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シャン・リさん

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将来の夢
座右の銘 為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり

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天井の涙

16/06/10 コンテスト(テーマ):第110回 時空モノガタリ文学賞 【 雨 】 コメント:0件 シャン・リ 閲覧数:498

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雨漏りがしている。雨の日はいつもこうだ。

築数十年は経っている家の屋根は、最早完璧な仕事をする気がなく、
俺もまたその屋根を直すつもりも、業者を呼ぶつもりもない。
雫が落ちてくる箇所にバケツを置いておけば、それで万事解決だ。

雨漏りを受け止めているバケツの横にごろ寝をしつつ、天井を見る。
天井に一つだけあるシミは奇妙な形をしている。まるで人の顔のようだ。
雨漏りの雫はその顔の目元から落ちてくる。

雨の日はいつも、こいつの泣き顔を見るハメになるというわけだ。

ふと俺はこいつを泣きやませたくなった。
ただでさえ鬱々としたこんな雨の日に、他人の泣き顔まで
見せられるのは苦痛とさえ言える。

とりあえず、目元を拭いてやる。それで泣き止むはずもない。
すぐにまた涙を落としてくる。こいつの悲しみは相当のようだ。

次に俺は、ありふれた励ましの言葉を贈ってみる。
泣いているのは君らしくない、僕は君の味方だ。
笑顔の君のほうがずっと素敵だ。僕が力になるよ・・・。

それから俺は、雨の街に出掛け、花や酒、安物だがアクセサリーなど、
優男が落ち込む恋人にプレゼントをするように、品物を買い込んだ。

家に帰り、花やアクセサリーをセロテープで顔の近くに貼り、
柔らかい雰囲気の音楽をかけ、酒を2つのグラスに注ぐ。
さすがに液体を天井に貼ることは出来ないので、床に置いて乾杯した。

気のせいか、涙が弱まった気がする。俺はそれからも、子猫や子犬の
写真集を見せ、面白い本を読んで聞かせてやり、歌を歌ったり、
そいつの顔を撫でたり、あらゆる方法を試した。

涙が止まった。窓からは陽の光が入ってくる。
俺はここぞとばかり、またも陳腐な励ましの言葉を顔に贈った。

「止まない雨はない」

天井のシミが、心なしか微笑んだように見えた。


それから以後、雨漏りはしていない。


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