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クナリさん

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将来の夢 絵本作家
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寸劇:スカートの中の猫

16/04/02 コンテスト(テーマ):第106回 時空モノガタリ文学賞 【 ねこ 】 コメント:9件 クナリ 閲覧数:1395

時空モノガタリからの選評

奇妙な設定と、一癖も二癖もある後輩Aの言動に翻弄される先輩の姿がなんとも不条理ですね。言葉の曲解や、女子高生としての立場をかさにきた彼女の言動に振り回され、なすすべもない先輩があわれです(笑)。猫は女性の象徴だったりすることを考えると、スカートの中の猫を見せろというのは、確かにある意味では、セクハラそのものだったりするのかもしれませんが……。
以前にやや似たシチュエーションの作品がありましたが、今回は寸劇の脚本という設定と見えない猫の存在により、密室劇のような軽さと面白さが加わっていると思います。「水音」の効果音や鳴き声などもチープな舞台らしい雰囲気で、終始猫の姿が見えないのも効果的ですね。これは白黒映画やサイレント映画の方が、かえって色や音を感じさせたりするのにも通じるものがあると思います。いろいろな作風に取り組まれ、成功されているのも素晴らしいと思います。

時空モノガタリK

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・登場人物:先輩(男)、後輩A(女)、後輩B(女)

開幕

(放課後の文芸部室、先輩が一人で本を読んでいる)
(足音のSE、引き戸を開くSE)
(後輩A登場)
 先輩、お疲れ様です。
「おう」
 先輩、私、そこで猫を拾いまして。迷い猫みたいなんですが。
「へえ。どこにいるんだ?」
 ここです。
「いねえじゃん」
 スカートの中です。
「ス?」
 今、奴は股の間から落ちないように私の両内ももにに爪を立てて踏ん張っています。
「(立ち上がりながら)い、痛そうだなおい! 今すぐ出せよ」
 え、でも男子の前でスカートからもの出すってちょっと恥ずかしいですし。
「んなこと言ってる場合か。不潔だろ、バイキンとかよ」
 先輩、ひどい。乙女の股ぐらを不潔とかバイキンとか。
「お前のことじゃねえし股ぐらって言うな。いいよ、じゃあ俺が取ってやる」
 私がスカートの内側に隠した大切なものを力ずくで奪い取ろうというのですか。
「…頼むから、ふざけておかしな言い方で誤解を広めてくれるなよ」
 とりあえず胸ポッケに入れたスマホで録音はしました。編集機材も一応自宅にはそれなりに。
「その気満々かよ!」
 女には、身を守る義務があります。そのために備えることは、罪なのでしょうか。
「んな話してねえってか俺はお前のために言ってんだぞ!?」
 先輩、何ムキになってるんですか。
「いや何って」
 (手を口に当てて)もしかして、私のこと好きなんですか。
「人類史に類を見ない暴力的な曲解だが、きっぱり言おう。ノーだ」
 (遠くを見ながら)確かセクハラって、女の方が嫌だと思ったら成立するんですよね。
「…だから? 俺らそれなりに仲良いつもりだし、まだ嫌なことなんて何もしてねえだろ? 不成立だよな」
 好きでもない男の人に言い寄られるって、決して愉快な気分ではないと言うか。
「てめえの耳には俺の声聞く機能がついてねえのかコラ」
 逆ギレですか。見苦しい。
「ぎゃ、逆かなあ。ところで、大丈夫なのか? 足」
 足?
「いや、ももに猫が爪立ててんだろ」
 そんなには痛くありませんよ。子猫ですし。
「ははーん。はなからおかしいと思ったぜ。いくらなんでも、そんな状態でここまで歩けるわけがねえ」
 (一歩引いて)あ、何ですか。もしかして先輩、猫がいることを疑ってるんですか。
「いや、いたらいたで、別の所の状態を疑うが。とにかく、猫なんざいやしねえな。俺をからかうための狂言だ」
 失礼な! 何で私が部内上級生人気ランキング得票ゼロの先輩ごときをからかうために、貴重な時間と手間を割かなければならないんですか!
「聞き捨てならないことがあったような気もするが、いるってんなら見せてみろよ。せめて声くらいよ」
 ナーオ。
「思っきし口動いてんじゃねえか」
 そこまで言うなら、賭けますか。ここに猫がいるかどうか。
「何を賭けんだよ」
 先輩の退部。
「ねえ、お前もしかして俺のこと大嫌いなの?」
(水音のSE)
「…くさっ。…あ、お前、足下びしょびしょだぞ…」
 どうです、先輩。まさか私が、たかだか全学年人気投票で女子の体操着窃盗犯の助川さんより人気がなかった先輩ごときを騙すために、人前で粗相をするとは思いませんよね。
「全く聞きたくないことを無意味に聞かされた気がするが、分かったよ。そこに確かに猫がいるんだな」
 小学校高学年並のIQがあれば当然に備わっているであろう程度の素直さを持ち合わせていたら一秒で信じて頂けたでしょうが、ようやく理解が追いついて下さったようで何よりです。では、飼って下さい。
「あ?」
 この子を飼って下さい。うち、ペット禁止なので。
「い、いや、うちだって」
 この冷血漢。
「そりゃねえだろ!?」
 私が何のためにこんなに痛くて臭い思いをしていると思うのです。
「…それは必要ねえんじゃねえかな、どの道」
 とにかく、どうぞ。
「いや出すな今出すな、そんなの受け取らねえぞびっちょびちょだろ!? やめてやめてイヤアアアアアアア!」
(引き戸を開くSE。後輩B登場)
『あ、二人とも。子猫見ませんでした? 近くの小学校の学級飼育用の子猫を預かってたんですが、逃げちゃって。って、うわ何か臭い』
「…」
 …。
「よかったじゃねえか、解決して」
『解決? 何かあったんですか』
 うん。先輩が、さっきまで私のスカートの中を見せろって言ってたんだけど、あなたが来たら一転、いらないって言い出したの。
『なっ!?』
「うおおおおん!?」
『最っ低! 三界に居場所をなくすと良いわ永久に! ねえ皆聞いてー! スマホ発動ツイッターON!(後輩B退場)』
「ふ、ふざけんな! お前今すぐ誤解解いて来いよ早く!」
 ほほう。
「てめコラ何落ち着いてやがる」
 また逆ギレとは。
「逆かなあ!?」

