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中卒

16/07/17 コンテスト(テーマ):第112回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 OSM 閲覧数:412

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 俺は公園の女子トイレで女を手込めにしていた。
 女は一糸纏わぬ姿で床に仰向けに横たわっている。無表情で、死んだ魚のような目をしている。襲った当初はあんなにも激しく抗ったのに、今や完全なる無抵抗。
 なんだかとても寂しかったので、女の鼻血まみれの顔面に唾を吐きかけた。
「おい大卒、俺からのプレゼントだ。舌で舐め取って食え。美味いぞ」
 返事はない。無抵抗、無表情、死んだ魚の目。
 益々寂しくなった。さっさと終わらせよう。腰の動きを速めた。

 俺は中学校を卒業してからというもの、数え切れないほど多くの不利益を被ってきた。理由は全て「中卒だから」の一言で完璧に説明できた。
 俺は寂しかった。自分が中卒なのも寂しかったし、中卒だからという理由だけで数え切れないほど多くの不利益を被らなければならない社会に生きていることも寂しかった。
 中卒から脱したい。
 その思いは、齢を重ねるにつれて強まっていった。
 中卒から脱するには、とにもかくにも学校に入らなければならない。学校に入るには金がいる。だが悲しいかな、俺は中卒だ。仕事にありつくのも一苦労だし、ありついたとしてもすぐにクビになる。いつまで経っても金は貯まらない。
 俺は悟った。中卒から脱するのは永遠に不可能だと。
 なにもかもアホらしくなって、働くのをやめた。なけなしの貯金は見る見る減っていき、女を買う金に窮するようになった。タダでやらせてくれる女なんて、俺の周りには一人もいない。なんたって、俺は中卒なのだから。
 女を手込めにする。
 溜まる一方の性欲を解消するには、最早それしか方法がなかった。
 俺は近場の公園へ行き、公衆トイレ近くの茂みに身を潜めた。日時は平日の昼前。正午を回ると、昼飯を食うために、スーツ姿の男女が多数公園を訪れる。その中から手込めにする女を選ぼうというわけだ。
 十二時を十分ばかり過ぎた頃、一人の女がこちらに向かって歩いてきた。二十代半ばだろうか。パンツスーツ姿で、整った目鼻立ちをしていた。大卒だな、と俺は断定した。
 女は俺が隠れている場所の前を通過し、女子トイレに入った。直ちに後を追う。個室に入る直前、肩を掴んで振り向かせ、いきなり胸を鷲掴みした。悲鳴を上げたので、鼻を殴った。鈍い音が響き、鼻血が噴き出した。女は絶叫し、両腕を滅茶苦茶に振り回し始めた。力任せに床に押し倒す。片手で首を絞めながら、もう一方の手で何回か顔面を殴打すると、女は抵抗するのをやめた。股間から小便が流れ出す。服を剥ぎ取り、行為を開始した。
 手込めにしている間、俺はひっきりなしに女に罵言を浴びせた。
「おい大卒、俺みたいな中卒負け組に手込めにされて、悔しいか? 悔しくないわけないよな。ざまあみろ。中卒ごときに手込めにされるとは、大卒のくせにアホだな。中卒ならアホで当然だけど、大卒なのにアホって、やばいだろ。生きる価値ないよ。ていうか、お前、なんのために生まれてきたの? アホの中卒に手込めにされるため? 哀れだな。マジで意味ないわ、お前の人生。たかが中卒に手込めにされるようなアホな大卒に空気吸う資格ないから、お前、これからは自分がこいた屁を吸って生きろ。そんでもって、毎日三食、自分が捻り出した糞を食え。飲み物は勿論、自分の小便だ。ほら、飲めよ、お前がさっき洩らした小便」
 それ以外にも色々と言った気もするが、覚えていない。なぜって、その時の俺は酷く興奮していたし、なんといっても、中卒だから。

 全てが終わった。俺は腰を上げ、穿くべきものを穿いた。女は床に仰向けになったまま微動だにしない。無表情、死んだ魚の目。
 床に転がっているハンドバッグが目に留まった。女の持ち物だ。なんとなく興味を惹かれ、ファスナーを開けてみる。包みが入っていた。取り出し、結び目をほどく。弁当箱だ。
 蓋を開けると、食い物の匂いが鼻孔に雪崩れ込んできた。半分を占めるご飯の白、おかずの赤、黄、緑、茶と、見た目はとてもカラフルだ。使われている食材も様々で、栄養バランスがよさそうに見える。手間暇かけて作った弁当、という印象を受けた。
 鼻を鳴らし、弁当箱を逆さまにする。詰められていたものが一斉に落下し、床に四散した。
「どうせ糞になる昼飯をこうも気合いを入れて作るなんて、ナンセンスの極みだな。大卒、お前、やっぱりアホだよ。哀れだよ」
 その発言に反応して、女がおもむろに上体を起こした。
「私が作ったんじゃない」
 俺を真っ直ぐに見据える、憎悪と怒りに燃えた瞳。鼻血に汚れた頬を伝う涙。
「そのお弁当を作ったのは、私のママよ」
 大卒のくせに、親に弁当を作らせるなよ。そう言い返そうとしたが、声は出てこなかった。恐るべき事実に気付いてしまった、そのショックのせいで。

 俺は、母親に弁当を作ってもらったことが一度もない。


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