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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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ダンジョン書店を探して

16/08/29 コンテスト(テーマ):第117回 時空モノガタリ文学賞 【 本屋 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:873

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「ダンジョン書店がどこにあるか答えなさい」
 街の裏通り。巨大なトランクを持った女、シラは片手でチンピラを持ち上げ首をしめた。周りにはシラに倒されたチンピラが何人も転がっている。
「ダンジョン書店なんて知らない! あんなの都市伝説だろう?」
「話にならないわね」
 シラはそのまま片手でチンピラを投げ飛ばした。トランクで追撃を加えると、チンピラが気絶する。シラは自身に危害を加える人間がもういない事を理解すると、その場を後にした。

 この国に来て数日。シラは街中でダンジョン書店について聞いて回った。しかし誰もダンジョン書店の場所を知らないと言う。
 早くダンジョン書店を見つけないと、間に合わなくなるかもしれない。シラは内心焦っていた。

「嬢ちゃんかい? ダンジョン書店を探しているのは」
 街のバルで酒を飲んでいると、大柄な男がシラの隣に座り、そう問いかけてきた。
「そうだけど」
「そのしゃべり方、地元の人じゃないね。服装から見るにどこかのお嬢様かな」
「なにあなた、ナンパ?」
「違うよ。それで嬢ちゃんはダンジョン書店が何か知っているのかい?」
「現在、過去、未来。この世に存在する全ての本が揃っている書店だと聞いているわ。別名アカシックレコードとも呼ばれているとか」
「そんなの作り話だと思わないか? 普通」
 男が手にしたビールを一気に飲み、ガハハと笑う。対してシラの表情は真剣だった。
「……父が病気にかかっているの。体が少しずつバターのように溶けていく奇病。バター病を治す専門書を探しているの」
「なるほど、親父さんのためにか。ワラにもすがりたいわけか」
 今まで陽気に笑っていた男の表情が急に真面目なものに変わる。
「嬢ちゃん、今から三秒間目を閉じてくれ」
「なんのために?」
「三秒後にはわかるさ」
 シラは男の言う通り目を閉じた。一、二、三。目を開ける。

 そこは真っ白な空間に無数の本棚が並ぶ、近未来的な空間だった。

「ダンジョン書店へようこそ。俺は店員のクロウだ。よろしく」
 男、クロウはダンジョン書店への案内人だったのだ。シラは自分がダンジョン書店にやってきた事を確認し、いよいよかと身震いした。
「嬢ちゃんの必要としている本は、たぶんあっちだ」
「たぶんって、店員なんじゃないの?」
「なにぶん店が広すぎてね」
 それからシラは医学のコーナーからバター病に関する専門書を一冊手にし、レジへと向かった。これで父を救う事ができる。シラはようやく安堵する事ができた。
「それで本はおいくらかしら?」
 シラがトランクをレジに起き、中身を開ける。札束。日本円にして一千万円相当の大金が入っていた。
「それはいただけないな」
「これでも足りないって言うの?」
「違う。ダンジョン書店では金を取らないが、お代は違う物で支払ってもらう」
「それは何?」
「時間だ」
 クロウの予想外の言葉。シラは不意を打たれた気分だった。
「このバター病の専門書は今から五十年後に発売される。だから嬢ちゃんには五十年の代金を支払ってもらう」
「五十年の代金を支払ったらどうなるの?」
「嬢ちゃんが次に目を開けた時、そこは五十年後の世界になっている」
「そんな!」
 五十年も経ったら、肝心の父を救う事ができない。それでは意味がないのだ。
「その本を購入して五十年後に行くか、それとも何も買わず退店して現代に戻るか。好きな方を選べ」
 本を購入したら五十年の時が経ち、治療が間に合わず父が死ぬ。本を買わなければ、やはりバター病で父が死ぬ。理不尽な二択だった。
 一体どちらを選ぶべきか。どちらにしろ父は死ぬ。選びようがなかった。
 目を閉じ、シラは思考する。十分に考え、一つの結論を導き出した。
「この店からは退店しないわ」
「それじゃあ本をご購入かい?」
「それもまだ」
「なんのつもりだ」
 クロウが厳しい目つきでシラを見つめる。シラは振り返ると、ダンジョン書店の本棚に向かい歩き始めた。
「ここにはどんな本でも揃っているのよね?」
「ああ。現在、過去、未来。なんでも取り揃えている。だが五十年前の本を買っても、支払う時間は差し引きゼロにはならないぞ」
 その作戦は読まれていたか。だがシラにはもう一つ策がある。
 シラは本棚から一冊の本を手に取った。
「これも一緒にちょうだい」
「これは……!」

 その本の題名には『タイムマシンの作り方』と書かれていた。

「これで過去に戻れば時間を支払った分を取り戻せる。さあ、本を売ってちょうだい」
「まったく、嬢ちゃんには参ったな」
 シラの時間が支払われる。
 激しい閃光。次にシラが目を開いた時、そこは何年後の世界だろうか。だがそんな事はどうでも良い。父を救えるなら、時だって越えてみせる。
 シラは覚悟を決め、目を開いた。


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