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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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エンドロールでもう一度

16/03/28 コンテスト(テーマ):第104回 時空モノガタリ文学賞 【 映画 】 コメント:8件 石蕗亮 閲覧数:1975

時空モノガタリからの選評

人の運命は決められているものなのか?それに抗うことはできるのか……?自らの存在や運命に対するそうした問いは、普遍的なものではないでしょうか。今回のお題では人生を映画に例えた作品が多く、面白いものも多かったのですが、今作は石蕗さんらしい独特の死生観がユニークで目立っていました。死後のことは誰にも分からないのですが、それでも我々は色々と想像してしまうものです。彼の見た「人生映画」は一般的に見てさほど悪くなさそうですが、それでもなお「虚無感」を抱いてしまうあたりに、生きることの難しさを感じました。「システム」の不条理さも、なんとも切ないです。この世界は人間の望むようなものではないのではないかという気貸します。彼の望みは果たして叶うのか、そして叶ったとして、満足のいく結果になるのか。いろいろ想像させられるラストでした。

時空モノガタリK

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 シートに深く腰掛けてスクリーンに向かう。
「それでは上映致します。人生映画をお楽しみください。」
アナウンスが流れ照明が消える。
最初に生まれたばかりの赤ん坊が映し出された。
両親の愛を受けて可愛がられていた。
歩き始めた頃に転んで顔に大きな傷を負った。
蟲を捕まえるのが好きだった。
小学校に上がった。
悪戯をして怒られたり、嘘をついて後のいつかばれるのではないかという後味の悪さなどが映し出された。飼っていた猫が死んで初めて命の尊さを知った瞬間も描かれていた。
中学校に上がった。
他人と自分を比較して優越感を知ったり劣等感に悩むシーンが多かった。
初恋もあった。異性を意識し始めた青い時代であった。
高校に上がった。
大人を意識し始めた言動が増えてきた。好きなものなどこだわりが強くなってきて人格が定まり固定されていく描写が多かった。
大学に進んだ。
就職に向かい、地元に残るか離れるかの葛藤があった。葛藤の末に大事な人との別れがあった。夢を選んだ瞬間だった。
大人になった。
苦労もあった。喜びもあった。苦労が大半であったが、それ故に普通や当たり前といわれるものがどれ程大切なのかを切実に感じていた。
そして親の気持ちを初めて理解し始めていた。しかし親との時間は残り少なかった。
出会いがあり、恋をして、愛を育み、結婚した。
子が産まれ親になった。いや、子の成長と共に親に成っていった。
親の有り難味が身に染みる頃死別が訪れた。
社会に流され、可も無く不可も無く卒なく生きていった。
いつしか若い頃の夢は追えなくなっていた。
我が子の成長にも苦労した。自分とはまったく違う生き物だと思い知らされた。
その子も成長し大人になり、やがて家族をもった。
孫が生まれた。
子は家族と共に離れて暮らし始めた。
定年を迎えた。相方が先立ち独りになった。
虚無感が残った。

