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ネコライオンさん

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弁当男子

16/06/28 コンテスト(テーマ):第112回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:2件 ネコライオン 閲覧数:736

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僕は飯塚 素直(いいづか すなお)に恋をした。
文武両道容姿端麗、おまけに性格も良くクラスの中心的人物。
中学三年生、クラスが変わって初めて彼女と同じクラスになった。
僕はそれまで友達もいなく一人でいることが多かった。
そんな僕の手を取ってくれて皆の輪の中に入れてくれた。
 
あの頃から僕は恋をした。
毎日色んなアプローチで彼女に振り向いてもらおうとした。
ラブレターを渡したが却下され、
直に告白したが却下され、
鉄棒で逆上がりをして告白しようとしたが逆上がりに失敗し告白できず、
薔薇の花束をプレゼントしたら返却された。

そんな僕は最後の手段に出ようとした。
僕に取り柄は何もない。ただ一人っ子で両親が共働きだった。
そんな両親に頑張って働いてもらうために中学一年生からお弁当を作り始めた。
僕は飯塚素直にお弁当をプレゼントすることにした。
これで僕の思いを伝えるのは最後にしよう。
どこでも見た事のあるようなお弁当に、ありったけの思いを伝えよう。

「で、皆本(みなもと)君は今日、何をしてくれるの?」
僕は深呼吸をする。これがラストチャンスだ。これ以上彼女につきまとうのは辞めよう。
「僕は君にお弁当を作ってきました! もしよければ食べてみて下さい!」
その弁当は返却されなかった。
彼女は喜んでもらってくれた。
「ありがとう。昼に食べてみるね」
彼女はそういって、僕のお弁当をもらってくれた。
どこにでもある変哲もないお弁当に、溢れんばかりの思いを詰め込んだ。
僕の気持ちが詰まった、お弁当を。

お昼休みになって、彼女は屋上に僕を呼び出した。
初めてだった。彼女から僕を呼び出してくれたことは。
「とりあえず二人で弁当でも食べよう」
彼女はそう言ってくれた。

屋上で僕ら二人は弁当を置いて中身を確認した。
いつも通りのご飯にタコさんウインナー、卵焼き、枝豆にトマト。
ただただ普通のお弁当。
しかし、彼女の目は輝いていた。
「わお! お弁当! 私こんなに色鮮やかなの久しぶり!」
彼女の喜ぶ笑顔が見られて嬉しかった。
「ちょっと私のこと話して良い?」彼女は真剣そうな顔で僕に尋ねた。
質問に対する答えは無論、僕でよろしければであった。
その後、彼女は僕に話してくれた。今まで聞けなかった彼女のことを。
「小さい頃に母が亡くなって、それ以来父が一人で私のことを育ててくれたの。父は忙しいから、毎日ご飯は売店で買ったものばかり。だからこんなに美味しそうなお弁当は……とっても嬉しい」

彼女は何か強く思うことがあるのか、目頭が熱くなっていた。
震えながら箸を手に取り、卵焼きを口の中に含んだ。
ゆっくりと噛み締め、飲み込んだ。
ありったけの思いを詰めたお弁当の前に、彼女は涙を流していた。
「お母さんの味だ……」
そして溢れる涙を手で拭きながら、話を続ける。
「お母さん……お母さん……なんで忘れちゃったんだろう……なんで忘れていたんだろう……」
彼女は手を震わせながら、目の前のお弁当を涙でくしゃくしゃにしながら一つ一つ、丁寧に食べた。
「皆本君……私について、もう少し話して良い?」
僕は優しい声で、彼女に言った。
「もちろん。僕は何でも聞くよ」

 
彼女は僕に話してくれた。彼女がこんなにもたくましくなった理由。
父の理想な娘の姿——病弱な母とは違い、強く、たくましく生いる女性になって欲しいという思いに答えるため、必死に頑張って来た。
母は弱かった。そう彼女は思っていたが、実はそうではなかった。
彼女の母は身体が弱く、病弱だったが、毎日娘と父の幸せを強く思い、お弁当を作ってくれていた。
父が前日仕事で大変だったときは、今日はきっと良い日になるねとお弁当を持たせる。
彼女が幼稚園に行きたくないと喚いたら、母親は大好きなカレーライスをお弁当に詰め、頑張れる魔法をかけておいたよと優しく囁く。
僕のお弁当を食べて彼女は大好きだった母親のお弁当の味を思い出した。
そして同時に、母は弱く病弱な人間ではなく、強く優しく父と娘を思った、強い人間だったことを。
 
 
「皆本君は勉強もスポーツも普通で、特別何かできるわけじゃないかもしれないけど……」
 
涙を拭きながら、必死に僕を見て彼女は言った。
「本当に美味しいお弁当だった……だから……告白の返事……もう少し待ってもらってもいい?」


僕に取り柄は何もない。ただ一人っ子で両親が共働きだった。
そんな両親に頑張って働いてもらうために中学一年生からお弁当を作り始めた。
そんな僕だけど、普通のお弁当で、大好きな人が喜んでくれた。
思いの伝え方は人それぞれ、僕はお弁当で、僕の本当の思いを伝えられたと思う。
結果よりも、大切なのはやってみることなのさ。


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このストーリーに関するコメント

16/06/29 ノベ・ツムギ

ほっこり素敵なお話でした。
本当に、人の手で作った料理は、人の心を溶かしますよね。

16/07/16 クナリ

それぞれの事情、それぞれの生き方。
与えられた環境で自分なりに生きることには意味があるのだと教えてくれるようでした。

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