猫野まちさん

東野圭吾と恩田陸が好きな女子学生です

性別 女性
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空想

16/06/18 コンテスト(テーマ):第111回 時空モノガタリ文学賞 【 蕎麦 】 コメント:0件 猫野まち 閲覧数:574

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 こんなことを考えていた。
 今俺が食べているこの蕎麦の一本が突然口を利けるようになり、そして泣き始めるのだ。お願い、お願いだから食べないで、と。仕方なしに箸を置いてふうーっと目を瞑りため息をつく。そして目を開ければそこは先ほどまで賑わっていた蕎麦屋でなく、壁が全面金箔で覆われた城が立ちはだかっている。どういうことだと辺りを見渡そうとすると横にはこれまで見たこともない絶世の美女が!そして彼女はこういうのだ。―先ほどはありがとうございました、潔いあなたの姿に心がときめきました、どうか私と結婚していただけませんか。―・・・「お、畑中じゃないか。偶然だな!」
 意識がスっと現実に戻された。いいところだったのに。と思ったが、すぐにあんな幼稚な空想をしていた自分を信じられない気持ちになり、そして自分を恥じた。蕎麦が泣くって、そんな空想三十路の男としてどうなんだ。
 「相変わらず思いつめた顔してるな。疲れてるんだよ、少しは休みでも取ったらどうなんだ」
 思いつめてる?俺がか。そういえば最近ずっと仕事をしていたように思う。だからあんな空想をしてたのか?
 「たまには家族サービスしてやれよ。奥さんも疲れてるんじゃないか?」
 そうだな、最近由美子になんでも任せすぎかもしれない。カズとも遊んでいない。だめだな、俺、父親失格だ。
 「俺は疲れてるとき空想するんだ。現実と離れた違うところに行けて、案外すっきりするんだよ。」
 今まさにそれをしてたところだよ。でも、本当にそうかもしれないな。少し前より気分が晴れたようだ。
 ・・・うん、たまにはこういうのもいいかもしれないな。子供みたいな幼い空想に思いを馳せてみよう。そんなことをしている自分が可笑しくて、なんだか笑えてくることもあるだろう。仕事で凝り固まったアタマをほぐすには最適だ。カズの空想も取り入れたりして。胸のあたりがなんだかむずむずして、思わず頬が緩んだ。
 「どうしたんだよ、俺なんかへんなこと言ったか?」
 「いや、別になんでもないよ」
 ぱくぱくと蕎麦が口を動かしたように感じた。


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