 映像が終わった。
「ここで人生の終幕となります。」
アナウンスが流れた。
観ていた私にも強く虚無感が残った。
そもそも何故こんな映画を観ているのだろうか。
いつから私はここにいたのだろうか。
意識がぼんやりとしはっきりとしない。
スクリーンのあるステージにスポットライトが灯ると、その光下に男が立っていた。
「御静観ありがとうございました。」アナウンスの声であった。
「いかがでしたか?」
 「虚しいな。」男の問いに答えたのは私一人であった。周りには誰も居なかった。
「人生なんてそんなものでございますよ。波乱万丈な方なんてほんの僅かばかり。」
 「まぁ、そうだろうね。」
『これが貴方のこれからの人生でございますれば。』
 「は?」
「これから産まれる貴方の人生でございます。」
 「どういうことだ!?」
「人は皆生まれる前にその後の人生を一度胎内で夢としてみてくるのですよ。それが只今御覧頂いたものでございます。貴方は虚しいと仰られましたが致し方ありません。」
 「嫌だ!こんな人生嫌だ!何とかならないのか!」
「それは貴方次第でございます。」
 「変えれるのか?」
「ですから貴方次第でございますよ。映画の途中で貴方、夢を追って当時の恋人と別れたでしょう。『もしも』ですよ、『もしもあそこで恋人を選んでいたら』違う最期がある『かも』しれませんが。それは今のところ運命の予定に入っておりません。」
男は楽しそうに告げる。それが酷く憎たらしく、悔しく思えた。
人の人生を何だと思ってるんだ、こいつは!
「因みに、大抵の方はここで見た人生映画の内容なんて産まれたら忘れてしまうんですがね。今ここでどうこう言っても、結局予定通りの人生になって、死後ここでもう一度この自身の人生映画を観るんですけどね。」
 「今観て、実際体現して、最期にまた見せ付けられるのか。」
「はい。死後、人生のエンドロールとして振り返って頂きます。そういうシステムになっております。」
楽しそうな顔で淡々と話す男に段々と苛立ってきた。
 「お前は何者なんだ。」
「夢の案内人、管理人、代行者等々様々な呼ばれ方をしておりますし、固有名詞を訊ねられているのであれば、ジブリール、訶梨帝母、這い寄るもの等々あります。」
 「そうか。お前は某かの神のような存在なんだな。そして死後もう一度お前とここで会うんだな。」
「然様で。」
 「わかった。この人生、映画のようには絶対させない。先に人生が分かっているんだから変えてみせる!」
私は売られた喧嘩を買うように言い放った。
「では死後、貴方のエンドロールでもう一度お会いし確かめさせていただきましょう。」
男は嬉しそうに答えた。
 「吠え面かかせてやる。」
「楽しみにお待ちさせて頂きます。」
私は指差し宣言すると男は恭しく会釈して返した。
私は席を立つと強い意志を持って劇場の扉を開け外界へと生まれ出て行った。


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このストーリーに関するコメント

16/04/14 石蕗亮

小狐丸さん
コメントありがとうございます。
もし人生が素晴らしいものであったなら、もしくはこれより悲惨なものであったなら、その人はどんな産声を上げるのでしょうか?と考えたんですが書き切れませんでした。
デジャヴは生まれる前の夢の記憶だという説もあります。
いずれにしろ運命を変えられるかどうかは常に本人次第だと思います。
占いの仕事でもお客さんに最後はそう言って送り出してあげています。

16/04/24 

拝読しました。
最終選考おめでとうございます!受賞期待大です!
映画館=胎内という世界観が説明なしで理解させる物語の全体構成がすごいと思いました!
そして上映作品が運命の予告であり宣告であるという重いものなのにあまりにも坦々と描写されているのが対象的でそのギャップで作品に引き込まれました。
面白かったです!
是非受賞してほしいです!!

16/04/30 光石七

受賞おめでとうございます。
拝読しました。
最初はてっきり死後に自分の人生を振り返っているのだと思っていました。まさか生まれる前とは……。
外界へ生まれ出た主人公は果たしてどんな人生を歩むのか?
“宿命は変えられないが、運命は変えられる”という言葉を思い出しました。
面白かったです。

16/05/06 石蕗亮

榊さん
過大な評価とコメントありがとうございます。
二度目の受賞を頂きました。
皆さんのコメントや評価のおかげでございます。
この作品は以前書きかけで止まっていたものを書き直したものでした。
字数に収まらずやや書き足りないところもありましたが評価いただき恐悦しております。
これからもよろしくお願いいたします。

16/05/06 石蕗亮

光石七さん
お祝いのお言葉ありがとうございます。
占いの世界観におけるデジャヴの説明を映画形式で表現する試みで作り始めた物語でした。
この物語には前後がありますのでいつか機会があれば書きたいと思います。

16/05/09 夜降雪都

拝読しました。
受賞おめでとうございます!
読みやすく、シーンがイメージしやすく楽しめました。
独特の世界観をいつも楽しませてもらっています。
次回受賞も楽しみにしています。

16/05/25 石蕗亮

夜降さん
コメント遅れてすみませんでした。
お祝いありがとうございます!
これからも私の世界を楽しんでくださいね。
よろしくお願い致します。

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