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にぽっくめいきんぐさん

著作権とスマホアプリとカラオケに興味あります(雑食)。ゆるく楽しく生きてます。ありがとうございます。
性別 | 男性 |
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将来の夢 | 興味を持ったものに躊躇なくうちこめるような、自由な時間が欲しいです。知らないものを知れるのが楽しいですし。 |
座右の銘 | ざっくりだもの by まつお |
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このストーリーに関するコメント
16/06/19 クナリ
命題と文体が歌詞のようで、独特の読み味がありました。
ラストのセリフで終わるのも良かったです。
16/06/21 にぽっくめいきんぐ
クナリさん ありがとうございますm(_ _)m
最近、書く時の「テーマ」を意識するようになってきました。
自分の中のテーマにとって不要なものを削ったら、こうなりました。
歌詞っぽいのは、多分、カラオケが好きだからだと思います。意識せずそうなっちゃいます(苦笑)
最後のセリフは、結構何回も弄りました。必要な要素のみを残したつもりですが、まだまだ冗長なのかも? もっと洗練させていく必要があるのかも? と思っています。 今後の話にはなりますが。
16/06/26 冬垣ひなた
にぽっくめいきんぐさん、拝読しました。
日常の一コマから生じる引力と斥力、絶え間ない水の循環。私たちが地球とつながっているという事を素直に感じました。言葉の一つ一つが丁寧に選ばれていて詩的ですね。『私の上に降り注ぐ、この純水ではないものは、さて、どこから来たのだろうか?』とはっとさせられ、さりげなく日常に戻るラストが心に残りました。
16/06/27 にぽっくめいきんぐ
冬垣ひなた様 ありがとうございます。
この作品で伝えたかった事、やりたかったことを、ほぼ全部汲んで頂けて、うれしく思っています。
16/06/29 あずみの白馬
日常を切り取った中での独特な作風に惹かれました。
「この純水でないものは、さて、どこから来たのだろう?」
ここに作者さんの想いが凝縮されている感じで、面白いと感じました。
16/06/30 にぽっくめいきんぐ
あずみの白馬さん ありがとうございます!
まさに、ご指摘のセリフは、元にある核です。
ちなみに、ロンダリング対象は2つあって、
「雨」のロンダリングと、「私」のロンダリングがあります。
16/07/10 光石七
拝読しました。
文体が独特でリズムがあり、その中での現実と思索の描写が味わい深かったです。
最後の現実への戻り方もいいですね。
面白かったです!
16/07/13 にぽっくめいきんぐ
光石七さん ありがとうございます!
正直、これが自分の素の文なのかが分かっていません(苦笑)
いつもはもっと、ネタを混ぜようとする意識が働いているからです。
最近は長い物も書き始めたので、
今自分がどういう状態なのか、さっぱり分からなくなりました(苦笑)
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私達は、地球の引力に引かれている。
それを脱する人もいる。宇宙飛行士さんとか?
引力は、物と物との間に、必ず存在する……らしい。
私と、旦那と、息子の間にも。
かつて私が惹かれた、あの人との間にも?
私は今、小さな公園にいる。
3人暮らしの2LDKのアパートから、歩いて5分ぐらい。
でも今は8分位かかる。子供連れだからだ。
息子は生後4ヶ月で、首も少しすわってきた。
高校の友達が共同でくれたベビーカーに乗せて、旦那と一緒に、外へ連れ出した。
微妙にカラッとした空気と、やや強めの日差し。
梅雨の最中に、こんな日は貴重だ。
旦那は、育児にもそれなりに参加してくれている。
草がまばらに飛び出した公園の土の上で、息子を抱え、あまり見たことのないタイプの「高い高い」をやっている。
「エグザイル風ー!」
公園の隅の丸椅子に座った私の目の前に、太陽に照らされた、息子の丸顔と、旦那の丸顔とが、反時計回りに交互に現れる。輪郭は旦那似かな?
周りに人が居ないから放置しているけれど、誰かがこの公園に来る気配があったら、止めさせないと。恥ずかしいから家でお願いします。
汗っかきの赤ん坊と、赤ん坊じゃないのに汗っかきの旦那を、帰宅後にまとめてお風呂に叩き込まないといけない。
その間に、夕食を準備して、キッチンの掃除を軽くやって。その手順を考える。
昔の私は、料理なんてしなかった。
下手だったし。
1Kのアパートで、あの人が作る、リゾットやら、なんか洋風の、オシャレな食べ物達が美味しかったし。
私が美味しいと告げた時のあの人の笑顔も、ちょっとしたごちそうだったし。
汗っかきのエグザイル達を見ながら、そんな事も考える。
私は純粋ではない。
あの時、私は泣いていた。あの人も、後から少しだけ泣いていた。
「資格を取りたいんだ、将来の為に」
とある大きな公園の長ベンチで、あの人は、唐突にそう言い出した。
「だから、勉強しなきゃ。会う時間が、あまり取れなくなるかも、しれないんだけど」
私は大泣きした。
「今のままで良いじゃない!」と。
その後が、まずかった。
「なんで勝手に、そういうこと始めるの?」
その瞬間から、あの人は少しずつ、斥力を発するようになっていった。
異なる物同士を、離すように作用する力。
私の言葉も、斥力だったのかもしれない。今はそう思う。
理由なんて他にも考えられるけど、たぶん、お互いを惹く引力が、足りなくなったんだ。
斥力が、引力よりも強くなった。単純な事。
それが、あの人と、私との選択だった。
さっきまでエグザイルだった2人は、今度は機械式時計のテンプよろしく、右、左、右、左と交互に旋回している。
カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、という音が聞こえてきそうな動き。
ポツリ。
私の腕に、水滴。
ポツリ。
私の鼻先に。
青空もまだ残っているのに。
考え事をやめた私は、丸椅子から立ち上がった。
「雨だぜ?」
旦那は何故か疑問形を使い、息子を連れて水場に向かい、サンダルを脱ぎ、足を洗い始めた。
足についた、土が乾いて固まったやつを、水で洗い流すんだ。
ポツリ。
ポツリ。
「ンアー、ンフー」と、息子は、私達にはまだ認識できない言葉を発した。そして、ぐずり始めた。
ポツリ。
ポツ、ポツ、ポツ。
「ンンアー! ンンアー! ンンアー!」
晴れ間は消えた。
2LDKの引力に、ひかれる時が来た。
息子の涙が蒸発するのは、しばし後だろう。
エグザイル達の、さっきまでの汗は、一部はとっくに蒸発しただろう。
旦那の足についた土が混じった、公園の水は、水管を伝い、川に出て、いずれ海へと流れるかもしれない。
どこかのタイミングで、いずれも、やっぱり蒸発するだろう。
付着していた思い出やら何やらを、一旦リセットしつつ、水は蒸発する。
蒸発した水は、空を上って水蒸気になる。
チリやホコリを核として結集し、最終的には氷になる。
そう。純水の氷じゃない。
大きく育った氷は、地球の引力で、落ちてくる。
氷が解けて、雨になる。
純粋じゃない水滴は、降り注ぐ。
山に。
平野に。
川や海に。
ビルの上に。
小さな公園に。
私の上に降り注ぐ、この純水ではないものは、さて、どこから来たのだろうか?
「あの時の、あの人の涙が、何周ぐらいか流転した、結果のものである」という命題を、
完全に否定し切ることは、人類には出来ない。
「やばい。ズボンの裾、汚したー」と、旦那が言う。
私は、この人に、文句をたれる。
「お風呂ついでに洗濯ね。洗剤で。水だけじゃ、キレイにならないよ?」