1. トップページ
  2. 裏切りソードと私のブルース

海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
座右の銘 焼肉定食!

投稿済みの作品

0

裏切りソードと私のブルース

16/08/15 コンテスト(テーマ):第116回 時空モノガタリ文学賞 【 裏切り 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:822

この作品を評価する

 十六歳の誕生日。リサイクルショップで、裏切りソードを買った。一振り五百円。破格の値段だ。
「お嬢ちゃん、俺を買うなんていい目しているじゃないか。俺を何に使うつもりかい?」
「お父さんを殺すため」
 そう答えると、裏切りソードは剣なのに、昔の映画俳優みたいにひゅーっと口笛を吹いた。
「お父さん、アルコール中毒で暴力を振るってくるの。だから」
「なるほどね。でもただ父親を殺すためなら、ナイフや包丁でも良いんじゃない?」
「ダメ、剣じゃなきゃ意味がないの」
 そうやって話しているうちに、家についた。ボロボロの平屋。玄関から中に入る。家の奥から、豚が屠殺場であげる断末魔の叫びみたいなイビキが聞こえてきた。
「あれがお父さん」
 指差したもの。それは怠惰のあまり悪魔に取り憑かれ、魔獣と化したお父さんだった。お父さんの肉体は魔獣らしく醜く禍々しい。
 お父さんは酔っ払ってぐっすり眠りについていた。
「これじゃナイフや包丁では殺せないわけだ」
「だから、あなたの力を貸して」
「でも先に言っておくぜ。俺は裏切りソードだって」
 そんな事は関係ない。
 お父さんが魔獣になった事で、お母さんは蒸発し、私は学校にも通えず、奴隷扱いされ苦しんでいる。
 こいつさえ死んでしまえば。強い殺気をもって、裏切りソードでお父さんに斬りかかる。思い切り裏切りソードを振り下ろした。
 ついにお父さんを殺せる。そう思った矢先、裏切りソードがお父さんの厚い筋肉に弾かれ、手から抜けて地面に落ちた。
「だから言っただろう。俺は裏切りソード。こうやって期待を裏切るんだ」
 剣撃を受けたせいで、お父さんが目を覚ます。裏切りソードを見ると、お父さんの目の色が一気に変わった。
「俺を殺そうとしたのか」
 お父さんが私の髪を掴む。それから何度も頬を叩かれた。私を放り投げ、お父さんが遠吠えをする。
「俺を殺そうとしたのかぁ!」
 お父さんの鋭い爪先が迫ってくる。あ、死んだ。そう確信した。
 その時、偶然にもお父さんが床に落ちていた裏切りソードを踏みつける。お父さんは滑ってバランスを崩し、倒れて頭を打って、失神した。
「俺は裏切りソード。期待を裏切るが、予想も裏切るんだぜ」
 つまり裏切りソードのおかげで助かったというわけか。
 お父さんはどうやら完全に気絶したらしい。私は裏切りソードを持ち走って外に逃げた。

 夕暮れ時の公園。そこで私と裏切りソードはたそがれていた。
「なあ、お前本当に父親を殺したかったのか?」
 裏切りソードの問いかけ。それに私は無言を貫く。
「本当は父親を殺すんじゃなくて、救いたいんだろう。お前、自分の気持ちを裏切ってウソをついているんじゃないのか?」
「それじゃあどうしろって言うのよ!」
 気がつくと私は叫び声を上げていた。でも裏切りソードは冷静だ。
「自分をもう裏切るなよ。自分に対して正直に生きろ」
「でも、お父さんを助けるには悪魔祓いのためにお金が必要で。私にそんなお金なんて」
「あっ、今自分にはお金がないって確信したな。それじゃあ、あそこの骨董品店に行ってみろ」
 よく意味はわからないが、裏切りソードに従い、骨董品店に入る。すると裏切りソードは百万円で売れた。五百円で買ったはずなのに、驚きだ。
「ほら、お前の確信を裏切ってやった。その金で父親を救ってやれ」
 最後まで裏切りソードは私を裏切り続けた。

 今、自分の手の中には百万円が握られている。これなら悪魔に取り憑かれたお父さんを救う事ができるかもしれない。
 暴力を振るってくるし、怖いけれど、やっぱりお父さんはお父さんだ。殺すなんて短絡的な方法で逃げず、本気でお父さんと向き合おう。もう自分の本心を裏切らない。そう決心をした。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン