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未来からの、ちょっと不思議な侵入者

16/09/12 コンテスト(テーマ):第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】 コメント:2件 ニコロ 閲覧数:585

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「……つまり君は、自分は未来人だと主張するんだね」
「ええそうです。驚きます?」
「いやあんまり……もう驚き尽してしまったからね」
「そうでしょうね。にしても、あんなに大声をだすなんて……こちらまでびっくりしてしまいましたよ」
「仕方ないじゃないか!だって、家に帰ったら見知らぬ扇風機がいきなり喋り出すなんて、誰がそんなこと考える?」
「この時代の人からしたら、あり得ないことなのでしょうね」
「……それでな、扇風機君。君に二つほど聞きたいことがある」
「なぜ僕が喋ることができるのか、なぜ僕が未来から来たのか。違いますか?」
「話が早いね。教えてくれるだろう?別に僕に話したところで、君に悪い影響が及ぶ訳じゃない」
「こちらとて教えて差し上げたいのは山々ですがね、あいにくそれは不可能です」
「どうして?この部屋に入ってきてから、何か君の気に障ることでもしたかな?」
「貴方のせいではありません。だからといって僕が悪いのでもありませんが。まあつまり、僕にも理由が分からないんです」
「理由が分からない?っていうことは、君は自分がひとりでに喋り出し、気付いたら過去にタイムスリップしていたと主張するの?」
「そういうことです。ただ、なぜこうなったのか推測はできます」
「教えてよ」
「いいでしょう。まず、なぜ僕が喋れると言うことですがね。それは単純に、未来には無生物にも意識を与え、人と会話することを可能にする道具があると考えるべきでしょう。例えば、僕のスタンドの側面にシールが貼ってあるでしょう?それが僕を話すことを可能にしているものかもしれません。ただのメーカーのマークに見えるかもしれませんが。あ、だからといって意地悪に剥がしたりしないで下さいよ」
「そんなことしないよ!それで、君が未来から来たのは?」
「理由は僕にも分かりません。実はつい先ほどまで意識を失っていまして、気付いたらここにいたんです。前までにいた部屋と場所は同じでしたが、なんだか部屋にある物がいつもと違う気がして、おかしいなと思ったんです。首を横に回すと壁が見えるんですが、それも心なしか新しなった感じでしたし。そんな中玄関の鍵が開かれる音が聞こえたんです。いやはや、驚きましたよ!何が起こったのか聞こうと思ったら、現れたのが主人ではなく男性でしたから!僕の主人は女性なんです」
「どうやって来たのかも分からないの?」
「ええ、タイムスリップ前後の記憶がないんです。ここに来れたのは、多分時空を移動できるビームか何かを浴びたからでしょう。僕は主人の部屋以外の世界は知りませんが、未来にならそういう装置があってもおかしくありません」
「君の主人は何も?」
「ええ。あの人、僕がどうして話せるようになったかさえ教えてくれないんですよ?尋ねても、ニヤニヤ笑っているだけなんです!」
***
「……分からないの?」
 私は人差し指で玄関を指し、家にたどり着いたことを示した。
「確かに、会話の声が聞こえますね」
 中年の警察官は、驚いたように言った。
「ご自宅には誰もいないはずなんですよね?」
 私がそれに頷くのを見て取ると、彼は後ろに構えている若い警察官二人に目配せした。すると、その内の一人が前へ出て、ドアノブに手をかけた。そして中年警察官は言った。
「今から我々は突入しますが、侵入者は危険物を持っている可能性があります。我々が取り押さえるまで、決して中に入らないで下さい」
 彼の言葉が終わるや否や、大きな音を立てて扉は開かれ、三人の警察官は颯爽と室内へなだれ込んだ。すぐに話し声は収まり、若い警察官二人に両脇をはさまれながら男が出て来た。自分の身に何が起きたのか、理解できていないようである。呆然としながら、彼はそのまま連行されていった。それから中年警察官が姿を現した。
「今回はお気の毒でした。どうやら、盗み目的の侵入のようです」
「そうですか……」
 そう私が呟くと、警察官は付け足すように言った。
「ただ、ご自宅へ押し入ったのは一人きりで、複数犯の犯行ではありませんでした。犯人は、扇風機に話しかけていました。貴方が話し声だと思ったのは、実は男の独り言だったのです。どうやら犯人は家の中に侵入したのはいいものの、犯罪のプレッシャーに耐えられなくなって気が変になってしまったようですな。その結果、何の変哲もない扇風機が喋り出すとの妄想にとりつかれたのでしょう」

 いくつかの手続きの後、中年警察官も署へ帰っていった。他に誰もいなくなった部屋の中で、私は扇風機のガード部をそっと撫でた。するとどこか不満げに、扇風機は言った。
「ご主人、これでいいんですか?あの人、冤罪で捕まりますよ」
「いいのよ」
 私は答えた。
「だって私たちの時代では、罪を擦り付けて人の住居を奪い取るなんて、誰でもやることでしょう?」


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このストーリーに関するコメント

16/09/13 クナリ

か、かわいそう過ぎる…!
人間よりも物の方が現代の倫理観に近いものを持っているとは、未来は切なそうですね。。。

16/09/13 ニコロ

クナリさん、コメントありがとうございます。
実はこの話、書き始めた当初はもっと明るい終わり方にする予定だったのですが、書き進めていたらとんだバットエンドになってしまいました……。こんな未来が実現しないことを祈るばかりです。

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