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福沢遊さん

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麺クエスト

16/06/11 コンテスト(テーマ):第111回 時空モノガタリ文学賞 【 蕎麦 】 コメント:0件 福沢遊 閲覧数:636

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顔が痛くて目が覚めた。

冷たい風が、肌を刺す。
僕は森の中にいた。


確か、僕はビールとスルメを片手に、一人寂しくテレビを見てた気がする。
仕事でミスをした僕は、恥ずかしくて辛くて、消えてしまいたい思いをした。
誰かに言い訳や自己嫌悪もできなく、とにかくヤケになっていた。

ここはどこだろう。
最後の記憶は、6本目のビールを開けようとしたところで途切れている。
夢だろうか。

夢にしては、とても頭が冴えていた。


重い腰をあげ、1歩前に足を踏み出した。


“てれれれってれー“


どこかで聞いた事がある音が鳴り響く。


“ピーターは箸を手に入れた“


ピーターって誰だよ。

手に違和感を感じ見てみると、木製の如何にも高そうな箸を握っていた。

あ、ピーターって僕か…

僕は歩き出した。


どのくらい歩いただろうか。
周りは緑に覆われた、大きな木ばかりが連なっている。

少し強めの風が吹いた。
それにつられ、懐かしい匂いが流れてきた。

突如現れた曲がり道。
屋台がたっていた。
暖簾には“らーめん“と書いてある。

「ごめんくださーい」

「へいっらっしゃい!」

白い鉢巻をした、威勢のい良いおっちゃんがにやりと笑った。

「へいっお待ち!」

何も頼んでないのに、目の前に味噌ラーメンが置かれた。
白い湯気が目に染みる。


“ジャジャーン“
“ピーターは敵に遭遇した“

敵って誰だよ。

あ、味噌ラーメンか…

スープから口をつける。
温かさが喉を通るのが分かった。
麺をすする。
「美味しい…」

“テッテレー“
“ピーターは敵に勝利した“

僕は勝ったみたいだ。

いつの間にかラーメンは消え、あのおっちゃんもいなくなっていた。


僕はまた歩き出した。

少し歩くと、食堂感溢れる建物が現れた。
“入口“を開けると、田舎のおばあちゃんらしき人が笑顔で迎え入れてくれた。

「はい、お待ちどーさん」


天ぷらうどんだ。

“ジャジャーン“
“ピーターは敵に遭遇した“


天ぷらなんて何年ぶりだろうか。
あの日、母の天ぷらを食べたのが最後だ。
うどんの汁に染みた天ぷらが、きらっと光った。
「…うまそう」

“テッテレー“
“ピーターは敵に勝利した“

「えっ…!?」

目の前から天ぷらうどんが消えた。
まだひと口も手をつけてない僕の天ぷらうどん。
この箸は何の為に手に入れたのだろう。

先ほどよりも少し重い足を引きずりながら、僕は歩き出した。

“てれれれってれー“
“ピーターは水と手ぬぐいを手に入れた“


気がつくと、首には白い手ぬぐいをかけ、腰には銀色の水筒がついていた。

“ジャジャーン“
“ふぁいなるすてーーじ!“

次がラストみたいだ。

角を曲がると、歴史感漂う、少し高そうなお店が現れた。
普段の僕だったら絶対入らなそうなお店だ。

「こんにちわー」

「…いらっしゃい」

いかにも硬そうなおじさんが、一瞬僕を睨んできた。
“ふぁいなるすてーじ“なんて、すぐ片付けてやる。

意気込んだのもつかの間、僕は驚愕した。

“ジャジャーン“
“ピーターは敵に遭遇した“

まさに敵だった。
僕の目の前には、ざる蕎麦が置かれていた。

たかがざる蕎麦、されどざる蕎麦。
パクチーと並ぶくらい、僕はざる蕎麦が苦手なのだ。

暑くもないのに汗が流れた。
まるでこの瞬間を分かっていたかのように、手ぬぐいが役立つ。
もしや、水もその為なのか…

天ぷらうどんを思い出した。
「…う、うまそう」
唾を飲む。

“ピーターは5ダメージをくらった“

つゆを飲んでみる。
「あ、美味しい…」

“ピーターは30ダメージをくらった“

卑怯な手は使えないらしい。

箸を強く握る。
思いのほか、箸はひんやりと冷たかった。

蕎麦を掴み、つゆに浸す。
口に運ぶ。
すする。

口の中いっぱいに、独特なあの香りが広がった。少しつゆの旨味も効いている。

もう一掴み、つゆに浸す。
口に運ぶ。
すする。



気がつくと、ざるだけが残っていた。
箸置きに箸を収める。

おじさんと目が合った。
笑っていた。
僕もきっと同じ顔をしているだろう。

「ごちそうさまでした」

“てれれれってれー“
“ステージクリア!!“


目を覚ますと、笑い声が聞こえてきた。
それがテレビの音だと気づくのに時間はかからなかった。

6本目のビールは、まだ開いていない。
テレビをとめ、鞄から財布を出しす。

蕎麦でも買いに行こう。

そして明日、謝ろう。


僕はまた歩き出した。






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