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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

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悲劇の色彩

16/05/09 コンテスト(テーマ):第107回 時空モノガタリ文学賞 【 色彩 】 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1603

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 アヤコは迷っている。明日のデートに来ていく服をどうするか今、物凄く迷っている。
 もうすぐ時計は深夜零時をまわる。明日のデートに備えて睡眠をとらなければならない。そんなことはわかっている。しかし、着ていく服が決まらないうちは眠れない。
 それもそのはず。明日は憧れの坂本先輩との初デートだ。明日アヤコが着ていく服で、今後の運命が左右される。重要なのは第一印象。着ていく服で、彼氏からみたアヤコの印象が決定付けられるだろう。
 アヤコの部屋のクローゼットにあるいくつかの服から、着ていこうと考えている服はあらかじめ三つに絞ってある。いずれもパーカーだ。彼氏がパーカーをきた女性を好むことを事前の調査で知り得ていたからだ。赤、灰色、白の三色。この中からひとつを選ばなければならない。
 赤色のパーカー。赤は情熱の色。とても前向きで刺激的な色で、きっと彼氏には好印象を与えるだろう。しかし実際のアヤコは控えめな性格。目立つようなことは苦手な性質である。この赤いパーカーも自分で買ったものではなく、前向きな姉のお下がりである。それに彼氏が目立つのを嫌がる人だったら逆効果だ。
 灰色のパーカーはどうだろう。他の色に比べて目立たず、中性的で無難な色。まさに彩子にふさわしい色だ。しかし第一印象が大事な初デートにこれを来て行って、彼氏に強い印象を残せるだろうか。
 清楚なイメージをもつ白のパーカー。これを着ていったら、彼氏に清潔な印象を与えるかもしれない。白ははじまりの色とも言われている。まさに初デートにはもってこいだ。やはり明日着ていくべきなのは、白のパーカーだ。しかし食事中にソースをこぼしたら目立つかもしれない。
 アヤコの脳内で行われている会議は難航している。どの色を着ていくべきか。悩みに悩んだ挙句、着ていくパーカーが決まった。アヤコは明日、白のパーカーを着ていくことにした。これで明日のデートを成功させる。アヤコはガッツポーズをした。時計のほうに目をやると、針は深夜一時半をまわっていた。早く眠らないと、寝不足で明日のデートを満喫できない。アヤコは部屋の明かりを消し、布団に入った。
 布団に入って三十分。アヤコは明日履いていくズボンを決めていないことに気付いた。アヤコは布団から起き上がり、再び電気をつけ、クローゼットを開く。そしてアヤコの頭の中では再び脳内会議が開かれた。

 翌朝。アヤコが目を覚ますと、時計は八時三十五分をまわっていた。アヤコは青ざめた。デートの待ち合わせは九時。昨夜はあれからズボン選びで苦戦してしまい、脳内会議を終えたのは明け方の五時だった。そしてうっかり目覚ましをセットすることを忘れ、そのままウトウトと眠りについてしまったのだ。
 アヤコは朝食を食べることを諦め、急いで着替えて家を出た。待ち合わせ場所は歩いて十五分のところ。今は八時五十分。走ればぎりぎり間に合う距離。アヤコは無我夢中で走った。しかし寝不足のせいか足がふらついて、何かにつまずいて転んだ。

「アヤコさん遅いな…」
 待ち合わせ場所で待つ坂本。すると後ろからアヤコの声がした。
「おまたせぇ…坂本先輩。待ったぁ?」
「やあアヤコさん。僕もいま来たところなん…げぇぇ!誰だお前!」

 後ろを振り返り、アヤカをみた瞬間、坂本は目を疑った。ぐしゃぐしゃの髪に、赤く染まった顔。服は白のパーカーに、返り血を浴びたような赤いペイントが施されていた。ここへ来る途中、アヤコは赤いペンキが入ったバケツにつまずいて、倒したバケツからこぼれたペンキの上にうつぶせで倒れたのだ。しかし待ち合わせの時間に間に合わせることに夢中だったアヤコは、そのまま来てしまった。
「遅れてごめんなさぁい…坂本先輩…」
 ゾンビのようにふらつくアヤコ。しかし目の前には既に、坂本の姿は無かった。 


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このストーリーに関するコメント

16/05/18 冬垣ひなた

霜月秋介さん、拝読しました。

初めてのデート、第一印象をどう決めるかウキウキする服選びですが、
タイトル通り、これはとんでもない悲劇ですね。
こんなこともあるから悩みすぎるのもほどほどに、ですね。

16/05/23 泡沫恋歌

霜月 秋介 様、拝読しました。

デートの前の洋服選びは女の子にとっては重要な問題です。
しかし、ここまで悩んで肝心のデートに遅れそうになったのでは元も子もない。
アヤカさんは自意識が高いのかも、今度からは服装にこだわらない相手とデートする方がいいかも(笑)

16/05/23 霜月秋介

コメントありがとうございます。

冬垣ひなた様
ある意味彼には忘れられないほどのインパクトを与えられたようです。悩みすぎるとろくな結末になりませんね(笑)


泡沫恋歌さま
たしかに自意識過剰かもしれませんね。自分がこだわっているものは、まわりからすればさほど大したことではないのでしょう。

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