方に本日納品されることになっております。よろしければ将来的にそちらの製品の購入も検討いただければ幸いです」
「はじめまして。奥様の浮気相手の方から、手切れ金代わりの品として私が贈られてきました。同じく在庫処分品で、五年保証がついています。ちなみに浮気の事が昨晩、奥様にばれてしまったようで、もう二度と会うことはできないと託っています」
 どうかよろしくお願いします、と二体は同時に言って手を差しだした。
 しっかりと嘘なく正しい情報を伝え、明るい笑顔で挨拶ができたことに二体は満足していた。この飼い主が真実を愛し嘘を絶対に許さないことは事前にデータ入力済みである。
 飼い主が顔を真っ赤にして即座に二体を返品したことは云うまでもない。
 二体には夫人が怒った理由がわからなかった。飼い主が要望するように嘘をつかなかったし、掌のモニターにエラー表示も現れていなかった。
 次の在庫処分セールの日までまた倉庫で眠っていなければならない。再び在庫処分セールがあればいいのだが…。
返品情報を入力された二体は来た道を戻りながら思った。胸の表示を見ると、電池の残量が後わずかしか残っていなかった。


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