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勿忘草さん

どうか貴方のお心にとまりますように。

性別 女性
将来の夢
座右の銘 泣いて、泣いて、泣きつかれたらまた一人ぼっちの朝が来る。

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輪廻を巡って

16/09/14 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:0件 勿忘草 閲覧数:811

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どうしてこんなにも君の手は温かいんだろう。
君と手を取り合う時いつもそう思う。
君は決まっていつも
「心が優しい人ほど手が冷たいんだよ。だって貴方はとても優しい人だもん」
そう言っていつも微笑んでくれたよね。
僕は君のその優しい笑顔が大好きだった。
「今では君の方が冷たくなってしまったなぁ」
吐息混じりにつぶやく僕はかじかんだ手を強く握った。
大きな樹木の下で、二人して木漏れ日に目を細めながら、晴天の空をどこまでも眺め続けていた。木の葉が揺れる音と蝉時雨、それに溶けるかのような君の声。
あの日はきっと優しい音がそっと響いていた。
「昔話だけどね、本当に子供の頃タイムスリップできたらいいなとか思ってたんだ。科学者達は凡人が理解できないような数学の公式とか考えるでしょ?そんなのじゃなくて、タイムスリップとか不死の薬とかもっとファンタジックなものを発明してほしいなって」
僕はどこまでも続く夢の中にいるようだった。
草原にただ一人で立ちすくんでいても、その一人でさえも心地いいと思えるような、そんな幼い日々の僕はどこにでもいけそうだった。
「タイムスリップか…もしかして未来を変えたいの?でも、私はタイムスリップはいらないかな。だって、貴方と出会ったこと少しも後悔なんてしてないし、これから先も喧嘩したりしてもそれを回避するようなことはしたくないかな。でも、本当にタイムスリップができたら、どんなに時が巡っても変わらずに私のことを見つけてくれる?」
君の言葉はただひたすら真っ直ぐ僕の心に届いた。
何気ないこの日々がずっと続いたならいいのに。
ただ、そんなことを必死に願うばかりだった。
「こんなに小さかったっけ?」
何度も握ってきた君の手のひらがいつにもまして小さく感じられた。
どこかか細く生命力の薄そうなそんな手をしていた。
「そうかな?でも、私は元々手は小さいよ。
でもね、貴方の場合背丈が大きい分きっと心も広いと思うの。
あ、それじゃ答えになってないね」
君は僕を見てふわりと笑った。
まるでどこかへ消えてしまいそうなぐらいにあやうく、どこか儚い影をおびているようだった。
ねぇ、どうして君はこんなにも冷たくなってしまったんだろう。
どうして君はこんなにも小さくなってしまったんだろう。
あれから時が過ぎ、暖房がついた暖かい部屋で、僕はただ一人で本を読んでいた。
目で追っているだけで文字が頭に全くはいってこなかった。
心が休まるどころか、かえって疲れてしまった。
ふと肌寒さに身を震えながら窓を眺めると、はらはらと積もる雪が世界を白く彩っていた。
白く染まる街が羨ましがった。
どうせなら僕の心も白く彩ってください…。
あれから半年が過ぎた。
これからも何度も何度も君のいない季節を迎えては、心を痛め続けるのだろうか?
窓を開けた時白い息が出た。弱々しく伸ばした手のひらに雪が触れると、そっと溶けていった。
「冷たいなあ…」
そっとつぶやいた時、不意に君の姿と重なって目頭が熱くなった。
あの時の君と同じだ。
君のいない世界で僕は色がなくなったように、味気のない日常を過ごしている。
ねぇ、君は僕とした他愛ない昔話の中で、たとえどんなことがあろうとも、過去を変えたくないって言ったけど、僕は君を失うくらいなら全てを犠牲にしても構わないから。
君のいなくなったこの世界をただひたすら変えてしまいたいよ。
もう決して戻れぬ日々を悔やみながら、はらはらと降る雪を見て君と過ごした日々を思い出した。何度祈っても決して届くはずもないのにひたすらに空を仰いだ。


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