林一さん

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湿気

16/06/11 コンテスト(テーマ):第110回 時空モノガタリ文学賞 【 雨 】 コメント:0件 林一 閲覧数:612

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 会社が倒産し、私は突如として無職になってしまった。しかし、案外私は気楽に考えていた。
 私は会社に勤めてきた15年の間、特に金の掛かる趣味もなく、車もなく、安アパートで質素に一人暮らしをしていた。そのおかげで、多額の貯金があったのだ。特に贅沢をしなければ、10年以上は楽に暮らせる額である。
 そのため、すぐに仕事を探す気にもなれず、家に引きこもりながら自堕落な生活を送っていた。
 今は便利な世の中になったものだ。外に出なくても、インターネットを使えば大抵の物は手に入る。
 私は毎日家でテレビを見ながら、ネット通販で買ったインスタント食品やジャンクフードをつまみにして、これまたネット通販で買った安いお酒を飲むのが習慣になっていた。
 
 梅雨の季節がやってきた。夏の暑さに加えて、このじめじめとした湿気が不快でたまらない。エアコンのないこの部屋での生活は、苦行のようだった。
 そのせいか、最近体調が悪い。全身がだるく、食欲も沸かない。
 しばらく寝ていれば治るだろう。そう高を括っていたが、1週間ほど経っても、症状は悪化するばかりであった。
 このままではさすがにやばいと、病院に行くことにした。病院までは歩いて20分ほどだが、外はザーザー振り。とてもじゃないが、歩いて行く気にはなれない。もったいないけど、タクシー使うか。
 タクシーを呼ぼうと、携帯の電源を入れようとするが、反応がない。どうやら故障しているようだ。たぶん、この湿気が原因だろう。
 仕方なく私は、傘を刺して病院まで歩くことにした。
 外出したのは何ヶ月ぶりだろうか。日頃の運動不足に体調不良、それにこの悪天候も相まって、1歩1歩がズシリと重く感じられた。タクシーを見つけ次第すぐに捕まえるつもりだったが、運悪く1台も通ってはくれなかった。
 結局自力で病院にたどり着くと、幸い病院は空いており、すぐに診察を受けることができた。
「ちょっと失礼ますね」
 先生はそう言うと、トンカチで軽く私の膝を叩き始めた。
「これは……脚気ですね」


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