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吉岡 幸一さん

性別 男性
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カーネーション

16/08/30 コンテスト(テーマ):第88回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:752

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花屋の店先で色の白い七歳くらいの男の子がひとり立っています。

店の前にならべられた花をみつめながら途方に暮れているようです。

「こんにちは。きれいでしょう」

エプロン姿の店員さんが男の子の前にしゃがんで話しかけました。

「カーネーションください、あの、一本だけ」

どの花がカーネーションなのか男の子にはわからないようです。

「赤い花と白い花とピンクの花があるけど、どれがいいですか」

「お母さん、赤い花が好きって言ってたから・・・」

「そう、じゃあ、この赤いカーネーションにしましょう」

店員さんは束になっている中から、一番きれいに花が咲いているカーネーションを一輪選んで渡しました。

「ありがとう」

そう言うと、男の子は受け取ったカーネーションと一緒にすうっと霧に包まれて消えてしまいました。

店員さんは尻もちをついてしまいした。自分の目が信じられません。目の前で人が消えるなんてことあるわけがない。きっとマジックに違いない。そう思おうとしましたが、やはりマジックだとは思えませんでした。

「あのう、カーネーションをいただけませんか」

 色の白い三十前後の女性がいつの間にかたっていました。どこかで会ったことがあるような気がしましたが思い出せません。

「はい、どれにしましょうか」店員さんは気をとりなおして言いました。

「そこの赤いカーネーションを一輪だけ」

店員さんは男の子のときと同じように束になっている中から、一番きれいに花を咲かせているカーネーションを一輪選んで渡しました。

「ありがとう、」と、女性は言うと深々と頭を下げました。顔をあげたとき女性の目には涙がいっぱいに溜まっていました。

「どうか、なされましたか」

「ごめんなさい。・・・ちょうど一年前の今日と同じ母の日に、息子がこちらの店で赤いカーネーションを一輪だけ買ったんです。でも、帰る途中で事故にあって・・・」

「もしかして・・・、」

 女性は悲しそうにうなずきました。

「受け取れなかったカーネーションをこうやって受け取りにきたんです」

 カーネーションにやさしく頬を寄せると、女性は少し微笑みました。すると横には消えたはずの男の子が女性の顔を見上げながら立っていました。

「お母さん、お母さん、カーネーションきれいだね」

 男の子は嬉しそうに笑いながら女性と一緒に店を出ていきました。女性の手には二輪の赤いカーネーションがしっかりと握られていました。


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