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吉岡 幸一さん

性別 男性
将来の夢
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パレード

16/05/04 コンテスト(テーマ):第80回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:769

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祭りの日は風がふく
群衆のなかで独り、ただ独り、つま先立ちで眺めている
笑顔ふりまくパレードのあげる足の裏側は黒く汚れている
緑の旗振る乙女の胸はかたく尖っている
ここにいない君の笑顔は空たかく雲の上へと消えていく
「仕事なんだからしかたないでしょ」
そういう君は申し訳ないというよりも、どこかほっとしたような口ぶりで
腹の白い蛙に書かれた逆三角形よりも冷めている
百万の恋人たちが腕を組んで行進していく
両手いっぱいにバラの花束を抱え、機関銃を背負い進んでいく
花びらが風にふかれアイロンを押し当てられた空に舞う
四人のアイドルが神輿の上で踊りながら群衆を見下している
破れそうな笑顔の底で涙が渦を巻き、太ももが膨らんでいく
「私って頼られているのよ」
君の声は古い柱時計のようで、僕も耳は深海のアンコウのよう
「私ってはっきりと言うほうなんだ」
君の瞳は針金が刺さって仰向けになったイルカのよう
一つのパレードが終わると、もう一つのパレードがはじまる
一つの笑顔が終わると、次の笑顔があらわれる
群衆の中でただ独り、ぼくはただ独り
コンクリートタウンは夕暮れ時に爆発する
「私、怒っているんだよ」
首を傾げたいけれど、僕はうなずいて微笑む
「もういやなの、あなたに期待するのは嫌なんだ」
何を期待されていたのか、僕にはまったくわからない
幻の美しい日々がペットボトルの底で唸りながら呼吸する
「あなたって結局は独りが好きなんでしょう」
地面を拳でたたき、血の出る拳で空を叩き、君の背中に向かって叫ぶ
この苦しみがわかってたまるか、ああ、許してくれ、違うんだ
スピーカーからは爆音、天使の群れが舞い降りてきて、笑顔が割れる
熟れすぎた苺のような色鮮やかなパレードは終わることがない
巨大な蒼い球体を後悔することも忘れ永遠に回りつづける
たぶん愛している、小さく言えばたぶん好きなんだ
風があまりに強いものだから僕の思考は揺れている
群衆の底で独り、ただ独り、笑顔のパレードを眺めている


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