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縁合 紫さん

普段は小説家になろうで長編書いてます。

性別 女性
将来の夢 書籍化
座右の銘 行動が全て幸福につながるとは限らない。しかし行動のないところに幸福はない

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君が乗る駅

12/09/04 コンテスト(テーマ):第十四回 時空モノガタリ文学賞【 駅 】 コメント:0件 縁合 紫 閲覧数:1273

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 あと三駅、通学経路の電車の中でこっそりと残りの駅を数える。
でも学校までの駅数ではない。三駅先の駅で気になる先輩が電車に乗ってくるのだ。いつも先輩が乗る扉の隣の扉が私のいつもいる位置だ。こっそり見つめるだけの十五分があと三駅いや、今また一つ駅を過ぎたから、あとふた駅で始まる。満員電車の中をジリジリした気持ちでふた駅をすぎる。目的の駅で先輩がいつもの扉から乗ってきた。それだけでドキドキして満員電車の雑然とした雰囲気も気にならなくなる。

 ここから学校まではあと三駅。先輩が乗ってくるまでの三駅は長かったのにここからの三駅はあっという間に感じる。時間はほぼ同じはずなのに。
 先輩とは同じ部活だけど、部員の多い合唱部で先輩と直接話す機会はほとんどない。私の顔を覚えているのかすら不安が残る。だからといって、同じ扉から乗って自分から声をかける勇気は無い。となりの扉からこっそりと見ているのが精一杯だ。ちょっとストーカーっぽくて自己嫌悪に陥る時もあるけれど、朝のこの時間を逃したらほかに先輩を見ていられる時間がないのだ。

 あっという間に学校の最寄駅についてしまう。人の波に乗って先輩が電車から降りる。私も、人に押されながら前の人にぶつからないように
電車から降りた。階段は私が降りた扉からの方が近い。わざとゆっくり歩くが、人の波に押されて先輩が私に追いつくことはいつもない。

「あれ。朝霧さん。おはよう」

不意に後ろから声がかけられて心臓が止まりそうになるくらい驚いた。ぎこちなく振り向
くと先輩が立っている。

「おっ。おはようございます。夏川先輩」

しどろもどろになりながらもなんとか挨拶を返した。先輩はそのまま先に行ってしまったが、こんな些細なやり取りだけで私はもう有頂天だ。走り出したい衝動を抑えて慎重に階段を降りる。

今日は最高の一日になりそうだ。


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