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夜門シヨさん

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ハッピーバースデー、「さようなら」

16/08/03 コンテスト(テーマ):第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】 コメント:2件 夜門シヨ 閲覧数:1295

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 ある日曜日の昼下がり。
 とある町の隅にある寂れた公園に、一人の上品そうな服を着た物静かな少年がブランコに揺られながら座っていた。時々チラチラ、そわそわと周りを見渡している。
 そんな公園に、ある一つの足音が近づいてくる。その足音が大きくなるにつれて少年は顔をほころばせていく。

「桃李!」
「拓海君!」

 現れたのは鼻に絆創膏を付けたいかにも活発そうなわんぱく少年、拓海であった。物静かな少年、桃李とは真逆な性格であるのは一目見てすぐに分かる。なら、なぜこの二人は仲が良いのだろうか。

「今週のデカレンジャー見たか?」
「うん、見た見た! すっごい神回だったよね!」
「そうなんだよ〜! いやぁ、まさかピンクの探してる親父さんが悪の組織の親玉だったなんて」
「しかも、ピンクの心が揺らいで敵側に移っちゃうし」
「「これからどうなるんだろ〜!」」

 二人には、共通の趣味があった。それがデカレンジャーだ。
 デカレンジャーは刑事を模したレンジャースーツを身に着けた男女六人組が、悪の組織と戦うという今子供たちに大人気のテレビ番組である。
 毎週日曜日だけ、この公園で二人は今週のデカレンジャーについての感想を言い合ったり、二人だけでデカレンジャーごっこをしたりと、空が暗くなるまでずっと遊んでいる。
 
 しかし、今日だけは違っていた。

「あっ、俺もう帰らないと」
「えっ、もう?」

 拓海はしまったといった表情で言うと、桃李は首を傾げながら空を見上げた。空はまだ青い空を映し出している。いつものさよならをする紺色の空ではなかった。

「まだ空は青いよ?」
「今日は早く帰らなきゃいけないんだよ」
「何か、用事でもあるの?」

 桃李が聞くと、拓海はニヤニヤと笑いだす。

「なんでニヤニヤしてっ」
「今日は、俺の誕生日なんだよ!」
「誕生、日?」

 拓海は変な人を見るかのような目をする桃李に、顔スレスレまで近づいて自身の誕生日について笑顔で発表した。しかし、桃李はその言葉に目を丸くする。

「おうよ! 言ってなかったけ?」
「き、聞いてない……何才に、なったの?」
「十才だ!」
「そっか。十才、か」
「そういや、桃李は誕生日いつなんだ?」
「僕は……来週だよ」
「来週!? じゃあ今日俺ん家に来いよ! お前は早いけど一緒にケーキ食おうぜ!」
「ケーキ……いや、やめとく」

 ケーキという単語に桃李は目をキラキラと輝かせるも、すぐに悲しげな顔に戻り断った。

「え〜、なんでだよ。お前、俺の家に来たくないのかよ」
「そうじゃないよ! イキナリ行ったらお邪魔になるし……それにお、おかあさんにも言ってないから」
「あぁ、お前のかあちゃん厳しいんだってな。日曜しか遊ばせてくれないだなんてなんて鬼だ」

 不機嫌になってしまった拓海をなだめるかのように桃李がそう言うと、拓海は納得したのか、今度は桃李を哀れむかのように頭をポンポンと叩く。

「それより、拓海君、時間、大丈夫なの?」
「えっ、あぁ!!」

 時刻はすでに夕暮れ時、空は青から橙色へと模様替えをしている頃合いであった。

「やっべぇ、母ちゃんに怒られる!」

 拓海は母親の怒った姿を想像したのか、冷や汗を流しながら公園の入り口まで全力疾走で駆け抜けていく。しかし、ちょうど入り口にさしかかると一度スピードを緩めて桃李のいる方向へと振り返った。

「じゃあな桃李! 来週、ケーキ持ってくるからな! また来週な!」
「うん、また来週」

 お互い笑顔で手を振り合った。
 拓海が前を向いて走り出すため手を振るのをやめても、桃李は手を振り続けた。

「ハッピーバースデー、拓海君。【さようなら】」

・‥…━…‥・‥…━…‥・

「桃李、来なかったかな」
『隣に、居たんだけどな』

 次の週の日曜日。空が紺色に着替えようとする時間、いつもの公園の、いつものブランコに乗っている拓海。
 しかし、そこには桃李の姿は見当たらなかった。
 拓海は膝に置いていた四角い白い箱の中身を覗き込んだ。その中には大粒の真っ赤な苺がのったショートケーキが入っていた。その苺の傍にはチョコプレートが置かれており、ホワイトのチョコペンで《とうりくん》と書かれている。

「ちぇ、折角母ちゃんに頼んでもらったってのにな」
『すごい美味しそう。ありがとね、僕なんかのために』
「……もう、帰らないとな」
『……』

 拓海はブランコに箱を置いて公園の入り口に向かっていき、振り向くと悲しげに呟いた。

「来週は、いるよな」

 そう言い残して、拓海は走って帰ってしまった。
 残された桃李。幽霊の桃李。拓海には見えなくなった桃李。
 桃李は拓海が残した箱に触れようとするもそれは空を切った。

『……やっぱり、君も見えない人間になったんだね』


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このストーリーに関するコメント

16/08/07 あずみの白馬

拝読させていただきました。
10歳になると見えなくなる……、この別れが切ないですね。
それがだんだんと伝わっていく感じで……、良い作品でした!

16/08/12 夜門シヨ

>あずみの白馬さん
読んで下さり、コメントも下さりありがとうございます!
もう、切なすぎたので続編も考えてしまって…(だがしかしハッピーエンドであるとは言わない)

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