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しーたさん

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恋の魔法はパピプペポ

16/07/19 コンテスト(テーマ):第114回 時空モノガタリ文学賞 【 パピプペポ 】 コメント:0件 しーた 閲覧数:503

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 仕事から帰ってきた優子は、部屋でぼんやりテレビを眺めながらビールを傾ける。テレビの中では、自分より少し年下の男女の恋愛に焦点を当てたドラマが流れていた。
 恋愛。
 その単語に、懐かしい響きを感じた。
 ふと昔の記憶が蘇ってきて、思い出の中に溶け込むように、優子は静かに目を閉じた。



 それは、中学生の頃の記憶。
 胸のサイズが周りより小さいことが気になりだした頃、私は一人の男の人に恋をした。
 その人は先輩で、サッカー部のエースで、格好良くて、人気者だった。
 話したことなんてほとんどないのに王子様みたいだと思っていたし、実際同じクラスの男子より遥かに大人びて見えた。
 当時の私には、彼しか見えていなかった。
 それが私の初恋だった。
 
 そうして先輩に憧れを抱きつつ、しかし特に何か行動を起こす訳でもなく日常は流れ、先輩の卒業式の日がやってきた。
 卒業式の日に告白しよう、と、ずっと前から考えていた。
 校門の側に身を潜めながら、昨日書いたラブレターがあることを確認する。
 先輩が来たら、ラブレターを渡す。
 それだけだ、大丈夫と自分に言い聞かせる。
 心臓の音が耳元でうるさい。
 とりあえず一旦落ち着こう、そうしようと思って、大きく深呼吸して、
 以前、一回り年上の親戚のお姉さんに聞いた話を思い出した。
『想いを伝える恋の魔法を教えてあげる。いつか優子にも好きな人が出来るわ。その人に想いを届けたい時に唱えるの』
 その話を聞いた時にはまだ幼くて、意味もよくわからなくて、ただお姉さんは大人だなと思っていた。
 でも今ならわかる。
 きっと、今なんだ。
 そう思って、
「ぱぴぷぺぽ」
 小さく唱えたところで先輩の姿が見えて、ラブレターを手に勢いよく先輩の前に飛び出した。

 初恋の味は、甘くて、苦かった。



 優子は目を開けて、ビールを片手に当時の自分を思い返す。
 当時は何事に対しても真剣で、真っ直ぐで、向こう見ずだった。
 先輩に告白したところでOKされる筈もないことくらい、今なら簡単に想像もつくのに。
 若かった、というやつだ。
「パピプペポ」
 小さく呟いて、ふふ、と笑う。
 懐かしい感情が、胸の内に湧き上がってくるのがわかる。
 何となく、ある男の人の顔が頭に浮かんだ。
 その人は同じ会社の同僚で、有り体に言えば気になっていた。
 そのことを今日友達に相談したら、同僚とお付き合いするなんて辞めておいた方が今後の為だ、とアドバイスされた。
 確かに冷静に考えたらその通りだ。
 色々と面倒なこともあるだろう。
 でも。
 全力で青い春の中を駆け抜けていたあの頃の自分に、背中を押されているような気がした。
 無邪気な笑顔を浮かべて、思うようにすれば良いと言ってくれているような気がした。
「ぱぴぷぺぽ」
 もう一度、唱える。
 その声が当時の舌足らずな自分の声と重なって、
 高鳴る鼓動を胸の奥に感じながら、優子は携帯を手に取った。



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