ポテトチップスさん

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逃亡

12/10/07 コンテスト(テーマ):第十五回 時空モノガタリ文学賞【 北海道 】 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1539

時空モノガタリからの選評

最終選考

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六畳一間の部屋は悪臭が漂い、部屋の壁紙はいたる所にシミが浮き出ている。
フローリングの片隅には布団が年中敷きっぱなしで、その上で田所茂光が仰向けにタバコをくわえて横たわっていた。
タバコの先から白い煙が天井に昇っている。
田所茂光が横たわる布団のすぐ側には、小さなカゴの中で1匹の白い毛をしたハムスターが、絶えず動き回っていた。
まるで田所を怖がり、隙があればこのカゴを抜け出して外の自由な世界へ逃げ出したいかのように、潤んだ小さな両目を田所茂光に絶えず向けていた。

俺は立ったまま田所茂光を見下ろし言った。
「弁当買って来たぞ」
「おう」
田所は布団から上半身を起こし、何日も髪を洗っていない脂で濡れた髪を、右手の爪で掻き毟った。
俺はコンビニの袋から弁当を二つ取り出し、田所にから揚げ弁当を渡し、自分はシャケ弁当を床の上に置いて、その前に座った。
日中だというのに、茶色のカーテンが締め切ってあるせいで部屋は薄暗い。
田所は吸っていたタバコを灰皿でもみ消し、から揚げ弁当の蓋を開けた。
6個あるから揚げの1つを指で掴み、それをハムスターのいるカゴの中に入れた。
カゴの中のハムスターは、余程腹が減っていたのか、から揚げを小さな口で食べ始めた。
「ハムスターって、肉も食うのか?」
「腹が減れば、なんでも食うのさ」
田所は、から揚げを口で咀嚼しながら言った。

3日前、同じ無職の俺と田所は、殺人を犯した。
新宿駅から程近い雑居ビルの一室で、金貸しをしている陳という中国国籍の男を殺したのだ。
俺は陳に300万円の金を借りていて、田所は450万円を陳から借りていた。
田所から陳を殺さないかと言われた時、それもありだなと俺は思った。
だから3日前に田所と共謀して陳を殺したのだ。
陳を殺して3日が経つが、まだテレビニュースや新聞に載っていない事からすると、陳の死を誰もまだ知らないのだろう。
しかし、陳の死体が発見されるのもそう遠くないだろう。
だから、俺と田所はこの弁当を食べ終わったら北海道に車で逃亡する事にしているのだ。
陳を殺した後、部屋を物色すると2000万円の金が無造作に引き出しの中に入っていた。
俺と田所はこの金を使い、北海道で陳と同じ悪徳金貸しを一緒に始めるつもりでいた。
弁当を食べ終わった俺と田所は、タバコに火をつけ吸った。
薄暗い部屋の中で、白い煙が天井に昇った。
カゴの中のハムスターは小さな口を動かし、から揚げを食べているが、やはり潤んだ両目で警戒するかのように田所を見ていた。

道路に路駐していた古い年式のカローラの運転席に俺は乗った。
助手席のドアが開き田所が乗り込む。
「ハムスター連れていかないのか?」
「いいさ、あんなネズミ。俺にちっとも懐かねーから、可愛くねーんだ」
「ふ〜ん」
俺は、車のエンジンをかけ車を走らせた。
後部座席の上には、2000万円が入った黒のバッグが置いてある。
田所は頭を掻き毟りながら言った。
「北海道には、いつ着くんだ?」
「明日の午前中には着くさ」
「じゃ、今夜は何処かに泊まるのか?」
「青森に着いたら車中で、朝までフェリーの運行の時間が来るまで待機だ」
「そう」
国道4号線を北に北上して走らせた。
周りの風景は車を走らせるほど、寂しい田畑に変わっていった。
東北の玄関口である福島県を通り、宮城県を通過した時には夕日が沈もうとしていた。
岩手県を北上している時にはもうすでに、辺りは暗闇に包まれていた。
東京の夜とは違い田舎の夜の暗闇は、深い色をしていた。
助手席の田所茂光は、1時間程前から眠り耽っていた。
対向車がまったく来ない直線の道路から細い側道に車を進め、しばらく走らせた後、川が
流れる橋の上で車を止めた。
エンジンの微かな音と、田所茂光の寝息だけが車内に響いた。
橋には電灯もついておらず、外は不気味な暗闇が広がっていた。
俺は、そっと田所の首に紐を巻きつけていると田所が目を開けた。
「お、おい!」
一気に紐をきつく締め上げた。
田所茂光は、目玉が飛び出そうな程に両目を見開き必死に抵抗した。
「田所、この金は俺が全部使わせてもらう。お前と一緒に北海道で金貸しをやろうと思っていたけど、やっぱりこの金は俺のものにしたい。それと、か弱い動物を飼ったら、ちゃんと面倒みろよな。ハムスターお前に怯えていたぞ」
田所茂光の体から、力が抜け落ちた。
車から降りた俺は死んだ田所茂光を、橋の上から川に放りなげた。
車をバックさせ、また先ほどの直線道路に戻り北海道を目指して車を走らせた。

この3日間の間に2人も人を殺してしまった。
人を殺すのは簡単だなと思った。
車を走らせていると、雨がポツポツとフロントガラスに落ちてきた。
ワイパーを動かした。
「北海道か…」と、車中で呟いた。
車は青森県にようやく入った。


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