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キャプリスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 人生は 最後の日までの 暇つぶし

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不思議な水族館

16/04/10 コンテスト(テーマ):第105回 時空モノガタリ文学賞 【 水族館 】 コメント:10件 キャプリス 閲覧数:922

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 テレビのニュースを見ながら朝のコーヒーを飲んでいると携帯が不気味な呼び出し音を鳴らした。奇妙な依頼の電話だという意味だ。こいつの予想は当たることが多い。
 電話の主はN市にある水族館の館長だと名乗った。
「魚が勝手に動くんだ」
 慌てた口調で彼はこう切り出した。
「魚が動く、それが何か」
「いや、入れておいた水槽とは別の水槽に移動するんだ」
「誰かが移したんでしょう」
「そんなことは絶対に・・・」
 館長の説明だけではらちがあきそうもなかった。とにかく現場を見ることだと俺はN市に向かった。

水族館は思ったよりも大きな規模だった。大きな水槽を中心にして、まわりにいくつもの水槽があった。そのひとつの前で館長は立ち止まり中を指さして言った。
「あそこに大きな魚がいるでしょう」
 水槽の真ん中に大きく突き出た頭をした奇妙な魚がいた。
「あれはナポレオンフィッシュという魚なんです。昨日まではそちらの水槽にいたんですが、今朝気がついたらこちらで泳いでいるんです」
 館長は気持ち悪そうな表情で言った。
「ほう、それは確かに妙ですね」
 俺は一応相づちを打っておいたが、内心では誰かのいたずらに決まっていると思っていた。
「二つの水槽はつながっていないんですね」
「もちろんです」
「とりあえず担当の飼育員にあわせてください」
 応接室で飼育員に話を聞いている最中、館長があわてて飛び込んできた。
「ま、また移動しました」 
 元の場所に駆け戻ると、館長が震える指で水槽をさした。
「ほら、あいつがこっちに来ているでしょう」
 確かに例の魚が先ほどとは別の水槽で悠然と泳いでいる。
(こいつは瞬間移動でも出来るのか)そう思ったとき、俺の耳の奥で声がした。
(そうだよ)
「何だと」思わずそう口に出すと、館長が怪訝そうな顔でこちらを振り返った。
「いやいや、本当にびっくりです」
 慌ててそうつくろう。今の声は俺にしか聞こえていないようだ。
(お前は誰だ)そう心の中で聞き返す。
(目の前にいるだろう)
 ナポレオンフィッシュが水槽の中をこちらに泳いできた。目が俺をからかっている様に見えるのは気のせいだろうか。
「館長、じっくりと調べたいのでしばらくひとりにしてくれませんか」
 ここは俺ひとりの方が良さそうだと判断し館長には出て行ってもらうことにした。
「お魚さんよ、いったいお前は何者なんだ」
(わしはここではナポちゃんと呼ばれておる。そう呼んでくれ)
「ナポちゃんか、なぜテレポートしたり、テレパシーが使えるんだ」
(わしにもわからんが今朝から急にこうなった)
「ほかにどんなことができるんだ」
(うーむ、そうだな、たとえば)
 そのとたんに俺は水の中にいた。
「うわーっ」叫ぼうとして水をしたたかに飲んだ。両手を振り回してばたついた次の瞬間には元の場所にずぶ濡れで立っていた。
「なんてことしやがる」
(うふうふ、すまん)
 やつの顔が心なしか笑っているようだ。悪意はなさそうだが怒らせてはまずい相手らしい。
「ところでナポちゃんはこれからどうしたいんだね」
 俺は毒づきたいのをこらえ、平静を装って尋ねた。
「海に帰りたいのかな」
(まさか、三食昼寝付きのここよりいいところがあるわけなんぞないよ)
 魚のくせに三食昼寝付きなんて言葉を知っているのが妙におかしい。
「他にしたいことはないのか。水槽から水槽へ気ままに移動するだけでいいのか」
(そうだな、只飯を食わせてもらいっぱなしというのも悪いしなあ)
ナポちゃんはみかけによらず、結構律儀な性格なのかもしれなかった。

半年後、新聞に『不思議な水族館』という見出しの記事が出た。
「N市にある水族館には不思議な水槽がある。そこにはたった一匹のナポレオンフィッシュが入れられているだけだが、これが大変に不思議なのだ。その前で「○○が見たい」と心の中で念じると、見たいといった魚が現れるるのである。次の人が念じるとまた別の魚が現れる。小はカクレクマノミから大はジンベイザメまで、水槽に入れることの出来る魚ならば何でも現れるのだ。それが開館から閉館まで続くとあって連日満員で引きも切らない。おかげで水族館は積年の赤字を解消できたということである」


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このストーリーに関するコメント

16/04/14 キャプリス

小狐丸様、初めまして。
最近このサイトを知り、初投稿してみました。
人様に読んでもらい、コメントをいただけるのは大変うれしいものですね。
お読みいただきありがとうございました。

16/04/14 にぽっくめいきんぐ

拝読しました。
ドキドキするショートショートでした。
こういう、不思議な感じの作品、好物です。

16/04/14 にぽっくめいきんぐ

拝読しました。
ドキドキするショートショートでした。
こういう、不思議な感じの作品、好物です。

16/04/14 にぽっくめいきんぐ

拝読しました。
ドキドキするショートショートでした。
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16/04/15 キャプリス

にぽっくめいきんぐ様
気に入ってくださったようでうれしいです。
私も不思議とか、奇妙とかいった感じの話が好みです。
お読みいただきありがとうございます。

16/04/16 クナリ

ナポレオンフィッシュは特徴的な外見の魚ですので、このキャラクタ付けは見た目とあいまって面白いですね!
超能力が身についた理由が不明だけど気にしないというのも、いい性格だな〜と思いました。

16/04/16 キャプリス

クナリ様、お読みいただきありがとうございます。
はじめは超能力が身についた理由を書いたのですが、理が勝ちすぎては面白くないと思い省略しました。

16/05/01 光石七

拝読しました。
ナポちゃんのキャラがいいですね。水族館も大人気となり、めでたしめでたしの結末にほっこりしました。
主人公は何でも屋、相談屋のような仕事なのでしょうか? 不思議な案件が次々と持ち込まれそうです。
楽しませていただきました。

16/05/02 キャプリス

光石七様
楽しんでいただいたようでありがとうございます。
主人公は貧乏探偵みたいな設定ですが 何でも屋でもいいですね。
不思議、奇妙、訳わからん等の感覚が興味の対象です。

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