閉幕


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このストーリーに関するコメント

16/04/02 クナリ

少し前に似たようなキャラクタと構成のお話を書いたのですが、それとは全然関係の無い独立した作品です。

挿絵を漫画風に描いてみようと思ったのですが、もう少し枚数がないといまいち効果的ではない上に、左上のコマの先輩の髪は頑張ってカケアミにしたのにつぶれてよく見えないあたりが無情です。
三カケは60度の角度でカケるときれいに見えるそうです。
だからどうした。
すみません。

16/04/02 霜月秋介

クナリ様、拝読しました。
先輩と後輩のかけあいが面白かったです。これを漫画で描くとどうなるんでしょうね(笑)カケアミお疲れ様でした(笑)

16/04/03 クナリ

霜月秋介さん>
内容のない、愉快な会話劇として楽しんでいただければ幸いです!
カケアミ、好きなんだけど大変なんですよね(^^;)。

16/04/11 宮下 倖

拝読しました!
テンポのいいコミカルな会話が心地よく、最後まで笑わせていただきました。うっかり電車の中で読ませていただいたので、にやにやする私は変な人だったかもしれません。
ドラマCDのように声だけの演技でも聞いてみたいです。
楽しい作品ありがとうございました!

16/04/12 クナリ

宮下 倖さん>
会話だけで面白い話を作る、というのには以前から憧れていまして、手探りながら少しずつでも成長できれば…と思って投稿いたしましたが、楽しんでいただければうれしいです。
こちらこそ、コメントありがとうございました!

16/05/12 冬垣ひなた

クナリさん、拝読しました。

子猫の爪は小さく鋭いのでかなり痛いです。先輩の心配はもっともだと思うのですが、
ここは相手が悪かったとしか(笑)
本人たちはいたって真面目なのでしょうが、掛け合いのような会話が楽しかったです。
寸劇という見せ方も、猫が登場しないというのも斬新ですね。
挿絵も素敵。いつも新しいものにチャレンジするクナリさんの精神を見習いたいです。

16/05/15 クナリ

それで、「いるんだけど出てこない」という扱いにして書いてみました。
高校とかでの舞台劇みたいなのをイメージしたので、生きた猫を舞台上に用意するのは大変だろうし、猫自体を登場させない劇にしてみたかったというのもあります。
言及して頂けて光栄です!
なるべく新しいことを盛り込もうとしてるのは、自分けっこう時空様では古株になりつつある気がするので、少しでも読み手様に楽しんで頂こうと…同じ傾向ばかりじゃ飽きてしまうでしょうし(^^;)(そこまでお付き合いして頂けるのかはまた別の問題ですがッ)。
コメント、ありがとうございました!

16/05/29 石蕗亮

受賞おめでとうございます!
いやー、面白い!
何故今迄食指が動かなかったのか不思議です。
爽快な掛け合いと明快な語彙。羨ましすぎる文章力。
良ければ爪の垢わけてもらえませんか(切実)

16/05/29 クナリ


石蕗亮さん>
ありがとうございます!
分けるほどの能力があればどんなに良かったか…!
普段悩める人間みたいなものばかり描いているので、時折こうした方向性のものを書くと反動(?)でよりよいものが書けるのかもしれません(^^;)。
コメント、ありがとうございました!

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