1. トップページ
  2. 本当に?

素元安積さん

もともと・あづみと申します。 絵を描くのが好き。 話を作るのも好き。 どちらも未熟ですが、楽しみながら頑張ります。

性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

本当に?

16/09/18 コンテスト(テーマ):第117回 時空モノガタリ文学賞 【 本屋 】 コメント:0件 素元安積 閲覧数:466

この作品を評価する

「本当に?」

 それが女の口癖だった。

 その度に男は本当だよと答えたが、女の返しもまた、本当に? ばかりであった。

 ある日男は聞いた。

「じゃあ、君にとっての本当って何なんだ?」

 男が聞くと、女はこう答えた。

「嘘ではないことよ」

 女の答えを聞くと、男はため息を一つして立ち上がった。

「別れるの?」

 女が聞くと、男は言った。

「別れないさ、このくらいじゃ」

 本当に? 聞こうとした女の方へ振り返り、男は続けて言った。

「本当さ」

 男の言葉を聞き、この時女は初めて微笑んだ。

――

「本当にいるんかな、こんな献身的な人」

 古い本屋の片隅で、店員である女は呟いた。

 この古い本屋には、年老いた本好き以外は殆ど来ない。

 それゆえに、暇を持て余す店員の女もまた、置いてある本を読むようになっていた。

「本当さ」

 その声に驚き、店員の女は振り返った。

 声の主は、この店の店長であった。

「彼女は、きっと覚えていないだろうけどね」

 店長は、寂しげにそう呟いた。

 何故だろう、この顔を、記憶の片隅が無性に思い出そうとしている。

 店員の女は、思わず口を動かしていた。

「本当に?」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン