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かるりさん

のんびりきままなやつです。 2回読みたくなる短編が目標。がんばります。

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土竜のみる夢

16/06/07 コンテスト(テーマ):第110回 時空モノガタリ文学賞 【 雨 】 コメント:2件 かるり 閲覧数:699

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――きょうもきこえるよ。あめがふっているね。


――――そうね。





――だいじょうぶかな。おうちがこわれないかな。


――――大丈夫だよ。お家は壊れないよ。





 僕はまだ会ったことがないけれど、外の世界にはニンゲンがいるのだと聞く。
 ニンゲンとはどんな生き物なのだろうか。
 この薄暗い空間で生きる僕と違って、ニンゲンは光に当たって生きるらしい。





――ヒカリ、うらやましいな。

――――お外へ出てきてごらん。きっとあなたも気に入るはずよ。



――でもおそとはこわいよ。ごはんがなかったらどうしよう。

――――ご飯ならお母さんがわけてあげるから。




 外では雨と呼ばれるものが降っているらしい。
 ザアザア、と雨音が聞こえる。


 僕はいつもこの音を聞いて過ごしている。
 心落ち着く、優しい雨音。


 この地で生まれてからずっと聞こえている。
 僕をあやし続ける、雨音。





――あめがふっているよ。わかるよ。

――――そうね。雨が降っているわ。



――でも、いつもとちがうよ。ちょっといきぐるしいよ。


――――もう少しだけ我慢しましょうね。




 僕の体も、爪も、足も。
 この狭い世界で作られたもの。

 ずんぐりとした体。
 ふわふわと生えた毛。

 この世界で生きるためにお母さんから与えられたもの。
 この息苦しくて暗い、濡れた世界で。




 外へ、光の世界に出てしまったらどうなるのだろう。
 僕は干からびて死んでしまうかもしれない。

 僕は薄暗い世界の住人だから。





――おそと、こわいよ。


 雨音を聞きながら地中に潜み続けるモグラ。
 外に焦がれて、でも出るのが怖いんだ。


――苦しいよ。



 雨が降り続けて、息苦しい。
 暗い世界から酸素を奪われることはすごく怖い。


 揺れる。
 僕の家が揺れる。


 壊れてしまう。
 雨が降りすぎて、水が漏れて、僕の家が壊れてしまう。





――――外へ出ておいで。

――――光の世界へ出ておいで。





 ここで置いてけぼりになるのが怖くて、誘われるがままに暴れた。
 がむしゃらにもがいて、あがいて、トンネルを潜って外の世界へ逃げ出した。





 そこは、眩しくて焼き付いてしまいそうな光の世界。
 外へ出た僕を見て驚く、たくさんのニンゲンたち。


 雨音は、


 雨音はもう、聞こえなかった。











「ようこそ、ニンゲンの世界へ」








 その日、僕は光の住人となった。



 不安と恐怖と、優しく包み込んでくれた雨音が聞こえないのが寂しさ。
 どうしたらいいのかわからず、僕は大きな声をあげて泣いた。



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このストーリーに関するコメント

16/06/08 クナリ

モグラ、という言葉それ自体が特定の状態や立場にいる人を指しているようで、独特の求心力がありました。

17/01/17 かるり

>クナリ様
気付くのが遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございます。
モグラには意味を込めていたのでとてもうれしいコメントです。

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