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夏川さん

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幽霊面接

16/08/05 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:2件 夏川 閲覧数:1529

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 草木も眠る丑三つ時。
 とある崩れかけの洋館に彷徨える魂の悲痛な声が木霊する――




「お願いします! 俺スゲー頑張りますから! シフトもいっぱい入ります!」
「だからうちじゃ雇えないって言ってるでしょ。何度来られてもダメなものはダメなんだよ」
「そこをなんとか! 俺、死んだらここの幽霊になるって決めてたんスよ!」

 足の無い半透明の二人の男が洋館の応接間でなにやら言い争いをしている。
 一人は髭の生えた紳士、もう一人は大学生風の茶髪の男である。紳士は茶髪の男を眺めながらため息交じりに首を振った。

「申し訳ないけど募集してるのは髪の長い女の幽霊なんだ。うちは伝統ある心霊スポットだからね、イメージを壊すような事できないんだよ」
「なんでっスか! そういうの男性差別って言うんスよ! 考え古すぎッス!!」
「この洋館できたの100年くらい前だよ。古くて当然だよ」
「ううううう、じゃあ分かりました! 主役は他の娘に譲りますけど、俺には相手役をさせてください!」
「相手役って?」
「カレシっすよ、カレシ! 若い女の子には普通カレシの一人や二人いるっしょ?」

 茶髪の男の言葉に紳士の蒼い顔がにわかに引き攣る。

「ええ……君みたいな彼氏がいたら変に生々しくなっちゃうじゃないか。だいたい、うちでは観客の前に姿を現す幽霊は一人ってきまってるんだよ。主役を際立たせるために、ほかの幽霊にはポルターガイストとかの裏方仕事しかさせていないんだ」
「なんすかそれ! こんな広い家に幽霊が一人だけなんてもったいないっすよ! これを機にホーンテッドマンションみたいにやりましょうよ!」
「あのねぇ……見ての通り、うちは正統派心霊スポットだよ。ホーンテッドマンションやりたいならうちじゃなくて舞浜いきなよ」
「いやーあそこ幽霊多すぎてギッチギチなんスよ。999人どころの騒ぎじゃないッス。誰が死んでて誰が生きてんのかもう良く分かんないっス」
「みんな考えることは同じなんだねぇ」
「もう彼氏じゃなくても良いッスから雇ってくださいよー。執事役でもなんでもいいッスからぁ」
「うーん。そうは言われても茶髪の幽霊に出られると時代が合わなくなっちゃうんだよね」
「分かりました、じゃあ裏方で良いっすから! 俺、頑張って花瓶倒します!」
「本当に君ちゃんとやれるの?」

 紳士は怪訝な表情を浮かべて茶髪の男の軽薄そうな顔を見つめる。
 茶髪の男はというと、紳士の不安を吹き飛ばすような、幽霊とは思えないエネルギーにあふれた力強い声を上げた。

「絶対頑張りますから! マジ頑張ります! っていうか雇ってくれるまでここ動きません!」
「うーん、困ったなぁ。断ったら本当にずっと居着かれそうだし。分かった、じゃあ今日から裏方でやってみてよ」

 困ったように笑う紳士の言葉に茶髪の男は両手でガッツポーズをしながら埃の被ったシャンデリアまで飛び上がり、奇声にも似た歓喜の声を上げる。

「ッッシャァ! マジ嬉しいッス! マジ天にも昇る気分ッス!」
「ははは、幽霊だけにね」





 日が昇る少し前、いつもと同じように紳士が館内の点検を行うが例の茶髪の幽霊がどこにも見当たらない。
 不思議に思い、同じ部屋を担当していた幽霊に茶髪の男の事を尋ねた。

「あの新人どうなった?」
「ああ、なんか夢が叶ったとかいって成仏しちゃいましたよ」


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このストーリーに関するコメント

16/08/07 クナリ

幽霊ジョークをまくしたてられたあとに、とても上手いラストですね。
面白かったです!

16/08/11 夏川

コメントありがとうございます!

面白かったといっていただけて嬉しいです!天にも昇る気分です!

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