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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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ダンス惑星

16/07/27 コンテスト(テーマ):第113回 時空モノガタリ文学賞 【 ダンス 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:568

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ピンク色をみると、ぞっとする。
そのピンク色の敵のシップとの、ながいあいだの銃撃戦で、彼の機の側面に、横数メートルにわたる裂け傷ができた。幸い内燃機関は無事だったので、彼は猛スピードをあげて敵機に体当たりを食らわそうとしたが、間一髪、相手はするりと体をかわした。それからというもの、両者のあいだで、熾烈な戦いがくりひろげられた。惑星対惑星を忘れてほとんど個人的な憎しみで交戦しているといってもよかった。
こいつだけは許さん。
彼はコントロールパネルのまえで、憎悪をこめてうなった。
敵機はほかにもたくさんいたが、ピンク色をしているのはこいつだけで、彼はこれから生涯、この色をみるたびに本能的に殺意をもえあがらせることだろう。
彼は結局、ついにピンクをやっつけることができないまま、仲間の機とともに安全地域にもどってきた。仲間の機も、闘う前にくらべるとかなり数を減らしていた。これまで数年にわたる惑星間の戦いで、姿を消した同僚たちも少なくなかった。
安全地帯に浮かぶドームのなかで、彼は仲間たちとともに健闘を讃えあった。
「敵も、てごわかったな」
「まったくだ」
敵の実力は認めざるをえなかった。
愛機に残った、生々しい傷跡に、彼はいまさらながら憎悪をたぎらせた。
「体当たりをくらわしても、相手はひるみもしなかった」
「よほど勇敢か、それとも命知らずな相手だな」
「しかし、こんどでくわしたときは、必ず撃ち落としてやる」
みんなは、五臓六腑を焼きつくすような、強い酒をあおった。
「これからどうするんだ」
「俺か、ちょっとやることがあるんだ」
彼はみんなからはなれて、再び愛機にとびのった。そして一路、ダンス惑星にむかった。
ダンス惑星がちかづくにつれて、それまで彼の中にまだ色濃く残っていたとげとげした緊張感が、しだいにやわらいでくるのがはっきりわかった。
機を発着場につけると彼は、さっそくホールにはいっていった。
そこにはすでに、何百という数のそれこそ種々雑多な惑星の人間たちが集まっていた。からだの大小、また肌の色、原語のちがいこそあれ、ここではそんなものはひとつの障害にもならなかった。
みんなしらない者同士で、名前も、どこの星からきたのかもしらなかった。彼もこれまで、いろんな女性を相手にして踊った。みんな一度きりのパートナーで、誰一人名前も素性もいいかわしたことはなかった。
彼はフロアの周囲にならべられた椅子を埋める大勢の男女をみくらべた。
異性からむけられる視線をまちうける男と女。それに応えてたちあがり、フロアで踊りだすカップルたち。踊りながら身をよせあい、肌をふれあい、ときには唇をからませるものたちもいた。ここではすべてがゆるされていた。
彼がここにやってきた理由も、殺伐とした気分からいっときもはやくぬけだすために、女との灼熱のダンスに耽るためだった。
彼はさっきから、誰かの熱い視線を感じていた。その方向に顔をあげると、あんのじょう、赤毛の女と目があった。その女性の魅力に、たちまち彼はひきつけられた。なんだか、昔からの知り合いのような気がした。しかし無論、彼女とは初顔あわせだ。
二人はたがいに、目で挨拶を交わした。
女は、彼がちかづいてゆくのをまって、しずかに椅子からたちあがった。
二人は腕をとりあうと、かたく手をにぎりあって、フロアにでていった。
それからながいあいだにわたって、二人はこころゆくまで踊った。
両者の呼吸はぴったりあって、まるで相手の体と自分のからだがひとつの心で動いているかのようだった。彼のなかから、すべての障壁はとりのぞかれ、無垢なまでの愛が彼女にながれこむと同時に、彼女もまた、自分のすべてをこちらにさらけだして、彼の愛をうけいれていた。
ダンスが終わった時も、二人はいつまでも見交わした目を離すことはなかった。
「あなたのような相手は、はじめてだわ」
「俺もさ」
「こんどもまた、踊ってくださる」
「もちろん」
二人はフロアからでると、シップの発着場にむかった。
彼は彼女に、自販機で買ったルートビアをわたした。気圧の関係で、栓をぬくと天井間際までふきだす泡を、うまく口でうけて飲み干すのがこのドリンクの飲み方で、しらずにやってあわてふためく彼女に、彼はおかしそうに笑いながら手本をみせてやった。
彼女のシップの色は緑色だった。彼は無意識に、ピンク色に恐れをいだいていたが、それはまさに杞憂にすぎなかった。
そのグリーンの機にのりこみ、窓から手をふってみせる彼女を見送ってから彼は、自分のシップの発着場にむかった。
彼はそのとき気がつかなかったのだが、べつのルートからとびたったさっきの彼女のシップが、機首を反対方向にむけて離れていく際、緑からあざやかなピンクに機体の色を変化させたのだった。


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