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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

性別 男性
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猫、春を駆ける

16/04/01 コンテスト(テーマ):第106回 時空モノガタリ文学賞 【 ねこ 】 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:895

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 私は冬が嫌いだ。冬の厳しい寒さは我々の生命を脅かす。冬は我々の行動が制限される。冬ほど退屈な季節は無いだろう。だから待つしかないのだ。コタツと呼ばれる文明の利器で暖を取りながら、ミカンという名の果実を頬張り、毛玉をころころと転がしながら、春が来るのをただひたすら。
「ちょっとヒロシ!いつまでコタツに入っているのよ!外に出てお父さんのタイヤ交換手伝ってきなさい」
 一瞬私が怒られたのかと思った。さっきから私と一緒にコタツでくつろいでテレビを見ている人間の若造が、母君に怒られたのだ。怒られた若造は母君を睨んだあと、私をも睨んで愚痴をこぼした。
「ちぇっ!お前はいいよな。コタツでそうやってくつろいでいても文句のひとつも言われないんだからよ!」
 その愚痴が、母君にも聞こえたらしい。
「猫に文句言ったって無駄でしょ!言葉通じないし、雪かきしろって言っても雪かきも出来ないんだし。猫に何ができるっていうのよ」
 なんだと!?いま、なんていった?この母君…いや、この人間は今、私を侮辱したのか?どうせ猫なんて何もできないだろうと、そう言ったのか今?お前らの都合で私はここでの暮らしを余儀なくさせられているというのに!
「あ!ちょっと!どこ行くの!?」
 私は堪忍袋の緒が切れた。コタツを抜け出し、半開きになっていた玄関のドアをすり抜け、走った。ただひたすら走った。我々を見下すような人間の世話にはもうならない。私は一人だけでも生きていく。私は甘えていた。人間という生き物の優しさに、ただ甘えていたのだ。外にいるのが当たり前だったはずなのに、あの人間達と出会ってから、温かい場所にいるのが当たり前になっていたのだ。
 このまま走って、私はどこへ向かっているのだろう。走った先には何があるというのだろうか。目的も何もなく、ただひたすら私は走った。
 走り疲れて少し休んでいると、フキノトウが咲いているのを見つけた。人間やコタツの温もりに甘えている間に、冬が終わっていたらしい。さあ、少し休んだらまた歩こう。どこへでも行きたいところへ。 


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このストーリーに関するコメント

16/04/11 泡沫恋歌

霜月 秋介 様、拝読しました。

なかなか気骨のある猫ちゃんですが、
猫は何もしないでゴロゴロしてる方が可愛いです。

そんな猫の姿を見ることで、人間は癒されてるんですから、
何もしないでぐうたらな猫のままでいて欲しいなあ〜。

16/04/11 宮下 倖

拝読いたしました。
泰然と構えている猫さんかと思いきや、出奔してしまうなんて! 
たくましく生きて欲しいと思う反面、「行きたいところ」が元のお家になったら素直に戻ってぬくぬくして欲しいなあと思いました。
猫も犬も、絶対人間の言葉はわかってますよね。ウチの子もいろいろ考えてたんだろうなあと懐かしく思い出しながら読みました。

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