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吉岡 幸一さん

性別 男性
将来の夢
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自転車に乗って

16/08/15 コンテスト(テーマ):第87回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:689

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自転車に乗って海辺のハイウエイを走っている
雲ひとつない晴れた空に青い海、カモメが沖に浮かぶ小島の近くで群れている
「なんて気持ちがいいんだろう」
胸いっぱいに風を吸い込んで午後の光りを浴びながら進んでいる
ぼくは十五歳、連休を利用して君に会いに行っている
君も十五歳、半年前にぼくの町から引っ越していった
約束したよね、五月の連休がはじまったら会いにいくって
もう新しい学校には慣れたかな 友達はできたかな まだぼくのこと覚えているかな
君のクラリネットは素敵だったよ 
学園祭の時、ぼくのピアノの伴奏にあわせて、フォスターの「峠の我が家」を吹いただろ
あのときからぼくは気になってしかたがなかったんだ
友達以上の関係にはなれなかったけど 友達にはなれたね
それで満足なんだ 今日、ぼくは友達として会いにいくよ
さっき海辺で貝殻をたくさん拾ったよ、紫色のきれいな貝殻が一個あったんだ
それをあげるね デパートで買ったクレマチスが描かれているハンカチと一緒に
もうすぐ会えるんだね もうすぐ君に
自転車は海辺のハイウエイを走りつづけている
海はおだやかで風もやわらかい 
ときおり通りすぎる自動車も風景のアクセントになっている
「おい、見たかい、あの自転車」
「ああ、いま通り過ぎたとこにあった自転車のことか」
軽トラックに乗ったふたりの男が不思議そうに話す
「貝殻を咥えたカモメがサドルに乗ってなかったか」
「それに首にハンカチみたいな布っきれを巻いていたぞ」
ふたりの男は深く考えるのをやめるようにラジオのスイッチをいれると
短く「ハハッ」と笑って、流れてきた演歌を無理に口ずさむ
アクセルを踏んだ軽トラックの姿はしだいに遠くなり見えなくなっていく
さびてタイヤのつぶれた自転車はガードレールに寄りかかり
後ろのタイヤだけがカラカラと風にふかれて回っている
カモメはただまっすぐに、前を向いている


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