mikkiさん

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親友

12/03/28 コンテスト(テーマ):第二回 時空モノガタリ文学賞【 居酒屋 】 コメント:1件 mikki 閲覧数:1975

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「お待たせ!ごめん、先に食べていいのに」
「選んでた。すみません生二つ。枝豆と焼き鳥三種盛り二皿。あと、豆腐サラダ」
「さすがナオ」
「高校からの付き合いだし」
「十年以上かぁ」
「で?」
「え?」
「はい!綾から誘いが来る理由その一、彼氏ができた。その二、彼氏と別れた。その三、彼氏と別れたい」
「……」
「あれ?正解なし?」
「…三」
「ね。あ、ドーモ。ほら、まず乾杯しよう」
「じゃぁ、再会を祝して」
「半年ぶり」
 互いの泡が吸い寄せられるようにしてジョッキが重なる。喉を鳴らすのも同時だ。
「あぁぁ、サイコー」
「綾とビール飲んでるなんて不思議」
「時が経つのは早い」
「ホント。彼氏できたって聞いたのついこの間」
「でもでもでもね、もう別れるのは決定なの。だからこれは戦場に向かう前の景気づけ」
「ストップ!順を追って説明して」
「別れるの。もう絶対別れるの」
「うん」
「……女がいるの。私のほかにも」
「…うん」
「考えられない…そんな人」
「……馬鹿だなぁ」
「…?」
「綾を選ばないなんてその男、ホント馬鹿だ」
「……うん」
「でも、なんで気付くの?物的証拠を発見しちゃった?」
「女の勘」
「それを出されると、勝てない」
「急に求められたり、あそこが腫れてたり」
「そういうところか」
「他に見つからないから、あっちとは体だけの関係なのかも。でも、それだって許せない」
「そうだね」
「そんな人とは付き合い続けられません、以上」
 黄色い液体がぐんぐん吸い込まれていき、ジョッキの底から綾の鼻がのぞける。ナオは微笑む。綾は変わらない。
「ナオは?彼氏は?」
「…できたっぽい」
「何それ?デートはした?」
「デートというのか、二人で遊んだというのか」
「手は?」
「つないでない」
「なんだ」
「でもセックスはした」
「…は?」
「ものすごく酔ってて」
「ついついうっかり一回だけ?」
「三回」
「付き合ってないの?」
「わかんない」
「毎回酔って?」
「そう」
「やだ、そんなの。ちゃんと付き合いなよ」
「…うーん…」
「?」
「…こんな状況でも、ちょっと幸せ?真面目に言ったら終わりそう」
「ばっかじゃないの?中学生か!」
「…背中に、キスマークついてた」
「……え?」
「彼が見えない場所に。…他にいるんだよ」
「女か。そういう陰湿なこと、女じゃないとやらないし。あたしやったことあるし」
「今の彼?」
「誤解しないで。私のやったのは牽制じゃなくて忠告!こいつはこういう男ですよ、あなたもやめた方がいいですよって」
「相手には牽制としてしか伝わらないよ」
「嫌いよ、二股かける男なんて」
「彼が反省してもダメ?」
「…私のことだけ愛してるって。もうしないって言われたら、ちょっとだけ考える…かも」
「なんだ、惚れてんじゃん」
 笑ってナオがビールをあおる。綾も微笑む。それからぶるりと体を震わせた。
「入口近いから…大丈夫?」
「平気!飲んだら温まる」
 白い手の甲に鳥肌が立っている。苦笑して、ナオは熱燗を頼もうと手を挙げた。
 その時――
「綾!何やってんだよ!」
 入口から男の大声。店内が一瞬静寂に包まれる。ナオもそちらを見た。斜め後ろの方向だ。体を捻って見上げる。
「ち、違う…ナオは、その、…」
 綾は立ち上がり、しどろもどろに説明を始める。が、何かおかしい。恋人、浩介は青い顔をしたまま立ち尽くしている。視線は明らかに自分より手前に落ちている。手前?
「綾の彼氏って…浩介?」
 低く、低く親友の声が聞こえる。後頭部しか見えない。声の低さに彼が男なのだと認識する。そうだ。ナオは、男。たとえ同性愛者でも。
「…ナオ」
「首の付け根、背中側の、キスマーク」
「…あたしが付けたの」
「誤解だ、綾!」
 浩介が綾の足元へ飛んでくる。その姿をナオが視線で追う。
「俺は、ちょっと酔っ払って。悪ふざけで」
「…………」
「俺にそんな趣味はないから!」
 そんな趣味?
 綾が露骨に顔をしかめるのを、ナオは見ていた。
「俺が愛してるのは、綾だけだから!これからも!一生!もうしない!」

 がんっ

「すみません、お会計お願いします。…行こう、ナオ」
 きっちり拳で浩介を殴りつけると綾は足早に立ち上がる。ナオもいそいそとそれを追う。入れ違いに浩介の友達が彼を抱き起こしていた。
 レジに札を出しながら、綾は鼻をふくらませてため息と一緒に吐きだした。
「ナオを選ばないなんて、馬鹿な男」
 ナオは笑いながら、そっと涙を隠した。


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このストーリーに関するコメント

12/04/08 かめかめ

綾かっこいいー。惚れますね。

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