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にぽっくめいきんぐさん

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南下する中二病患者

16/05/11 コンテスト(テーマ):第109回時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:4件 にぽっくめいきんぐ 閲覧数:1763

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 宮城在住、中二の僕が、初の単独南下を行う、1ヶ月程前の事。

 とあるTVアニメの劇場版試写会が、東京の九段下で行われるという情報が入った。
 当時は、ネットも携帯も、PHSやポケベルもなかった。通信手段は家電話だけ。
 友達から借りたマンガ雑誌に広告が載ってたんだ。
 現役の中二病全開のオタクだった僕は、これに食いついた。

 その作品を最初に知ったのは、今で言う「ラノベ」の文庫。即座にハマり、TVアニメ26話も消化した僕は、
(これで終わりか……)
 最終回後の脱力感にヤられていた。

(な! 後日談が劇場版になる?)
 広告を見つけた時のテンション急上昇は当然だろう。
 でも、その広告に追記されていたのは、「九段下のみで1回だけ上映」という悲報。チケットも、東京近郊の特定のお店でしか扱わないとの事。
(宮城でもやってくれよ……)
 その頃はレンタル「ビデオテープ」の時代で、劇場版のレンタル化は、半年は待たなければならなかった。
(待てるか! 今すぐにでも、続きが観たいんだ!)
 僕は行動を開始した。

 まずは、試写会チケットを扱うお店の電話番号を雑誌で調べ、片っ端から電話。
「どうしても劇場版が観たいのですが、中2で宮城在住なので買いに行けないです」と相談した。
 ラッキーな事に、お店の人が、チケットを郵送してくれる事になった。
 お代は、送料も含めて「小為替」という紙を使うのだ、と教えてくれた。
 僕は郵便局に走った。
 局員さんに相談。小為替と返信用封筒とを同封して、手紙を東京のお店に送った。
 
 次の週。今日は、足の確保だ。
 新幹線に乗るお金は無い。駅に走り、駅員さんに相談したら、「青春18切符」という物があると知った。5枚綴りで1万円強。1枚で鈍行1日乗り放題!
「14歳なんですが、使えますか?」と聞いたら、
「実年齢は関係ないんだよ」と駅員さんは笑っていた。
 でも、万札なんて持っていない僕は、「どうしたらいいですか?」と相談。
 駅員さんは、大学生協ならバラ売りしているかも、と教えてくれた。

 次の日。僕は片道230円で電車に乗り、近場の大学に潜り込んだ。
 制服から、いとこのお下がり私服へと着替え、大学生を装った。バレてただろうけど。
 親切な生協のお兄さんは、何も言わず、18切符を2枚、バラ売りしてくれた。代金5000円位だった。

 次の日。僕はまた、駅に走った。鞄にはノートが入っている。
 時刻表のダイヤを丸写しするんだ。
 試写会は土曜日の14時半スタート。早朝に宮城を出発し、九段下に1時間前には着きたい。良い席は早い者勝ちの可能性だってある。
 鈍行列車を乗り継ぐ一人旅なんて初だし、展開の予想がつかない。電車を1本逃しただけで到着が1時間遅れることもある。
 僕は、駅員さんから借りた分厚い時刻表から、想定される乗車パターンを何パターンか予想し、手持ちのノートに転記していった。
(黒磯乗換。7分後の宇都宮行き。逃したら、42分後の宇都宮行き……)
 九段下到着まで、最大1回の乗り遅れが許される程度のタイトさだった。
(2回ミスったらアウトか。シューティングゲームだって、自機は3機いるのに……)
 帰りの電車は、時間が読めないので調べなかった。出たとこ勝負だ!
 試写会後は、どう頑張っても、その日のうちに自宅に戻るのは不可能。当然、宿泊費もないから、帰りは野宿と決めた。
 これで、足も宿も、方針が決まった。

 最後は、中二が1人で1泊2日の旅に出る「口実」だ。
 うちの母親は真面目タイプの心配症だから、普通に攻めたら「そんな危険な事はだめ。ビデオ化を待ちなさい」と言われるのが、分かり切っている。
 なので、友達に頼んで、話を合わせてもらった。
「来週の土曜日、友達と3人で、キャンプ場に1泊2日で行きたいんだ」
 そう母親に告げた。当然、母親は色々と条件を聞いてくる。
「誰と行くの? テント泊なの? 安全なの?」等々。
 聞かれそうな事は先に予想しておいたから、うまくごまかせた。キャンプには何度も行っていたし、怪しまれなかった。

 試写会当日。始発で東京へ向け出発。8〜9時間の道のり。
 トイレのせいで乗換えに失敗したくないので、飲食は最低限まで抑えた。
 リュックには「銀河英雄伝説」の新書が10冊と、大量のカセットテープとウォークマン。パンパンだ。
 僕にとっての電車は、旅行というより、目的地に運んでくれるマンガ喫茶だ。
 車窓の景色そっちのけで、銀河の歴史を一ページ、また一ページ。宇宙を駆け回る、僕の中二病的妄想達。 

 気付けば僕は、九段下駅に到着していた。
 銀河の歴史は、まだ序盤戦だというのに。
 気付けば私は、文字制限に到達していた。
 まだ試写会は、始まってすらいないのに。


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このストーリーに関するコメント

16/05/12 クナリ

主人公の少年らしい切実さが伝わってきて面白かったのですが、それだけにラストが(仕掛けとして敢えてやっておられることとはいえ)物足りなく感じました。
ここまでしっかり描写された魅力ある主人公ですから、作者様の趣向で締めるよりも彼の顛末を見てみたかったです。

16/05/12 にぽっくめいきんぐ

クナリさん、お読みいただきありがとうございます。

ごめんなさい(><) まだ詰めが甘いです。
書きたい分量、倍はありまして。
いつもなら、2000文字に収めるんですがね。
(感情描写してなかったから、こだわり無く削れた)

主人公をしっかり描写しつつ、本来のオチをつけつつ、
2000文字に圧縮するまでの技術はまだ無いようです。

このお話については、投稿予定の後編に続きます(笑)
すなわち、「2000文字小説」というフォーマットを、今回は諦める事を意味します。コンテスト的には脱落ですね。サイトの趣旨に反しますから。

「やりたいことやって、オチもつけて、かつ2000文字に収める」については、次の課題として設定したいと思います。

ご指摘ありがとうございます。感想ありがたいです。

16/05/12 あずみの白馬

旅行好きの私も、最後まで読みたいと思いました。
帰りの道中も小説の中なのか、それとも……?

続編楽しみにしています。

16/05/14 にぽっくめいきんぐ

あずみの白馬さん、お読みいただきありがとうございました。

続編「北上する中二病患者と、徐々に南下おじさん」書きました(^^)

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