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ねこちさん

comicoノベル公式『紅茶つれづれ』執筆。 書き物の幅を広げるため、日々勉強中。   twitter:@nekoti3 http://novel.comico.jp/author/1728422381/

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父から受けた裏切りを、俺は君に仕掛けてみる

16/09/09 コンテスト(テーマ):第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】 コメント:0件 ねこち 閲覧数:860

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きょうのおひるにハンバーグをたべて、パパがじてんしゃをくれました。
ぼくが きりんぐみになった、おいわいです。
ぼくの大すきな青いろで、大すきなライダーのじてんしゃで、ぼくはうれしい。
のってみた。
ころぶました。
もう1かいのってみたけど、またころんて、またのってころんて なきました。
パパは「れんしゅうすれば、のれるようになるさ」といいました。
ぼくは じてんしゃにのってライダーになるから、れんしゅうするといいました。

日ようびに、こうえんでお花みをして、すべりだいとブランコであそんで、それからじてんしゃのれんしゅうをします。
じてんしゃのうしろをパパがもちます。
「まっすぐまえを見るといいぞ」とパパはいいました。
ぼくは「うん」といいました。
がんばったら、ちょっと のれるようになったよ。
「つぎは1人でのってみよう」とパパがいいました。
ぼくはこわかったから「いやだ」といいました。
パパが「わかった」といいました。
ぼくは、パパがうしろをもってくれるだとおもって、じてんしゃをこぎました。
まっすぐまえをみて、フラフラしながらはしりました。
やった!
しんきろく10メートルとっぱ!
すごいぞ!!!
そしたら、すごく うしろからパパのこえがきこえました。
「1人でのれてる! ライダーだなカッコいい!」ってパパがさけびました。
ぼくは、パパがいつのまにか手をはなしてるのに きづきました。

パパが うらぎりました。

とってもとーーーーーーってもうれしかったです。
おわり。



夕焼けに染まる桜並木。
淡いピンク色の沿道が茜色へと濃さを増す。
その花びらがヒラヒラ舞うのを眺めていると、父親に裏切られた、あの日のことを思い出す。
俺が5歳のころの話だから……、ちょうど30年前の出来事だ。
念願だった、なんとかライダーの最新自転車は、春空みたいなメタリックブルーで、やけにピカピカ輝いて見えた。
幼児用にもかかわらず補助輪がないことに、当時の俺は、これっぽっちも疑問を抱かなかったけど、今考えると、初めて自転車に乗る子供に対して、補助輪を外してプレゼントする父親の無茶っぷりに、驚かされる。

「ねぇ、パパ! ぜったいに手ぇはなすなよ! はなすなよっ!」
ちっちゃな自転車にまたがりながら、強気に命令してくる息子の声で、我に返る。
「おう、わかった。任せとけ」
なんて偉そうに答えながら、自転車のサドルをつかんで見せた。
きらりと光る新品のフレームは、あの日の自転車そっくりだ。
もちろん、補助輪なんか、ついちゃいない。
「ほ〜ら、行くぞ! しっかり前見て、こぐんだぞ」
小さな背中に声をかけて、サドルをグッと押してやる。
「うん!」と、うなずきながら答える息子の声に、やる気が満ちてて嬉しくなった。
サドルをつかんで4m……、5m。
力強く、懸命に17.5cmの足がペダルを踏み込み、進んでいく。
グラリと車体が大きく揺れて、慌ててサドルを握る手に力を込めた。
「うぉ!」という短い悲鳴が聞こえてしばらく。
次第にバランスが安定する。
10mまで、あと少し。

父から受けた裏切りを、俺は君に仕掛けてみる。

細心の注意を払いながら、愛情を込めて手を離す。
背後から差す夕焼けが、小さな背中を押すように赤く赤く染めている。
俺の長い影を踏みながら、君がどんどん遠くなる。
「うおっ、パパ! 10m、しんきろく!」
喜びに満ちた息子の声が、彼方から小さく流れてくる。


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