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ryonakayaさん

皆さん初めまして。ryonakayaこと中矢良一と申します。 学習塾の教師をしております。 今後ともよろしくお願いいたします。

性別 男性
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午後に

12/09/19 コンテスト(テーマ):【 時計 】 コメント:2件 ryonakaya 閲覧数:1781

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 あの時のまま。
 見上げるほど背が高くて、お勉強はそこそこ。優しくて、でも、何かちょっと怖いようで、足が速くて、いつも
男子に囲まれていたから、
『男好きなんじゃないの?』
 なんて私も女子たちのそんな陰口に便乗して笑ったりして。
 高校のいつだったか、放課後、私の腕時計を見て
「可愛い時計だね、うち時計屋」
 初めてでそれっきり彼と話したことなんてない。それから20年、コーヒースタンドでたまたま・・・
 あ! こちらに来る。なぁんだ、お手洗いか。気づいてないわよね。

 綺麗になるものだな、女って生き物は。知らん顔してやがる。
 同級生の俺だってわからないほどオジンになったか、オレって男も。トイレに立つふりして見たが、間違いない。
出たら声かけてみよう・・・
 あ!居ない! 帰りやがったか? トイレなんて行かなくてもよかったんだし。

「橋部くん、宮沢恵以子です。」

(ああ、彼女もアレだったわけね・・・)

「あ、どうも。その、まったく気づきませんでした。あの節は可愛いお時計を拝見させていただきまして」

(さすが時計屋さんね、そのこと憶えていたんだ。可笑しい)

(俺は時計屋だからね、他に気の利いたセリフってものは無かったもんかね?、ちょっとだけ誘ってみたりするか)

「よろしければ、お茶などしませんか?」
「ここで、ですか? 私はかまいませんが」

(寿司屋で寿司に誘うバカな俺)

「では、ラテ、ご馳走になります」
「了解しました」
(了解しました、だって、ふっ)
(ラテって、なんだよ? ふぅーっ)

(何か言おう・・・何にも言葉が無い。時計屋の宿命だ。歯車と会話している毎日)

「お仕事は、時計屋さんなさっていらっしゃいますの?」

(ズバリご名答! そうですか、わかりますか? やはりね)
「ですね、まだ目だけは達者で何よりですが、腰にきます、座りっぱなしで」
(バカたれが、まだ40前の男が言うか、そんなこと)

「確か、ドナルドダックの文字盤。そう、思い出した。可愛い時計をしていた中1のあの時のあなた」
(アナタ! 初めて女にアナタなんて言っちゃったよ)
「確か、お母さんは学校の先生で、あなたはピアノが上手でしたねぇ。懐かしいなぁ」
(・・・と、そんなことはともかくとして)
「時計屋なんてやってますとね、どうも縁遠くなってしまって」
(だから、何だ? って自分でも思うよ、このアホくさい一言)

「よく憶えていてくださいましたね。なんだか嬉しいわ、とても」
(ミッキーマウスの時計で、高校の時の話よ。可笑しいったらないわね。それに・・・)
「結婚はしませんでしたの、ご縁がなくて」
(母は学校の先生にしておきましょ。お花の先生なんだけれど)

「そうだったんですか。しかし我々はこれからですよ。あなたならきっと良い人が見つかります」
(我々じゃないだろうが、運動選手じゃあるまいし。ワレワレは〜! 正々堂々と・・・)
「戦いですね、人生は」
(決定的な一言ですね。オレの独身は戦いですよ、今までと同じようにこれからも)

「お会いできたこと、何かのご縁になりませんか?」
(私、大胆になってる。彼がとても近い人に思えちゃう。『戦いですね、人生は』好きな言葉だわ)

「あなたのドナルドダックは年代からして手巻きです。オーバーホールにもって来てください」

「はい! 今日にでもお伺いします」
(ミッキーマウスの時計ですけれど・・・) 


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このストーリーに関するコメント

12/09/19 泡沫恋歌

ryonakayaさん、拝読しました。

何だか、ほのぼのする午後の出来事ですね(笑)
そんな風に懐かしい人とふいに出会えたら嬉しいかも。

私はミッキーマウスよりドナルドダックの方が好きかなあ〜♪

12/09/19 ryonakaya

泡沫恋歌様、コメントありがとうございます。毎日ドトールコーヒーでお茶しますが、現実には、このようなロマンスはないものです(#^.^#)

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